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帰省されるイヤー / Ear-Shaped Homecoming

 コロナ禍においてライブ配信が盛んに行われているが、これまでライブハウスやコンサートで聴いてきたような「聴衆に向けて音が大きく拡声された音楽」を手元の小さなスマホ画面で鑑賞することに違和感を抱いた。一般的なライブ配信では、視聴者側のデバイスで音量が調整できるため、収録会場で大きな音を鳴らす必要がないのではないか。やがて、大きな音を用いる音楽表現よりも「小さな音や実験的なマイク装置を切り口とした音楽」の方がライブ配信と相性が良いのではないか、と考えるようになった。それはフィールドレコーディングやASMRのような「聴くこと」に重点を置いた音響体験の未来を予感させる。
 話は変わるが、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言のため、今年のゴールデンウィークは実家に帰らないつもりだ。親への感染リスクを考えると仕方ないが、長らく親と会えていないので何とか触れ合う機会を持ちたいと考えた。 そこで自分の耳を3Dスキャンして制作した巨大な耳型マイク装置「ハッピーニューイヤー」を実家に送ることにした。耳型マイク装置を息子の耳だと思って「耳かき」をしてもらい、その音を配信する。様々なことが規制される年に、私は耳になって帰省する。(モデリングサポート:水口翔太)

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