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Fading Horizons

その他
https://soundcloud.com/zkishiro/fading-horizons_preview/s-3zittDuUHkN

本作は、佐世保でフィールドレコーディングされた波の音や市場の鐘、人々の話し声といった地域固有の音を、Future Bassを基軸とした現代的な音楽構造に組み込み、古代から現代へと続く文化の流れを音として表現する試みです。

イントロからビルドアップにかけては、ボーカルとともにピアノやアコースティックギターが素朴に響き、その背後に白浜海岸の波音を流しています。海辺の空気感に加え、要所には市場の鐘の音を差し込み、「場所性」を感じさせる仕掛けを取り入れました。ここでは、自然と人々の営みが溶け合うような情景を描き出しています。

ドロップに入ると、パンフルートの音を編集・加工してエレクトロ感を帯びたリードを形成し、コードにはSawシンセを重ね、ベースには迫力ある低音を加えることで、現代的なサウンドへと展開していきます。リズムトラックにおいては、キックには人々の声や市場の物音を細かくチョップした断片を用い、スネアには波の音を切り刻んで重ねています。これにより、環境音を単なる背景音としてではなく、楽曲の根幹を形づくる要素として機能させています。

こうした「アコースティックからエレクトロへ」「自然音からリズムへ」といった変容のプロセスは、テーマである「Shoreline 混ざる、響く」に呼応しています。海と陸が交わる海岸線のように、過去と未来、土着性と普遍性、人と自然が交錯し、響き合う場所として音楽を構成しました。
タイトル「Fading Horizons」は、海岸から眺める水平線や地平線を象徴し、消えゆく光と余韻の中に新たな旅立ちを重ね合わせています。歌詞は、灯火や星、時の流れをモチーフにしながら、二人の旅路を描いています。そこには個人的な物語でありながら、同時に「共に歩む」「平和を共有する」という普遍的なメッセージが込められています。

本作は、偶発的なサンプリングに委ねるのではなく、意図的に環境音を作曲構造へと溶け込ませ、アンビエントを越えて物語性と楽曲性を備えた音楽体験を模索しました。佐世保の音と共に紡ぎ出された響きが、聴く人の記憶や感情の中に残り、平和の感覚を呼び覚ますことを願っています。

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