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ほとんど何も、あるいは佐世保の響き

本作『ほとんど何も、あるいは佐世保の響き』は、日常にありふれた「ほとんど何も」ない音の中にこそ、その土地の本質的な響きが宿るという考えに基づいたサウンドスケープ作品である。

港の喧騒、市場のざわめき、丘を抜ける風の音。本作が探求するのは、これら意識されなければ通り過ぎてしまう「ほとんど何も」ない日常音の中にこそ、土地固有の「響き」が豊かに宿るという事実である。提供された環境音とその位置情報を手掛かりに、街を歩く人を想像しながら、音一つひとつが持つ質感やリズム、動きを注意深く聴取し、過度な加工を避けつつも、その配置、重なり、間の取り方によって、単なる記録ではない一つの作品として再構築している。

こうした音のモンタージュによって、海と陸、日常と非日常が出会う「Shoreline(岸辺)」というテーマを表現した。聴き手は、耳を澄ますという行為を通して、佐世保という場所の輪郭を再発見する体験へと誘われる。

なお、今回提出する1分間のデモ音源は、この構想の一部を抜粋したものである。佐世保駅周辺から米海軍佐世保基地、そして朝市へと至る音の風景を切り取ることで、完成版が目指す世界の断片を提示している。

https://soundcloud.com/fushi-sano/97c2226d-11c5-4c9e-8fbb-e420fbc90d8e

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