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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
本提案が扱う絶滅危惧空間は、山間部の集落である。
実際に訪れ、その活用方法を模索した長野県飯綱町芋川日向地区では、人が去ったあとも暮らしの痕跡と自然が独自の均衡をつくり、都市でも完全な自然でもない特異な環境が残されていた。人口減少や高齢化により全国で廃村が増え続ける中、その多くは「失われた場所」あるいは「再生すべき場所」として語られてきた。しかし私は、この人が去ったことで生まれた特異な環境こそが新たな価値であると考えた。その環境を形づくる暮らしの痕跡や自然の介入、そこに流れる時間を読み取り、都市の忙しさから一時的に距離を置くための滞在空間へと変異させる。 -
なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
長野県飯綱町にある廃村を訪れたとき、そこには「時間が止まったような感覚」があった。
都市では時間は管理され、予定や効率の中で絶えず流れている。一方、廃村では、人が去ったあとに自然がゆっくりと介入し、建物や風景には暮らしの痕跡と自然が独自の均衡をつくっていた。そこには、都市でも完全な自然でもない、廃村だからこそ生まれる特異な時間が存在していた。
廃村は、地域の風習や人々のしがらみから解放された場所でもある。しかし同時に、生活の痕跡は静かに残り続けている。この相反する状態は、人が何かをするための場所ではなく、何もしなくてもよい場所として新たな価値を持つのではないかと考えた。
現在、多くの廃村は保存か撤去かという視点で語られることが多い。しかし私が残したいのは建物そのものではなく、そこに流れ続ける時間と、それを感じられる環境である。
本提案では、その価値を読み取り、現代人が都市の忙しさから一時的に離れ、身体と心をゆるめる滞在空間へと変異させることで、廃村を失われた集落ではなく、新たな変異空間として捉え直すことを目指した。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
本提案は、廃村を保存・復元する計画ではない。廃村に残る時間や空間の質を読み取り、新たな滞在価値へと変異させる設計手法の提案である。
長野県飯綱町の廃村をCase Studyとし、現地での観察を通して廃村特有の空間的特徴を抽出した。壁高より厚く見える大きな屋根は、内と外の境界を曖昧にし、半屋外のような居心地を生み出していた。地面に付きそうな屋根や茅葺き屋根がつくる暗がりは、視界を切り取り、周囲の自然や時計では測れない時間へと意識を向けさせていた。また、朽ちた建物と現在も使われる建物が隣り合う風景には、生と死、新旧が共存する独特の時間が流れていた。さらに、建物内部には生活の痕跡がそのまま残され、人が去ったあとも時間が積み重なり続けていた。
これらをそのまま保存するのではなく、建築へと翻訳する。厚い屋根は内と外の境界を曖昧にする大屋根へ、地形と一体となった建築や温浴空間は自然へ身体を開く体験へ、朽ちた建物と生きた建物の関係は異なる時間のあいだに身を置く空間へと変異させる。建物を大きくつくり替えるのではなく、最小限の介入によって、廃村が本来持つポテンシャルを引き出すことを目指した。
また、一般的な宿泊施設のような固定客室は設けない。寝る、座る、歩く、食べる、飲むといった行為を集落全体へ分散させることで、滞在者は環境や身体感覚に導かれながら、自ら滞在を組み立てていく。時間そのものは設計できない。しかし、時間を感じるきっかけは設計することができる。滞在者は用途ではなく身体感覚に従って場所を選び、その土地に流れる時間へと身を委ねていく。
廃村ごとに、自然の介入の仕方も、暮らしの痕跡も、時間の流れも異なる。だからこそ、それぞれの土地にしか生まれない滞在価値が存在する。本提案は、人が去った場所を保存するのではなく、その土地に残された時間や環境を読み取り、都市では得られない滞在価値をもつ場へと変異させる設計手法を提案する。
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時間を愛でる廃村
本提案は、廃村を保存・復元する計画ではない。人が去ったあとに残された暮らしの痕跡や自然の介入、そこに流れる時間を読み取り、新たな滞在価値へと変異させる設計手法の提案である。
