武蔵小山の「Hand Saw Press」でレクチャー開催
リソグラフでの印刷を探求するメイカソン「RISO Lovers MAKEATHON」。第1回目のテーマ『イラストレーション』の始まりとして、2018年5月5日、不動前にあるリソグラフ&OPEN D.I.Y.スタジオ「Hand Saw Press」でレクチャーが開かれました。
レクチャーの講師は、ユニス・ルック(Slow Editions)さんと、小田晶房(map / HandSawPress)さん。ユニスさんは、カナダ出身のアーティスト。リソグラフを使った作品も多く製作しており、世界中のアートブック・フェアで展示をおこなっています。小田さんは、世界のリソグラフブームをいち早くキャッチし、自身で中古のリソグラフ印刷機を購入した事がきっかけで「Hand Saw Press」をオープンさせました。また、特別ゲストとして、台湾を拠点に活動しているアーティストの永岡裕介さんも参加くださいました。
トロントでリソグラフムーブメントの中心にいた体験
まずは、ユニスさんがカナダのトロントで在籍していた製作アトリエ「Punch Clock Printing studio」のお話からスタート。シルクスクリーンを中心に作品を作っているなか、リソグラフの機械を仲間が手に入れたことがきっかけでリソと出会い、その後2012年に「Colour Code」という印刷スタジオが出来上がった時のことなど、まさにリソグラフのムーブメントの中心にいた体験を当時の写真を見ながら話てくれました。
このトロントにある印刷・出版スタジオ「Colour Code」はリソグラフ界では憧れのスタジオで、ここで印刷や出版された美しい本達は、世界のアートブックフェアをにぎわせています。
廃墟からオルタナティブなスタジオが生まれる
トロントは、東京と比べると家賃が安く、広く古い廃墟のようなビルにアーティストが集まり、印刷機械や道具をシェアするスタジオが多いようです。何年か占拠して建物を使用していると、その建物を使用する権利を持てたり、スタジオに対して国からの助成金が出たりもするようで、オルタナティブなスタジオが生まれやすい環境であると感じました。
ユニスさんは、リソグラフが大量に印刷することに向いている特性を活かし、自ら出版レーベルをたちあげ、自分や仲間の作品をまとめた本を作り、世界のアートブック・フェアに参加した時の話もしてくれました。フェアで出会った、世界中のリソアーティスト、出版社、本屋をたくさん紹介しながら、「本を作ると、世界中のアート仲間と繋がることができる。それは本当に楽しいことです。」と語る彼女の言葉に、レクチャー参加者は創作意欲をかき立てられたのではないでしょうか。
ユニスさんがアートブック・フェアで出会った、台湾の出版スタジオ「nos:books」もリソグラフの印刷機を持ち、美しい本を作っています。永岡さんも彼らと良く仕事をするとのことで、台湾のリソグラフ事情をお話しくださいました。
後半は、小田さんによるリソグラフ印刷のデモンストレーション。
ユニスさんが作ってきてくれた版を使い、スキャナで版を読み込んで印刷する方法で3色刷りの作品をプリントしてみました。また、Photoshopで分版をしてデータをつくり、直接データから印刷する方法も実演しました。
その後、参加者のみなさんは、ユニスさん、小田さん、永岡さんと話をしたり、Hand Saw Pressに展示してある、世界のリソスタジオで印刷されたアートブックを手に取り眺めながら、リソの世界を堪能したレクチャーとなりました!
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書いた人
安藤僚子 Ryoko Ando
インテリアデザイナー。設計事務所「デザインムジカ」で、店舗設計、演劇や科学展示などの会場構成、ディスプレイやインスタレーションなど、空間をデザインするかたわら、リソグラフ&OPEN D.I.Y.スタジオ「Hand Saw Press」のメンバーとして企画、印刷、木工作業を行なっている。