「触れるデザイン」というあらたな領域を開拓するプロジェクトとして実施された「HAPTIC DESIGN(ハプティック・デザイン)」。同プロジェクトのオーガナイザーであり、これまでに数々のプロジェクトにおいて、ロフトワークと協業してきた、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(以下、KMD)の南澤 孝太先生に、あらためてご自身の活動についてうかがうインタビューを実施しました。
ロフトワークのMTRL事業部との出会いから、「ハプティック・デザイナー」という新しい肩書きが生まれるきっかけをつくった「HAPTIC DESIGN AWARD」について振り返った前編に続き、後編では、現在南澤先生が取り組んでいるムーンショット型研究開発事業や、アカデミアと企業が共創に取り組むことの可能性についてお話しいただきました。聞き手はMTRL事業責任者の小原 和也とバイスMTRLマネージャーの長島 絵未です。
インタビューの前編はこちら
アカデミズムの世界にも反響が生まれた共創プロジェクト
体感ツールキット「HAPTICS OF WONDER 12触αGEL見本帖」

Haptic Designをきっかけに生まれたプロジェクトのひとつ。非常に柔らかいゲル状素材「αGEL」を展開する株式会社タイカとともに、機能的価値だけではない感性価値を伝えるツールとして制作。色鉛筆に12色の彩りがあるように、ゲル素材の「12触」のグラデーションを実感できるキットを開発しました。南澤先生には、触感の指標を探るワークショップを実施いただきました。
——アカデミズムの世界からはどのような反響がありましたか?
南澤 同じような課題意識を持っていた同世代の研究者からの共感の声が多かったですね。触覚は学問分野としての歴史こそ浅いものの、すでにどのように社会の中で活用していくのかというフェーズに入ってきていたので、僕らと似た課題意識を持った同世代の研究者が、いろんな場所で活動を始めていました。そういった方々に企業との共創の実績を見せることができたのはとても大きかったですし、次年度以降にもつなげていこうと考えていたんですが……ちょうどコロナ禍がやってきてしまって。
——ああ、その時期でしたか。
南澤 はい。そこですべてがリセットされてしまった感じでしたね。なにしろ、「触れてはいけない世界」になってしまったので。ワークショップやミートアップ、ハッカソンなど、ほとんどのプロジェクトが流れ、学会自体もオンライン化してしまい、あの時期のダメージは大きかったです。
2050年の人類の暮らしを構想する「ムーンショット型研究開発事業」
未来の「普通」をつくるために、複雑性をデザインしていく
南澤 孝太先生 プロフィール
2005年に東京大学工学部計数工学科を卒業、2010年に同大学院情報理工学系研究科博士課程を修了し、博士(情報理工学)を取得。同年より慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任助教に着任。その後、特任講師・准教授を経て2019年より現職。「KMD Embodied Media Project」を主宰し、身体的経験を伝送・拡張・創造する「身体性メディア」の研究開発と社会実装や、「Haptic Design Project」を通じた触覚デザインの普及展開、身体の制約を超えた未来社会の実現を目指す「Project Cybernetic being」などの活動を推進している。
南澤 孝太先生の主な活動年表
活動年表に関するリンク一覧
2011 YCAM InterLab Camp -TECHTILE-※出典:Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
2014 - JST ACCEL 身体性メディアプロジェクト「触原色に立脚した身体性メディア技術の基盤構築と応用展開」(研究代表者:舘暲 東京大学名誉教授)
- < 2014 - 2018 触覚技術をテーマとするハッカソン、ショッカソン >
2015.6 超人スポーツ協会 発足
2018.02「リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC×HAPTIC DESIGN PROJECT『距離0から拓くデザインの未来─見る/聴くから"触れる"へ』」 / LW企画運営
2018.03 新感覚の触感おもちゃ「触感とんとん相撲」伊勢丹ココイクとHaptic Design Project共同開発
2019 JST ACCEL EMBODIED MEDIA PROJECT FACTBOOK 2014-2019 / LW企画制作
2019.07 IEEE World Haptics Conference 2019 Design Showcase / LW企画運営
2022.11 ⼯芸とハプティクス(触覚技術)の融合による 新しい価値伝達と社会⽣活の創造に向けた共創プロジェクトを発⾜ (with 工芸産地協会)
2023.05 サイバネティックアバターで働き方はどう変わる? Cybernetic Avatar Experiment in 分身ロボットカフェ DAWN ver.β
2024.11 - Brain Body Jockey Project at ALS啓発音楽フェス「MOVE FES. 2024」(with WITH ALS)
2025.07 - 09 大阪・関西万博ムーンショットパーク「Cybernetic being life in 2050」〜身体的共創が生み出す未来社会〜 / LW企画運営
執筆:堀合 俊博 撮影:川島 彩水 編集:AWRD編集部
AWRD(アワード)は、企業・自治体・クリエイターが共に多様なテーマに取り組むための公募・共創プラットフォームです。
グローバルにプロジェクトやパートナー人材を募り、オープンイノベーションを通じて、事業開発・地域共創・スタートアップ支援などのプロジェクトを実現します。
企画設計から運営支援までをワンストップで伴走し、共創を通じて社会にひらきます。