CREATIVES

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おなじこと

Others
本作「おなじこと」は、人間の最初の表現に立ち返る体験型の作品である。赤ちゃんは、意図や意味に基づいて行為をしているのではない。その瞬間に感じたことや、発見したこと、「やってみたい」という欲求に従って身体を動かす。その結果として、意味づけ以前の痕跡が残る。本作は、その無意図な行為に注目し、鑑賞者自身が同じ行為を身体で追体験することで、行為・感覚・意味が生まれる順序を問い直すことを目的としている。

展示では、「砂を掴んで離す」「石を落とす」「葉っぱを隙間に入れる」「紙をくしゃくしゃにして離す」「線を複数書く」という、成果や正解を持たない行為を用意する。線を書く行為を除き、赤ちゃんの手元のみを映した短い映像を提示し、鑑賞者には「同じことをやってみてください」という最小限の指示のみを与える。行為の意味や狙いについては一切説明しない。

鑑賞者は行為の後、「いま、何を感じましたか」という問いに対して、自身の感覚を言葉として残す。その言葉は匿名のまま蓄積され、他の来場者がランダムに閲覧できる。評価や解釈の正解は存在せず、他者の感じ方に触れることで、自身の感覚が揺さぶられ、相対化されていく。

また、赤ちゃんの描いた線という「字の痕跡」に対してのみ、AIによって短いタイトルが付けられる。AIは創作主体ではなく、人間の意図を介さずに言葉を与える存在として用いられる。説明的な語や痕跡を想起させる言葉を避け、詩や物語の題名のような無関係な言葉を付すことで、鑑賞者は元となった行為や痕跡から一度距離を取り、あらためて自身の感覚で向き合うことになる。

本作が目指すのは、作品を理解させることではない。行為をし、感じ、その後に意味が立ち上がるという、人間が本来持っている知覚の順序を思い出すことである。目の前に確かに存在しているにもかかわらず、普段は見過ごされているもの。その存在や価値にあらためて目を向けることを通して、世界や地球そのものとの関係を結び直す体験を提示する。

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