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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
本提案が扱うのは、人口減少、寺離れ、後継者不足によって地域との接点を失い、廃寺化の危機にある寺院です。対象地には、遍路文化と屋台文化が共存する高知市を想定します。寺院を固定された宗教施設として保存するのではなく、既存部材と、寺が担ってきた活動や関係を町へ持ち出す「移動式寺院」へ変異させます。運営主体として、地域寺院、自治体、住民団体の連携を想定します。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
寺院は、祈りや儀式の場であるだけでなく、かつては教育、福祉、相談、医療、地域運営などを担う社会基盤でした。しかし近代化以降、それらの機能は学校、病院、行政機関、商業施設などへ分化し、寺院の外へ移っていきました。現在も建物と宗教的機能は残る一方、人々の日常との接点は弱まり、人口減少や後継者不足によって存続そのものが難しくなっています。
ここで絶滅の危機にあるのは、寺院という建物だけではありません。寺に蓄積されてきた祈り、相談、学び、助け合い、地域の記憶や人間関係も同時に失われます。材料だけを回収しても、その建築が社会の中で育ててきた働きを継承したことにはなりません。
そこで本提案では、寺院を、物理的に壊される以前から機能的な「解体」の途中にある空間と捉えます。物質的な部材と非物質的な活動の双方を次の社会へ引き継ぐことで、絶滅危惧空間の形ではなく、その作用を継承することを目指します。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
廃寺から回収した木材、建具、瓦などを用い、寺院を折り畳み、運搬し、町の中で展開できる移動式建築へ変異させます。高知市の遍路文化と屋台文化を重ね、人が固定された寺を巡る従来の関係を反転し、寺が人々の日常を巡る仕組みをつくります。
変異は、物質的な再利用を基盤として、三つの段階で行います。
第一は「寺院様式の変異」です。経堂、鐘楼、枯山水、仏塔を、形態ではなく社会的な働きから読み直します。経堂は知識を共有する「町の本棚」、鐘楼は茶の香りで到来を知らせる「茶房」、枯山水は利用者自身が形を変える「布山水」、仏塔は暮らしを支える道具を収める「道具箱」へ転換します。伝統的意匠をそのまま再現するのではなく、その背後にあった作用を現代の日常へ翻訳します。
第二は「空間構成の変異」です。四つの機能を可動式の柱状ユニットに集約し、配置によって基本型、開放型、分散型へ変化させます。基本型では祈りや相談の場、開放型では茶や読書を介した交流の場、分散型では各ユニットが町の各所に点在し、小さな公共空間を生み出します。建築は一つの完成形ではなく、畳む、運ぶ、展開する、分散する、再び集めるという反復的な過程として存在します。
第三は「社会関係の変異」です。住職と参拝者を中心とした関係を、来訪者同士、住民と地域、寺院と町の間に広がる複数の関係へ組み替えます。地域寺院、自治体、住民団体が協働し、空き地、公園、学校、駅前などを巡回しながら運営します。
社会実装によって、廃寺部材の再利用だけでなく、寺院に蓄積された学び、相談、助け合い、祈りの文化を地域へ再配置できます。絶滅危惧空間を固定した形で保存するのではなく、その働きを変異させながら次の社会へ渡すことで、寺院を再び地域の日常に接続します。
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巡り寺~遍路する寺による信仰の再解釈
かつて人々の日常と共にあった仏教。現代では寺離れが進み、全国的に廃寺が増えている現状である。本計画では、寺を解体し遍路する屋台寺として再編することで、町中をめぐりながら「寺の様式」、「建築の形態」、「人々の関係性」を変異させていく。これら3 つの変異を通して、形骸化している信仰を現代の日常的な暮らしに溶け込むように再解釈していく。
