藤井 将之(ふじい まさゆき)
今回、たくさんの興味深いアイデアを拝見しました。その中で鉄の特性を生かしたモノ、長く使うことで愛着が沸くようなアイデアに焦点を当てて評価をさせていただいたのですが、私自身、素材の経年変化が愛着につながることをあらためて認識できたようにも思います。残念ながら賞から漏れた作品の中にも、もう少し煮詰めて実現したいモノも数多くありました。「このままにしておくのは惜しい…」と思われるアイデアについてはメーカーから直接相談をさせていただくことがあるかもしれませんので、その際はお力をお借りできればと思います。
玉井 美由紀(たまい みゆき)
今回は新しいSTEELの価値を持つARTSTEELという素材を使ったデザインのAWARDで、【Wabi Sabi】というテーマの元に多くのデザインが応募され、とても幅の広いアイデアを見ることが出来ました。
全体的にはARTSTEELの特性から、愛着や変化をテーマにしたユニークな作品も多かったのですが、あらかじめ定めた、いくつかの審査基準をベースに審査を進めました。そのなかで、今回受賞した3作品はそれぞれにアプローチが異なり、オリジナルの価値を生み出していたと思います。
面白いアイデアは沢山あったのですが、それは現実の社会の中で具現化し、心から喜ばれるものであって欲しいという想いから、今回私はあえて「生活者の暮らしに価値を与えるアイデアか」と「製品化にあたり実現可能か」の2点を特に大切に考えました。
とはいえ、今回受賞しなかった多くのアイデアもブラッシュアップすることで実現可能となり、ARTSTEELのさらなる可能性を広げてくれると感じました。
柴田 隆寛(しばた たかひろ)
今回の「AWARD」には、年齢・性別、国境を越えて予想を超える数の応募が集まりました。きっとそれは、“ARTSTEEL”がクリエイターの想像力を刺激するユニークな存在であり、更なる可能性を持った素材であることを示唆していると思います。今回の審査には、素材の特徴を活かしているか? 生活者の暮らしに価値を与えるアイデアか? そして、意匠としての美しさなど、いくつかの審査基準がありましたが、個人的には重さをどう考えるのか? という点も審査のポイントにさせてもらいました。少しネガティブな言い方になってしまいますが、何を作るにせよ、鉄は木材等に比べ、どうしても重量が出てしまいます。暮らしに鉄を取り入れるという提案を、今後「FRONT」社がプロダクトを通して行っていく上で、審査員である前にひとりの生活者として、ここは外せない視点かなと考えました。また、個人的には、特別賞に輝いた“サビチャリ”が印象に残りました。身近な日常に潜む社会的な課題をポジティブに解決に導こうというアイデアが素晴らしいと思いました。全体を通して、欲を言うのであれば、“サビチャリ”のように社会と関わろうとする態度や社会的意義のあるデザインがもっと見たかったです。
小田 将輝(おだ まさき)
ARTSTEELという素材を通す事で、生活者の暮らしがどう豊かになるかという目線を特に大切に評価させて頂きました。自分では思いつかない、新しい発見が数多くありました。今回、素材の持つメリットだけでなく、デメリットの影響力を特に感じました。コンセプトやデザインが良くても、生活者が使う事を想像した時に、1つのデメリットがどうしても気になるアイデアもありました。その中でも、バランスが取れていて、暮らしや心が豊かになるアイデアを評価させて頂きました。