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「“wabi-sabi” な鉄を使って、豊かな暮らしをつくるプロダクトアイデア募集」のテーマ素材「ARTSTEEL」を手がける、株式会社フロント会長 松川兼成氏と、株式会社フロントとともに商品開発に携わってきたデザイナーの佐藤氏に、「ARTSTEEL」の魅力や特性、アワードへの期待についてお伺いしました。


「この仕上げが好きなんです。現場を1時間眺めていることもある。趣味みたいなもんだね(笑)。」


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サビを意匠に使った「NEW RUSTY」シリーズ。サビ剤を施した後に中和処理をし、乾かした後に特殊トップコートで仕上げる

ーーARTSTEELの魅力はどのようなところにあるのでしょう?

松川会長:我々は、昭和55年に鉄の建材メーカーとしてスタートしました。鉄は非常に良い材料です。安価で加工性もいい。建材としては優れているが唯一の欠点が「サビ」でした。ある時、逆にこのサビをうまく意匠として表現するような材料はつくれないかと思いましてね、耐候性鋼の意匠を追求することにしたんです。そして自然なサビの美しい表情を持つ耐候性鋼「ARTSTEEL」の原型がようやくできたのが約15年前です。

そこからは、鉄の風合いの魅力にさらに引き込まれまして、サビだけではなくリン酸処理にバイブレーション研磨で細かな模様を施した「SUPER C.F.C」シリーズなどにラインナップも広げ、追及を重ねてきました。そして「研磨模様が施された金属建材およびその製造方法」で特許も取得しました。

この仕上げはね、職人が一点一点、手仕上げをしているんですよ。何度も何度も表情を見ながらサビ剤を重ねたり研磨したりしながらね。こんなに繊細な仕上げができるのは日本の職人技のおかげなんです。ほら、なんともいえず良い風合いでしょう?(笑) 私はこの仕上げが好きなんです。今でも工場によく足を運んでいますが、現場を1時間眺めていることもある。趣味みたいなもんだね(笑)。

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株式会社フロント会長 松川兼成氏


佐藤さん:鉄には無骨なイメージがありますが、「ARTSTEEL」にはとてもエレガントな表情があります。しかも鉄の重厚感は残したままに。エレガントさと重厚さを兼ね備えた、とてもユニークな素材だと思うんです。

この自然な色合いも大きな魅力です。この色合いや深い風合いは塗装では出せません。見ていて飽きないんですよね。自然発色なので、植物や鉱物などの自然物との相性がいいというのも「素材」として面白い点です。

サビは劣化ですが、「ARTSTEEL」はそれを「成長」にすることができます。普通は塗装が剥げたりするのは劣化ですが「ARTSTEEL」だとそれが味になっていく。歴史性が重ねられるところが魅力です。錆びさせ方によって、表情も育てられる、自分の想像を超えて美しいものができるという面白さがあるんです。

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株式会社フロントとともに商品開発に携わってきたデザイナーの佐藤氏

折り紙でつくれるような表現は実現できるが、三次曲面は苦手

ーー「ARTSTEEL」の素材としての特性をおしえてください

松川会長:「ARTSTEEL」は、サビでサビを制して皮膜し意匠性を施した耐候性鋼です。もともとは建材に使われていて、巨大な橋や防波堤の支柱に使われるほどの素材なので、非常に頑丈です。何十年経っても内部まで劣化しないんですよ。 しかし、耐候性鋼とはいえ、劣化を防ぎ表情の美しさを保つためには、常に水が溜まっている場所や、結露が頻繁に生じる場所では定期的なメンテナンスが必要になります。

また、最後に特殊トップコートを吹き付けて表面を保護しているので、汚れにくい、傷がつきにくいという特性もあります。ただ、このトップコートは可食を想定したものではないので、カトラリーやコップなどの口に入るものは、やめておいたほうがよいですね。 加工性については、基本は鋼板などを折り曲げるベンディング加工になるので、たとえば折り紙でつくれるような表現は実現できます。しかし、球面などの三次曲面は難しい。また、アングル鋼材やエッチ鋼材などの一般鋼材を使ったアイデアももちろん可能です。

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ベンディング加工後に溶接や研磨をしてフォルムを仕上げる。その後に表面のテクスチャや色をつけていく。


ARTSTEELの特徴

・職人の手加工による美しい仕上げ
・自然な風合い
・経年変化による奥深い色調
・巨大な橋にも使われるほどの堅牢性
・汚れにくい、傷がつきにくい、補修が可能
・加工性が良く、切断・折面・溶接も容易

ARTSTEELが苦手な点

・水場での使用には定期的なメンテナンスが必要
・口に入れるものはやめた方がよい
・三次曲面の加工は難しい



「サビ」を使って鉄を強くし、美しい表情を出す「ARTSTEEL」の魅力をもっともっと多くの人に広めたい

ーー今回、このようなプロダクトのコンテストを開催した狙いは?

松川会長: 「ARTSTEEL」は、赤坂サカスや京王吉祥寺駅、京都の伊右衛門サロンのファサードなど、たくさんのメジャーな建築物で使われ、著名な建築家たちにも愛されてきました。 しかしね、「サビ」と聞くと、一般の人は一歩引いてしまうんですよ。「サビ」で製品がダメになってしまうイメージがあるからね。この「ARTSTEEL」は、「サビ」を使って鉄を強くし、美しい表情を出している。この良さをもっともっと多くの人に広めていきたいんです。 今までの商品開発は、デザイナーが設計し、我々がその製品を作るという流れでした。しかし、今回は一般のみなさんからアイデアを募集し、一緒に製品を作っていくというオリジナルな流れにチャレンジすることにしました。このアワードを通して多くの人が「ARTSTEEL」に触れて興味を持って欲しいと思っています。

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ARTSTEELが使われている、山梨県甲府市 小さな蔵の美術館のファサード


暮らしに長く根付いて人の居心地の良さを作れるもの。モノと人の良い関係をつくれるようなプロダクトを

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「C.F.C-N」シリーズの「メタリックロゼ」。色合いと表情を見ながら少しずつ何度もカラーを重ねていく
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「New Rusty」シリーズの仕上げのためにサビ材を塗布。スプレーと乾燥を繰り返すことで独特の深い風合いをつくりだしていく


ーー応募する方々にメッセージをお願いします!

佐藤さん:我々は、この「ARTSTEEL」を使った今後のものづくりのコンセプトを「鉄のある美しい生活」と置いています。木材やガラスやプラスチックなど身の回りにある素材を「ARTSTEEL」に置き換えた時にどんな景色になるのか。そんなことをイメージしながら、会議室で生まれないようなアイデアを目指していただけると嬉しいですね。「暮らしの中に鉄を持ち込む」という観点で、「ARTSTEEL」の表情の美しさを生かしたアイデアや、鉄の磁気性を生かして機能性のあるアイデアがあるかもしれません。

鉄は壊れても直せます。手をかければかけるほど愛着も湧いてきます。飽きのこない長く使えるもの。暮らしに長く長く根付いて人の居心地の良さを作れるもの。モノと人の良い関係をつくれるようなプロダクトだといいですね。

松川会長:耐候性鋼の良さ、そして「ARTSTEEL」が持つ日本の伝統美を生活の中に取り入れた、生きたアイデアを募集し、海外にも通用する “wabi-sabi” な製品をつくっていきたいと思っています。みなさん何卒よろしくお願いします!

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しばしば工場に出向いては、品質チェックや試作を会長自ら行なっている

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