COMPETITION

『自然のやさしさを探るAWARD』

自然から感じる心地よさとは何か、学び取り入れる試みを

結果発表 2020/11/03(火) - 2020/12/23(水)

自分だけの生き方を実装するための創造力、誰もがクリエイションできる世界へ。川島大地さん×小森勇太さん。やさしさ対談。

2020/10/27(火)

”因縁”という仏教の言葉がある。これは”すべての物事には原因がありますよ”ということ。

”因”は直接的な原因、”縁”は間接的な原因のことを指す。
例えば、今のあなたという人間は両親から生まれた(直接的な原因)だけでは成り立たない。色々な人との出会い(間接的な原因)を経て今ここにいるはずだ。

因は想像力、縁は創造力なのかもしれない。考えて、形にする、そうやって今がある。 

今回のテーマである”やさしさ”に置き換えると「あのお婆ちゃんに席を譲りたいな・・・」と想像することはあっても行動することができなかった、そんな経験が誰しもあると思う。

考えたことを形にすることは、それだけでひとまず讃えられるべきことなのかもしれない。

今回は、想像を形にしていくため、創造力を促進する活動をされているお2人にお話を伺っていく。
ゲストはPanasonicのFUTURE LIFE FACTORYで「D+IO(ドゥーイングアイオー)」というものづくり文化を促進するプロジェクトをされている川島大地さん。Life is Tech!という中高生向けのプログラミング教育を促進する会社の副代表、小森勇太さん。

大切な誰かへ届けたいみんなのモノづくりを支援する

雨宮:お2人とも今回はよろしくお願いします!まずは最近されていることなど伺ってみたいのですが、川島さん最近はいかがですか?

川島:コロナ禍では「D+IO(ドゥーイングアイオー)」というモノづくりの文化を促進するプロジェクトを始めました。これは”大切な誰かへ届けたいみんなのモノづくりを支援するプロジェクト”です。

コロナ禍ではマスクやフェイスシールドを手作りして誰かにプレゼントするようなことが起きていましたが、Panasonicもモノづくりの会社として何か貢献できないか考えました。そこで、市販の電子部品や身の回りにある素材を使って作れるプロダクトのソースコードや配線図など、レシピをGitHub(ソフトウェア開発プラットフォーム)で無償公開して、誰でも自由にアレンジしてつくれるようにしました。

最近ではペットの活動量や体重、飼育する環境の温度・湿度などが測定できる「小動物ヘルスケアデバイス」を公開しました。コロナ禍では小動物を飼う需要が増えたそうなんですけど、ここにお役立ちできるのではないかという提案です。

中高生の可能性を最大化する

雨宮:川島さんありがとうございます。ものづくりの会社がレシピを無償公開ってすごいですね。小森さんは最近いかがですか?

小森:僕はライフイズテックという会社の副代表をしていまして、中高生ひとり一人の可能性を最大限伸ばすることを目的に、主に中高生にプログラミング教育を提供しています。コロナで結構変わっちゃったこともあったんですけど、基本は夏休みに大学でキャンプをして学んだり、オフィスなどに毎週来てもらいスクーリングという形で学んだり、あとはディズニーと「テクノロジア魔法学校」というオンライン教材を開発したりしています。

雨宮:コロナで実際に集まることが難しくなってしまったと思うのですが、その間はどうしていたんですか?

小森:そうですね。2月の全校休校という政府の発表が結構衝撃的で、まぁまず来週の授業どうするっていうことから悩みました。2月には期の最後の授業で認定式みたいなものをやっていたんです。結構エモめなやつを。結論から言うとオンラインで対応したのですが、認定式のエモの部分をどう設計するかってことは考えどころでしたね。結果すごく良いものができたのですが

席替え業界のイノベーター

雨宮:オンライン上でエモさを設計するのは確かに難しいところですよね。ちなみに川島さんはどうやってプログラミングを学んでいたのですか?

川島:高校の夏休みの選択式の補修でC言語の授業があって、それを受けて楽しいなって思って独学で学んでいました。大学もコンピューターサイエンスを専攻して本格的に学んだって形ですね。

雨宮:僕全然プログラミング分からなくて「Life is Tech !」で学びたいくらいなんですけど、C言語ができるとどんなものが作れるようになるんですか?

川島:C言語ってコンピューターのスタンダードな言語なんでだいたいなんでもできちゃいます(笑)

雨宮:すごい!川島さんはプログラミングそのものの面白さから入っていかれましたが、最初のとっつきにくさや難しさで挫折してしまいそうなところをカバーされているのが「Life is Tech !」のプログラムってことですよね。最初のとっつきにくさの部分を解消するため特に工夫されてることはありますか?

小森:まずはエンターテイメントですね、とにかく面白いぞと(笑)僕らもプログラミングできなかったからこそ、中高生の参加者と同じ思考で考えられたのが今思うと良かったかなと思います。

川島:思えば僕も最初はゲームをつくってました。子どもの頃はレゴで遊んでていて、ちょっと大きくなるとマインドストームを買ってもらって、簡単なプログラミングでロボットを作っていて、今思うと遊びながら学ぶって大切だったなと思いました。

小森:仰る通りだと思います。学ぶことは目的じゃなくて、何をするのかが重要だと思っていて、そうすると子供達も課題を解決する思考になっていきます。

例えばある子は「席替え楽々アプリ」っていうのを作っていました。その子は結構やんちゃ坊主だったみたいでだいたい先生の目の前に恣意的に配置されていたみたいなんですけど、それがすごい嫌で席替えを公平にしたかったらしくて(笑)

アプリのシステムはシンプルでランダムに席を配置するってだけなんですけど、自分で課題と思っていたもの解決していく姿勢ができたことは素晴らしいなって思いました。あと彼らの世界はそんな広くないので、例え100ダウンロードでも、彼らの友達を超えた誰かがダウンロードしていくれているということなので、社会との繋がりができることもいいなと思いました。

クリエイションが最大化された世界

雨宮:その子は席替え業界のイノベーターですね。そうやって、多くの人がクリエイションが最大化されていった先にある世界のイメージってお2人はそれぞれどのようにお持ちですか?

川島:ものづくりの良さって、その人のライフスタイルに合わせたぴったりなものが作れることだと思うんです。自分自身の手で身の回りの環境を良くできるってすごくいいことだなと。D+IOもそうやってライフスタイルにあったものを誰もが作れるようになればいいなと思って作りました。

雨宮:プロダクトにライフスタイルを合わせるのではなく、自分の理想的なライフスタイルに合わせたプロダクトをつくっていけるってことですね。小森さんはいかがですか?

小森:中高生の可能性を最大化させたいと思っていて、100人いれば100人才能があると思ってるんですよ。音楽も映像もなんでも作れる子がいるんですけど、コミュニケーションが苦手で不登校になってしまう例があったり。

語弊を恐れずにいうと、学校って記憶力と運動神経が良いこととコミュニケーション能力が高いことの3つで高い能力がないとスポットライトが当たりづらいんです。これは学校が悪いわけではなくて構造上仕方がないことなんですけど、色んな子にスポットライトを当ててあげたいと思っていて。

今って自分のやりたいことに合わせて自分ならではのキャリアが描ける時代だと思うので、クリエイションが最大化された世界はその選択肢が全て解放されている、と思ってますね。

雨宮:なるほど。世の中に合わせるんじゃなくて自分の理想に近づくためのツールとしてプログラミングという技術があるんだなぁとお2人の話を聞いていて思いました。

オープンソースにした方が結果的に良いものができる

雨宮:「Life is Tech !」では授業を修了した大学生がメンターとなって中高生にプログラミングを教えていたり「D+IO」もレシピを無償公開していますが、すごく嫌な言い方をすると基本的にスキルセットって自分だけ持ててれば良いものじゃないですか。それをシェアしていく動機ってどういうところにあるのでしょう?

川島:エンジニアの持つ技術って自分だけが持っているものではないので、オープンソースとしてみんなで1つのものを作っていったほうがいいものが出来上がるんです。ソフトウェアの世界ってソースコードを公開するってよくあるんですけど、Panasonicみたいなハードウェアの会社もそうやっていったほうが良くなるんじゃないかなと思ったりします。

雨宮:確かに。人工知能の世界は分かりやすくオープンソースでみんなで成長させているって感じですもんね。

小森さん、川島さん、やさしさってなんですか?

雨宮:「ソウゾウするやさしい展」のテーマである”やさしさ”に触れていこうと思うんですけど、まずこのコロナ禍でお2人が感じたやさしさって何かありましたか?

小森:そうですね、些細なことではあるのですが、出前の配達の方が玄関の前に食事を置く時に、風呂敷を敷いて置いてくれていたこととか(笑)

玄関に置いていくので取りに行く時にはその人はいないんですけど、そこには確かに人がいたんだなぁと思うと、やさしさを感じました。そういうふとしたことにありがたいなって思う気持ちがコロナになって増えた気がします。

雨宮:やさしさが増えたということもあるかもですが、それ以上に自分が周りのやさしさに気づく機会が増えたってことですね。

川島:ごみ収集の方とかリスクがある中変わらず働いてくださっていてやさしさを感じたこともありますし、マスクとか品薄の中ものづくりでそれを解決しようという人間の動きは他にもあって、やさしさが加速していってるんだろうなと思いました。

雨宮:思えば3.11の時もそうだったなぁと思い返しました。危機は危機なんだけどそれ故に見えてくるやさしさがあったなぁと。そんなことも踏まえて改めてお聞きしたいのですが、お2人とって”やさしさ”とはなんですか?

小森:人を感じることは人にしかできないとするならば、やさしさとは誠実であることと、驚きがあるということだと思います。例えば、大学生のメンターが中高生を教える際にはやさしいことはもちろん、期待を超えるということが大切で、具体的にいうとマニュアル化させないことを大事にしています。

マニュアルがあるとそれをなぞってしまいがちで思考量が減ってしまうので、基準だけを渡すようにしています。「Life is Tech !」が目指したい世界などはめちゃくちゃ伝えるんですけど、あえて余白を残すことでそれぞれのオリジナリティで子供たちに向き合ってくれるんですね。そこに誠実さや驚きが起きるので、意識していますね。

雨宮:余白があるほうが結果的にレジリエンスになるわけですね。昔サドベリースクールっていう時間割も先生もいない学校に行ったことがありまして。そこではみんな自由に遊んだり、料理したり、それこそプログラミングを学んだりしているんですけど、じゃあ一般常識は養われるのかって思った時に、めちゃくちゃ養われていたんですよ。

そこではみんな自分に何ができて、何ができないのかよく知っているから他者を尊重する文化ができていて、だからこその礼節がありました。
余白を作ることでむしろ教えるよりも柔軟に強靭な育ち方をしていくことってあるなぁと共感します。

川島さんはやさしさということについて、どう思いますか?

川島:誠実っていうこともよく分かりますし、あとはその人に向き合うってことなのかなと。FUTURE LIFE FACTORYでは未来の豊かな暮らしを考えて、未来からのバックキャストで今できることを考えたりしているんですけど、それを考えるには自分以外の誰かを想うことが大切なんです。基本的なことではあると思うんですけど、大事なことだなぁと。

自分以外の誰かを憑依させるようなことが寄り添うってことなのかなと思うんですけど、SDGsもそういうことが大事なんだろうなと思います。

雨宮:お2人ともありがとうございます!最後に、今推しておきたい情報はありますか?

小森:今は「Life is Tech ! Lesson」という学校向けの教材を広めています。プログラミングは今年から小学校が必修化されて、今後中高と必修化されていくんですけど、忙しい教員の方でも分かりやすく教えることができる教材ですね。

川島さん:これから3つ4つとレシピを出していこうと思っているんですけど、レシピのアイディアを一般公募できたらいいなと。こういうことに困っているから、こういうものを作って欲しいなどの声を募集して、私たちでそれを開発できればと思っています。

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自分でものをつくるということは、世界を手元に戻していくこと
なのかもしれない。与えられたものをただ受け取るだけでも生きていける現代だからこそ、自分に、あるいは大切な誰かに贈るために、創造力を働かせることは大切なことなのだ。

何故ならば因があって縁があるように、世界は、生物は、あるいはこの宇宙は、動的に変化し続けることで安定をしてきた。絶えず変化を繰り返すことが、健全なサステナビリティと言えるのかもしれない。

そんな大きなことでなくても、自らものをつくるということはそもそも楽しい。インターネットでなんでも買えてしまう時代だけれど、既製品のような品質のものは作れないかもしれないけど、そこに楽しさややさしさを感じるようであれば、それは大変に素晴らしいことなのだ。

つくりたいものをつくろう。

つくりたい世界をつくろう。

つくりたい自分をつくろう。

つくるための方法は、こんなにも分け与えていただいているのだから。



インタビュアー:
体験作家
雨宮優

インタビュイー:
ライフイズテック株式会社 取締役副社長COO
小森勇太 

デザインエンジニア パナソニック株式会社 デザイン本部 FUTURE LIFE FACTORY 在籍
川島大地 


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パナソニックセンター東京では、2020年11月3日(火)~12月27日(日)までの間、SDGs達成に向けた取り組みの一環として、オンラインキャンペーン「ソウゾウするやさしい展」を開催しています。

「ソウゾウするやさしい展」は、大喜利で楽しむ、物語にして伝える、カタチにするという3種類のコンテストを通じて、投稿する参加者がソウゾウしたやさしさが作品となるオンライン展示会です。やさしさをアウトプットするというアクションそのものが社会課題の解決に繋がる一歩であると捉え、SDGsの達成に貢献していくことを目指しています。

ソウゾウするやさしい展:https://awrd.com/sozo-yasashii/



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