これからの民主的なものづくりとは? 「YouFab Global Creative Awards 2021」 受賞作品発表
FabCafe Globalと株式会社ロフトワークが主催するグローバルクリエイティブアワード「YouFab Global Creative Awards 2021」(YouFab 2021) は、最終審査結果を発表しました。
26カ国、総計 335作より19作品の入賞作品を選出。その中から今年のテーマ、「Democratic experiment(s)」を体現する作品・活動として、グランプリ、学生賞、特別賞 計5点が選ばれました。
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YouFab 2021 授賞式と受賞作品の展示会の開催に関して
■YouFab 2021 授賞式
授賞式および審査員と受賞者を交えたトークセッションを開催いたします。
- 日時:2022年3月17日 18:00〜20:00 (予定)
- 会場:オンライン開催
- 登壇者:審査員, YouFabアワードチェアマン / 福田敏也, 受賞者
■YouFab 2021 展示会
本年のテーマ「Democratic experiment(s)」に基づき、受賞上位作品を中心とした展示を2022年春、都内にて開催します。
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受賞作品
GRAND PRIZE
Public Voice
Creator: Dora Bartilotti / Collaborator: Leonardo Aranda
審査委員長コメント:
伊藤 亜紗
東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長、リベラルアーツ研究教育院教授
痛みは、本来はそれを感じている体から切り離せないものです。しかしこの作品では、テクノロジーの力によって、痛みが特定の体から切り離され、服という形で、別の人にもまとえるものなっています。すばらしいのは、その結果、「個人の集まりとしての集団によるデモ」ではなく、「他者たちが憑依した個人によるデモ」が可能になっている、という点です。一般的な集団型のデモは、シンプルなスローガンを打ち出すために、ひとりひとりが背負う物語の多様性が消えてしまいがちです。しかしこの「しゃべる服」は、ビジュアルによって強いインパクトを生み出しながらも、パーソナルな物語をそのまま社会にとどける仕組みになっています。デモに立ち会った人が、服の声を聞くために、一対一で近くに寄って耳を傾けている姿も印象的でした。さらに、服を作る過程にもたくさんの人の手が介在しています。声にならない思いまでもが、テキスタイルに込められていることが分かります。そして、参加している人たちが何よりとても楽しそう。内発的な活動を生み出すラボの仕組みも素晴らしいなと思いました。
GRAND PRIZE
the Museum of Edible Earth
masharu studio
審査委員長コメント:
伊藤 亜紗
東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長、リベラルアーツ研究教育院教授
いつでもどこでも足元にある「土」を通して、人間の文化はもちろんのこと、人間のスケールを超えて、私たちの想像力を空間的にも時間的にも拡張してくれる作品でした。そもそも、私はふだん「土とは地球である」ということを意識していませんでした。日本語だと「土」と「地球」はまったく別の単語だからです。しかし、英語では「Edible Earth」は「食べられる土」であると同時に「食べられる地球」でもあります。確かに、地球上の最初の生命にとって、食べ物は地球だったはずです。だとすれば、土を食べるとは、原始の生命の食事を追体験することなのかもしれません。さらに、「食べる」という行為は、私たちの内と外を反転させます。土という「環境=外側」にあったものが「自分=内側」になるからです。そもそも、「環境」とは外側にあるものではなく、自分と一体になったものなのかもしれません。環境を再定義する視点、そしてそれに伴うスリルも、この作品の大きな魅力だと思いました。
SPECIAL PRIZE
審査委員コメント:
小川 立夫
パナソニック株式会社 執行役員 CTO
Home Grownは、地域で循環するものづくりの環境から生まれたインターフェイスというだけではなく、オブジェクトのテクスチャーに触れるという体験を通じて、材料と素材を育む土地、そこに根付く表現、それらを集め、ものをつくる人たちとそれを使う人との間に、新たな関係性を提示してくれる。それは、使えば使うほどに、素材や地域、消費への意識を育み、愛着といった気持ちにもさせてくれます。これは、パナソニックがつくるプラスチック樹脂などからできた成形品が苦手としていた関係性のあり方を提示しており、まさに我々が今後考えていかなくてはいけない世界観のヒントを示してくれているように感じました。Home GrownはUKで生まれたが、もし日本に置き換えたら、例えばどのようなテキスタイルやその他の素材になるだろうか?そういった、国や地域を越えた展開も考えられ、ユニークで新しいものづくりや文化が生まれてくるような大きな可能性を持った素晴らしい作品だと思う。
STUDENT PRIZE
embrace
Silke Hofmann