CREATIVES

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「絵の具のようなもの、道具のようなもの。」

「絵の具のようなもの、道具のようなもの。」は、身近な素材や環境との向き合い方を問い直すためのアートプロジェクトです。全国の土地から集めた「土」を絵の具として扱い、身近な素材でつくった、道具になりきらない“不器用な道具”で描くことで、「つくるとは何か?」「素材とは何か?」という根源的な問いを立ち上げます。
土は土地の記憶を抱えた素材であり、粒子、色、触感、乾燥のしかたまで一つひとつ違います。道具もまた、「何に使うか不明」「持ちにくい」「予測できない」といった不確かさを抱えています。その思い通りにならなさの中で、人は目で正解を探すより先に、手触りや抵抗から判断し、素材と交渉しながら進みます。
本作では、土や素材の情報を可視化し、その背景や文脈を丁寧に示すことで、参加者が素材と“出会い直す”導線を設計しました。便利さと効率に最適化された社会では、「自分で考え、創造し、素材と向き合う」機会が減っています。だからこそ本作は、正しさや最適解から距離をとります。最適解を高速に出せる技術が増えるほど、ためらい・調整・失敗から生まれる行為こそが人間の領域になる。
そこで「うまく描けない/正解がない」状況を意図的につくり、土や素材の言い分に揺さぶられながら描く体験によって、既成の制作プロセスを揺らし、人間の創造行為を再起動します。土や素材を組み替え、“絵の具のようなもの”と“道具のようなもの”として提示することは、身体が思考する瞬間を呼び戻すための試みでもあります。

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