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不気味な記憶 パパの伏線

美術 / グラフィック / イラスト / その他
わたしの父は興奮しやすく、短気でいつも声を大きく荒げる人であったため、わたしは父の事を好いてはいなかった。小学三年生の時、珍しく母が外出でいない休日、わたしは居間で一人遊びをしていた。本当は自分の部屋に籠っていたかったのだが、なぜか父がわたしのベッドに横になっていたのだ。その事自体もあまり気分は良くなかったが、きっと寝ているのだろうと黙っていると、父の声がした。「舞、パパの事が好きか。」突然しおらしくなって一体何の事かと思ったが、少し考えてから「うん。」と答えた。初めて親に気を使って嘘をついた瞬間だった。「そうか。」と返ってくるまでの沈黙は、気まずく、長く感じた。その後すぐに母親が帰宅し、いつも通りの休日になった。それから一、二ヶ月かした頃、父は家を出て行った。離婚すると聞いてから、初めこそ突然の事のように簡感じて動揺したが、すぐに父のいない生活に慣れた。「あの休日にはもう、母から父にその話は切り出されていたのだ。」と事を理解し、父が意図的か無意識か、敷いた伏線を回収出来たのはしばらく経ってからだった。

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