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不気味な記憶 おたまじゃくしと桃ジュース

美術 / グラフィック / イラスト / その他
小学四年生の春、都内の公園にお花見に行った。大人ばかりで遊び相手もなく、退屈したわたしは、一人でふらふらと公園内を散策していた。あまり綺麗とは言えない池の、苔で濁った水の中に、小さなおたまじゃくしが泳いでいる。そのふりふりとした動きぶりがとても可愛らしく思えて、桃のジュースが入っていたペットボトルの中を飲み干して、おたまじゃくしを掬った。その際に苔で脚を滑らせて尻餅をつき、びしょびしょのまま帰宅することになったのだが、おたまじゃくしを手に入れたわたしはごきげんだった。水槽の代わりに、飾り用の奇妙な形をしたガラスつぼに、そのまま中身を流し込んだ。それから数日後、一匹が力なく水中を漂っていた。ガラスつぼに手を突っ込み、つまみあげた。少しでも強く押せば、はじけてしまいそうなくらい繊細な感触。生えかけの脚は、本当に機能するのか分からないくらいに小さく、ぺらぺらの尾がぺったりと張り付く。水に浸した手からは、強い桃の香りがした。掬った際に、ペットボトルからジュースの香料が水に移ったのだ。そのうちに、三分の二程が死んでしまった。仕方がないと近くの公園に放しに行く車中、ガラスつぼを抱えていると生臭い匂いに混じって、まだ少し桃の香りがした。その香りは、水ごとおたまじゃくしを放した時に、また強く漂った。

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