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biocouture

現在までに3体の実験作品を製作。

蚕の平面吐糸によるマテリアル製作
蚕は通常、幼虫から成虫に変態する蛹(さなぎ)の時期を繭(まゆ)の中で過ごす。3D状の繭を作れない2D状の環境を人が構築すると平面に吐糸する。蚕の平面吐糸の特徴を活かすための環境デザインの実験を試みている。
・吐糸の足場となる図形を円、六角形、正方形、三角形に設計
→図形の頂点の角度が小さくなるほど、頂点部の吐糸が減少する傾向にあり、円形が最もきれいに吐糸した素材となった。
・吐糸の足場を、V、Y、Tに設計
→足場以外の空間部にも吐糸し、三角形状の不織布が生成された。さらに、空間部に吐糸する際、まず梁となる繊維を吐糸し、その後、その間を埋めるネットワーク状繊維を吐糸し、太い繊維と細い繊維が混在する素材となった。

実験データから、吐糸パターンにあるアルゴリズム、不織布を生成する上で蚕が行う予測をもとにトポロジー最適化を解析する予定である。

クロトゲアリによる蚕の不織布の縫製
クロトゲアリは通常、樹上で葉や草を折り曲げて営巣する。折り曲げた草や葉を繋ぎとめる際に、自分たちの幼虫が出すシルクを使用する。成虫のクロトゲアリは幼虫を口にくわえて、幼虫の出す糸で葉同士を接着する。この営巣技術で、葉や草の代わりに蚕が作った不織布のパーツを繋ぐために、人体の1/4サイズの骨格標本上に、モデルとなるコスチュームを蚕の不織布のパーツでデザインし、そのモデルにアリを移巣し、素材を縫製してもらう実験を実施している。
1体目:蚕の不織布を簡易的に腰、頭部にデザインし、営巣素材として、蚕の不織布の破片や草を周囲に設置した。蚕の不織布が覆う首回り、頭部、骨盤に草や不織布の破片を運び営巣したが、骨格の内側の空間にコロニーができ、表面の不織布を縫い合わせなかった。予測と反し、肋骨内の大きな空間ではなく首回りの小さな空間にパンクなデザインが施されたコスチュームとなった。
2体目:蚕の不織布を標本の全体にデザインし、営巣素材として不織布の破片のみを設置した。モデルのデザインがすでにコスチュームとして完成されており、アリが縫製する空間がないため、宙に浮く標本の足と地面の空間に営巣した。人が構築したデザインを中心にするより、アリが縫製する空間を構築し、アリにデザインをゆだねる課題が見つかった人寄りのデザインのコスチュームとなった。。
3体目:蚕の不織布をレイヤーにして立体空間を作りながら、部分的(上半身)にデザインした。不織布と不織布の間の空間に営巣している様子が観察され
上手く不織布の空間でアリが縫製のデザインをしてくれそうではあるが、現在進行中の実験であるため、引き続き経過を観察する。

今後は、アリ同士のコミュニケーションや集団探索のアルゴリズムやアリの幼虫の吐糸のメカニズムを分析し、縫製個所に誘導する手法を探索するとともに、アリの個体数を増やし、人体サイズの縫製環境をデザインする。

メイン写真:3体目のモデルデザインの写真
サブ写真:蚕が生成した不織布の写真
    アリが営巣、縫製する写真
    人が蚕の吐糸環境、アリの縫製環境をデザインする写真

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