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作品タイトル(日本語)
biocouture
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作品タイトル(英語)
biocouture
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制作物のコンセプトを記載してください。
どのようなものにも合う一つの完全な解を探索するのでなく、未完で不完全でも、この場所、この瞬間に多目的最適化を行い、多種多様な生成形態を生み出してきた生物たちは、私たちの枠組みを越える生のクリエーターである。生命のメカニズムや彼らの経験に基づく進化の過程で、長い月日をかけて獲得したこの変容形態は、まさに、変動する世界で、自身の変数の振れ幅を生存範囲内にコントロールする調整力である。つまり、彼らは、自身を見つめ、世界を見つめ、ありのままをただ受け入れ、自身の振る舞いを変えている。つまり、彼らは、私たちが自然の法則に従い生を営むうえで、柔軟で多様なデザインを生み出すうえでの学びである。
「biocouture」は、ファッションが生き続けるために、生物と強いコネクションを形成し、ファッションが息をする姿勢を整える。永遠なものは何一つない世の中で、ファッションのリズムを回復力のある生のリズムに還すために、外の世界でなく私たち自身の振る舞いをシフトさせる。生物たちがどのように暮らし、生をデザインし、どのような力を持つのかをひたすら見つめ、その恩恵すべてに心を開き、彼らと息を合わせて、一つになる。迷いながらも共に学び、歩み続ける相互依存、互恵形態である。一つ一つの相互作用が、全ファッションネットワークを変容させる。
「biocouture」は、蚕とアリと人の能力や天分で衣服を生み出す。蚕は、彼らの見事な紡績技術で、幾何学図形の足場上に繭ではなく不織布を紡ぐ。アリは、彼らの見事な営巣技術で、樹上の葉ではなく蚕が紡いだ素材を縫製する。人は、彼らのデザインを育む空間を作り、彼らの吐糸・縫製環境の最適なモデルを探索する。環境負荷をかけずに、生物のエネルギー、デザイン、リズムで唯一のマテリアル、クチュールを生み出すシステムを創造し、ファッションのネットワークを蚕とアリと人のコネクションで協働空間へと変容させる。 -
制作物のコンセプトを記載してください。(英語)
Living creatures are creators of life beyond our limits, because of keeping optimizing multi-objectively in here and in this moment without searching for a one-size-fits-all complete solution, which has brought them their various generative forms even if unfinished and incomplete. These transforms having been supported by over millions of years of evolution from biological mechanisms and their experiences are about to control and regulate themselves with keeping the physiological variables within the tight bounds that are compatible with survival in variable worlds: They see themselves and outside worlds and accept simply being who they are and change their own behaviors. That’s why they are an encyclopedia for us to create various resilient designs to move our life forward according to the law of nature.
“biocouture” regulates our breathing forms and strengthen our connections to living creatures in order to keep our fashion alive. Because nothing lasts forever, we need to shift our own behaviors not outside worlds toward bringing our fashion back to resilient rhythms of life. We keep seeing how living creatures live and how they design their lives and what energy they have already and open our heart to all these blessings. We learn and walk together with harmonizing our breath with living creatures while being confused and become oneness: total interdependence, reciprocal altruism. Each of our behaviors interacting in concert transforms the whole fashion network.
“biocouture” generates garments with faculties and gifts of silkworms, ants and humans. Silkworms generate non-woven fabrics on the geometric scaffolds, not the cocoons, with their excellent arts of spinning. Ants sew those materials together, not the plants on the tree, with their excellent arts of forming colony. Humans give them some spaces to grow their designs and search optimal models for their spinning and sewing environments. We create the systems to generate unique materials and coutures with our vital energy, design and rhythm without burdening the environment and transform the whole fashion network into the co-working spaces by the connections between silkworms, ants and humans. -
作品の素材・仕様
1体目 寸法:縦11×横11×高53㎝(骨格標本含む)
重量:550g(骨格標本含む)
2体目 寸法:縦15×横20×高48㎝(骨格標本含む)
重量:500g(骨格標本含む)
3体目 寸法:縦16×横18×高48㎝(骨格標本含む)
重量:450g(骨格標本含む)
使用した素材
蚕シルク
アリシルク
セルロースナノファイバー(竹由来)
草 -
作品の素材・仕様(英語)
First work Dimensions 4.33” L x 4.33” W x 20.86” H (including human skeleton) inches
Weighs 1.21 pounds (including human skeleton)
Second work Dimensions 5.90” L x 7.87” W x 18.89” H (including human skeleton) inches
Weighs 1.10 pounds (including human skeleton)
Third work Dimensions 6.29” L x 7.08” W x 18.89” H (including human skeleton) inches
Weighs 0.99 pounds (including human skeleton)
Material
Silk
Cellulose nano-fibres of bamboo
plants -
作品のリファレンスURL
https://www.kidnext.design.kyushu-u.ac.jp/projects/6007
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作品の映像URL
https://www.dropbox.com/s/hb2q7zz03mv9ple/biocoutre.mp4?dl=0
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公式サイト、もしくはSNSのURL
https://www.instagram.com/terumiikenaga/?hl=ja
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特別賞のテーマにどう作品が関連しているか説明文を記載
「biocouture」で行う実験がもたらす結果は、人と蚕とアリの関係性で引き起こされる。「なぜ蚕は図形に沿って吐糸してくれないのか?」「なぜアリはこの空間にコロニーをつくるのか?」つまり、人が意図するように彼らは行動してくれず、しかしながら、予測できない彼らの行動は驚異であり、そこから人は学び、そして自身の枠組みを押し付けるのではなく、次なる手法を考える。私たち自身を、蚕を、アリをひたすら客観的に見つめて、「蚕の習性を活かした吐糸環境は?」「アリがコロニーを形成しやすい空間は?」と、結果をもたらす原因を考え、次なる結果に向けて行動を変える。結果をありのままに受け入れて自らの行動を変えるこの実験を繰り返すことで、人と蚕とアリの関係性は次第に強まり、このコネクションが周囲の変動に柔軟に対応する大きなエネルギーとなる。
「biocouture」は、人間だけでは解決できない環境問題や予測不可能な事態への解決のヒントを蚕やアリの行動から探り、環境負荷のない衣服を生成することができる。また、この実験で、人間以外の生物の行動を受け入れることが訓練され、社会においても先入観なくものごとを見て、コミュニティの中で生まれる多様な価値観を受け入れ、より柔軟に暮らしていくことができる。相手に一歩譲り、相手の立場に寄り添うことが自分にも全体にも優しい結果を生み出す。
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biocouture
現在までに3体の実験作品を製作。
蚕の平面吐糸によるマテリアル製作
蚕は通常、幼虫から成虫に変態する蛹(さなぎ)の時期を繭(まゆ)の中で過ごす。3D状の繭を作れない2D状の環境を人が構築すると平面に吐糸する。蚕の平面吐糸の特徴を活かすための環境デザインの実験を試みている。
・吐糸の足場となる図形を円、六角形、正方形、三角形に設計
→図形の頂点の角度が小さくなるほど、頂点部の吐糸が減少する傾向にあり、円形が最もきれいに吐糸した素材となった。
・吐糸の足場を、V、Y、Tに設計
→足場以外の空間部にも吐糸し、三角形状の不織布が生成された。さらに、空間部に吐糸する際、まず梁となる繊維を吐糸し、その後、その間を埋めるネットワーク状繊維を吐糸し、太い繊維と細い繊維が混在する素材となった。
実験データから、吐糸パターンにあるアルゴリズム、不織布を生成する上で蚕が行う予測をもとにトポロジー最適化を解析する予定である。
クロトゲアリによる蚕の不織布の縫製
クロトゲアリは通常、樹上で葉や草を折り曲げて営巣する。折り曲げた草や葉を繋ぎとめる際に、自分たちの幼虫が出すシルクを使用する。成虫のクロトゲアリは幼虫を口にくわえて、幼虫の出す糸で葉同士を接着する。この営巣技術で、葉や草の代わりに蚕が作った不織布のパーツを繋ぐために、人体の1/4サイズの骨格標本上に、モデルとなるコスチュームを蚕の不織布のパーツでデザインし、そのモデルにアリを移巣し、素材を縫製してもらう実験を実施している。
1体目:蚕の不織布を簡易的に腰、頭部にデザインし、営巣素材として、蚕の不織布の破片や草を周囲に設置した。蚕の不織布が覆う首回り、頭部、骨盤に草や不織布の破片を運び営巣したが、骨格の内側の空間にコロニーができ、表面の不織布を縫い合わせなかった。予測と反し、肋骨内の大きな空間ではなく首回りの小さな空間にパンクなデザインが施されたコスチュームとなった。
2体目:蚕の不織布を標本の全体にデザインし、営巣素材として不織布の破片のみを設置した。モデルのデザインがすでにコスチュームとして完成されており、アリが縫製する空間がないため、宙に浮く標本の足と地面の空間に営巣した。人が構築したデザインを中心にするより、アリが縫製する空間を構築し、アリにデザインをゆだねる課題が見つかった人寄りのデザインのコスチュームとなった。。
3体目:蚕の不織布をレイヤーにして立体空間を作りながら、部分的(上半身)にデザインした。不織布と不織布の間の空間に営巣している様子が観察され
上手く不織布の空間でアリが縫製のデザインをしてくれそうではあるが、現在進行中の実験であるため、引き続き経過を観察する。
今後は、アリ同士のコミュニケーションや集団探索のアルゴリズムやアリの幼虫の吐糸のメカニズムを分析し、縫製個所に誘導する手法を探索するとともに、アリの個体数を増やし、人体サイズの縫製環境をデザインする。
メイン写真:3体目のモデルデザインの写真
サブ写真:蚕が生成した不織布の写真
アリが営巣、縫製する写真
人が蚕の吐糸環境、アリの縫製環境をデザインする写真
蚕の平面吐糸によるマテリアル製作
蚕は通常、幼虫から成虫に変態する蛹(さなぎ)の時期を繭(まゆ)の中で過ごす。3D状の繭を作れない2D状の環境を人が構築すると平面に吐糸する。蚕の平面吐糸の特徴を活かすための環境デザインの実験を試みている。
・吐糸の足場となる図形を円、六角形、正方形、三角形に設計
→図形の頂点の角度が小さくなるほど、頂点部の吐糸が減少する傾向にあり、円形が最もきれいに吐糸した素材となった。
・吐糸の足場を、V、Y、Tに設計
→足場以外の空間部にも吐糸し、三角形状の不織布が生成された。さらに、空間部に吐糸する際、まず梁となる繊維を吐糸し、その後、その間を埋めるネットワーク状繊維を吐糸し、太い繊維と細い繊維が混在する素材となった。
実験データから、吐糸パターンにあるアルゴリズム、不織布を生成する上で蚕が行う予測をもとにトポロジー最適化を解析する予定である。
クロトゲアリによる蚕の不織布の縫製
クロトゲアリは通常、樹上で葉や草を折り曲げて営巣する。折り曲げた草や葉を繋ぎとめる際に、自分たちの幼虫が出すシルクを使用する。成虫のクロトゲアリは幼虫を口にくわえて、幼虫の出す糸で葉同士を接着する。この営巣技術で、葉や草の代わりに蚕が作った不織布のパーツを繋ぐために、人体の1/4サイズの骨格標本上に、モデルとなるコスチュームを蚕の不織布のパーツでデザインし、そのモデルにアリを移巣し、素材を縫製してもらう実験を実施している。
1体目:蚕の不織布を簡易的に腰、頭部にデザインし、営巣素材として、蚕の不織布の破片や草を周囲に設置した。蚕の不織布が覆う首回り、頭部、骨盤に草や不織布の破片を運び営巣したが、骨格の内側の空間にコロニーができ、表面の不織布を縫い合わせなかった。予測と反し、肋骨内の大きな空間ではなく首回りの小さな空間にパンクなデザインが施されたコスチュームとなった。
2体目:蚕の不織布を標本の全体にデザインし、営巣素材として不織布の破片のみを設置した。モデルのデザインがすでにコスチュームとして完成されており、アリが縫製する空間がないため、宙に浮く標本の足と地面の空間に営巣した。人が構築したデザインを中心にするより、アリが縫製する空間を構築し、アリにデザインをゆだねる課題が見つかった人寄りのデザインのコスチュームとなった。。
3体目:蚕の不織布をレイヤーにして立体空間を作りながら、部分的(上半身)にデザインした。不織布と不織布の間の空間に営巣している様子が観察され
上手く不織布の空間でアリが縫製のデザインをしてくれそうではあるが、現在進行中の実験であるため、引き続き経過を観察する。
今後は、アリ同士のコミュニケーションや集団探索のアルゴリズムやアリの幼虫の吐糸のメカニズムを分析し、縫製個所に誘導する手法を探索するとともに、アリの個体数を増やし、人体サイズの縫製環境をデザインする。
メイン写真:3体目のモデルデザインの写真
サブ写真:蚕が生成した不織布の写真
アリが営巣、縫製する写真
人が蚕の吐糸環境、アリの縫製環境をデザインする写真