Sylvan Migration

Sylvan Migration　-森の大移動-
森を音ごと動かすことができないか？

「森」は、視覚的なイメージだけでなく、鳥のさえずり、風のそよぎ、葉ずれの音など、そこに存在する様々な音響要素の総体としても捉えることができる。「森」という存在の音響要素に注目した時、森は何によって構成されており、その森は如何にして音として移動することが可能だろうか。本作品は、音響生成AIモデルを用いて「森」の音響的側面を再創造し、それを都市空間に集約することで、「森」を音響体験として捉え直し、その多様な側面を再考することを試みる。

サウンドインスタレーション「Sylvan Migration」は、神奈川県川崎市の複数の森林で採取された長時間にわたるフィールドレコーディングの音響データを基に学習されたAI音響生成モデルを、会場内の8つのスピーカーにそれぞれに割り当てる。各スピーカーは、まるで「森の精霊」を宿しているかのように、自律的に音響を生成し、都市の環境音と融合することで、動的で複雑な音響空間を生み出す。
鑑賞者は、会場内を自由に移動することで、各スピーカーから生成される異なる森の音響環境を体験し、それらの重なりや変化を感じ取ることができる。また、それはあたかも複数の森が会場に集結しつつも、一つの大きな「森」を形成する過程を体感するかのようである。

本作品は、音響生成AIモデルを用いることで、会場で環境音の再配置するような「森」の音響的再現を超え、音や音響生成モデルとして森林自体を都市空間に「移動」させる取り組みである。これにより、都市における人間と「森」との新たな関係性を模索した。