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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
対象とするのは、人口減少や自動車利用の変化によって今後余剰化する、東京圏の独立型・自走式立体駐車場である。とくに郊外商業地、駅周辺、大規模集合住宅地などに反復して建設された、外気と雨が入り、柱・梁・床が露出した開放型の鉄骨造・鉄筋コンクリート造を想定する。ランプ、水平床、スキップフロア、螺旋動線、屋上駐車面を備え、自動車に最適化された近代都市の典型である一方、高低差、斜面、吹抜け、日向と日陰、雨水経路を内包する潜在的な人工地形でもある。特定の事業主や一敷地に限定せず、自治体、鉄道事業者、商業施設運営者などが所有する、各地に分散した反復可能な類型全体を対象とする。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
立体駐車場は、人口増加、自動車交通、郊外商業の拡大を前提に大量生産された。しかし人口減少、交通行動の変化、商業施設の再編によって、今後は利用密度の低下や部分閉鎖が進むと考えられる。建物が余っても、そこに投入された土地、構造、資材、炭素は残り続ける一方、すべてを住宅や商業などの新たな人間用途で埋め直す需要はない。都市は外側から均等に縮小するのではなく、既成市街地の内部に低利用空間が散発するスポンジ状の環境へ変化していく。
同時に、これからの都市インフラには、人間の移動や消費だけでなく、生物多様性、水循環、温度調整、生息環境の形成を担う役割が求められる。しかし現在の都市緑化は、公園、芝生、街路樹、屋上緑化など平面的で均質な環境に偏り、急斜面、岩棚、亀裂、高低差、乾湿差、日向と日陰といった地形的多様性が乏しい。立体駐車場は、ランプ、段差、スラブ端部、吹抜け、屋上、排水設備を既に備え、わずかな改変で「崖性」を持つ立体的生息基盤へ転換できる。通常の用途転換が建物の中へ新たな人間活動を入れるのに対し、本提案は構造そのものを環境へ変える。余剰インフラを単に解体するのではなく、既に消費された土地と資源を保持したまま、生態的機能を生産する対象として適している。自動車のために反復された空間を、異なる生物の身体と環境条件から読み替えられる点にも、この類型を扱う意味がある。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
都市で暮らすヤギの運動不足を解消する「Gym for Urban Goats」として、余剰化する立体駐車場を人工的な崖へ変異させる。ヤギに必要なのは単なる飼育面積ではなく、登る、跳ぶ、見渡す、隠れる、休む、採食する、群れの中で距離を調整する、複数の経路を選ぶといった、本来の行動を可能にする地形である。本提案は、都市ヤギのウェルネスという小さく具体的な要求を入口に、平面的な緑化では捉えきれなかった、斜面、岩棚、亀裂、高低差、乾湿差、日向と日陰からなる都市生態系の「崖性」を提示する。
第一段階では、既存のランプを斜面、駐車床を岩棚、車止めを段差、縁石を細い尾根、階段を急勾配、踊り場を休息棚、屋上を見張り台として読み替える。柵、水場、枝葉、ミネラルブロック、乾いた休息床、日陰、管理動線を最小限追加し、駐車機能を一部残したままヤギの運動環境を成立させる。フラット式、スキップ式、連続傾床式、螺旋式という立体駐車場の型ごとに、既存の床や動線を異なる運動地形として活用する。
第二段階では、スラブを切る、傾ける、穿つ、部分的に除去することで、急斜面、亀裂、吹抜け、隠れ場所、複数の回遊経路をつくる。解体したコンクリートは場外へ搬出せず、ガレ場、足場、土留め、土壌ポケットとして再配置する。排水溝や雨樋は浅い水場や湿潤帯へ導き、日向と日陰、乾燥と湿潤、開放部と閉鎖部が隣接する不均質な環境を形成する。新しい材料を大量に持ち込むのではなく、建物自身を採石場として使う。
ヤギはこの人工地形を使うだけでなく、植物を食べ、床を踏み、柱に身体をこすり、種子や糞尿を運ぶことで環境に差異を生む。採食される場所、踏まれる場所、届かない割れ目、糞が集まる休息場所の違いが、植生の高さや密度にむらをつくり、昆虫、鳥、微生物、自然発生する植物にも利用可能な生息条件へつながる。採食区と保護区を分け、放牧密度や季節を管理しながら、ヤギのウェルネスと生態的遷移を両立させる。
実装は、空き区画への小規模導入、駐車との共存、全面的な人工地形化の三段階で進める。ヤギのためのジムをつくることから始まり、余剰インフラを多種の身体と生態的プロセスが利用できる公共基盤へ変える。これは都市全体の生態化を一度に完成させる計画ではない。都市に不足する一つの環境条件=「崖性」を、既存構造の読み替えと小さな改変から実装する提案である。
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Gym for Goats
都市で暮らすヤギの運動不足を解消する「Gym for Urban Goats」として、余剰化する立体駐車場を人工的な崖へ変異させる。ヤギに必要なのは単なる飼育面積ではなく、登る、跳ぶ、見渡す、隠れる、休む、採食する、群れの中で距離を調整する、複数の経路を選ぶといった、本来の行動を可能にする地形である。本提案は、都市ヤギのウェルネスという小さく具体的な要求を入口に、平面的な緑化では捉えきれなかった、斜面、岩棚、亀裂、高低差、乾湿差、日向と日陰からなる都市生態系の「崖性」を提示する。
立体駐車場は、自動車社会の需要に応じて都市に大量生産された。しかし新設件数はすでに大きく減少し、多くの施設が更新期を迎えつつある。人口減少と財政的制約のなかで、老朽化した構造物のすべてを建て替え、新たな人間用途で埋め直すことは難しい。今後の都市には、役割を失いながらも解体されず、内部に残り続ける構築物が増えていく。
従来、使われなくなった建築の段差、傾斜、亀裂、暗がり、瓦礫、雨水の滞留は、人間にとって危険や欠陥として除去されてきた。しかしヤギや他の生物から見れば、それらは登る、跳ぶ、隠れる、休む、採食する、営巣するといった行動を可能にする環境の多様性である。
本提案は、立体駐車場を完全に修復することも、無管理の廃墟として放置することもしない。倒壊や落下などの重大な危険を取り除き、人間の立入範囲を限定しながら、傾斜、段差、粗い表面、亀裂、陰影、湿潤といった不均質さを意図的に残す。人間には「少し危険」で使いにくい構造を、ヤギや生物にとって豊かな人工地形へ変える、管理された放棄である。
都市のスポンジ化によって生まれる空隙を、再び人間用途だけで埋め戻す必要はない。その一部を、多種の身体と生態的プロセスが占有する場所へ譲り渡す。Gym for Urban Goats は、余剰インフラを都市の環境多様性という財産へ読み替える、小さく具体的な一例である。
立体駐車場は、自動車社会の需要に応じて都市に大量生産された。しかし新設件数はすでに大きく減少し、多くの施設が更新期を迎えつつある。人口減少と財政的制約のなかで、老朽化した構造物のすべてを建て替え、新たな人間用途で埋め直すことは難しい。今後の都市には、役割を失いながらも解体されず、内部に残り続ける構築物が増えていく。
従来、使われなくなった建築の段差、傾斜、亀裂、暗がり、瓦礫、雨水の滞留は、人間にとって危険や欠陥として除去されてきた。しかしヤギや他の生物から見れば、それらは登る、跳ぶ、隠れる、休む、採食する、営巣するといった行動を可能にする環境の多様性である。
本提案は、立体駐車場を完全に修復することも、無管理の廃墟として放置することもしない。倒壊や落下などの重大な危険を取り除き、人間の立入範囲を限定しながら、傾斜、段差、粗い表面、亀裂、陰影、湿潤といった不均質さを意図的に残す。人間には「少し危険」で使いにくい構造を、ヤギや生物にとって豊かな人工地形へ変える、管理された放棄である。
都市のスポンジ化によって生まれる空隙を、再び人間用途だけで埋め戻す必要はない。その一部を、多種の身体と生態的プロセスが占有する場所へ譲り渡す。Gym for Urban Goats は、余剰インフラを都市の環境多様性という財産へ読み替える、小さく具体的な一例である。
