ひとりでに止処なく所構わず循環を繰り返す海。万物の母たる海は唯一であり、そして創造と抱擁の象徴である。
海風と白浪の飛沫はそうした幻想を背に、ゆっくりと自転車を錆び付かせ、船を海底に引きずり下ろし、やがて街をも呑み込む現実を具している。かつて人間と海はひとつであり、そして相互に孤独となった。万物の無慈悲な有限性を語る海の逆説的メタファー、海とわたしたちとの感覚的関係・実存的孤立を、ここに空間作品として表現する。
スクリーンに映し出された対面する2面の海景映像、そのあいだに錆び付いた自転車が横たわる。センサー・モジュールによって、鑑賞者の介入が風や音、動きを生み、ときに乱れる。空間をさまようことで自己の存在と海との関係性をたしかめながら、母なる海も自転車も人間も絶対的な対象として独立しているのだと、さまざまに思考させることを作品の目的としたい。
※写真は過去の作品より
Awards
WED, AUG 15, 2018 Updated
『Dead line Absent』(本作のベース)
『Dead line Absent』
『Dead line Absent』
『Portrait (1974)』より (本作の映像ベース)