WOOD CHANGE AWARD 授賞作品決定!
国産材にクリエイティブをかけあわせ、「もしかしてこんなに変わるかも(Would Change)」という自由奔放なアイデアを国内外から募集したWOOD CHANGE AWARDは、合計103件の作品のご応募を頂きました。沢山のご応募ありがとうございました。
GOLD、SILVER、BRONZEの3つの賞の他に、ピックアップ賞として#MATERIALITY賞、#ACTIVITY賞、#STORYTELLING賞の計6つの賞を用意し、厳正なる審査のもと以下6点の授賞作品を決定しました。 是非ご覧ください。
GOLD
【作品名】
もりのがっこう(仮)
【作品説明】
森林・林業現場への興味関心を高めることを目的に 『こんな森があったらいいよね』を共有・実現する場として、現役の木こりがひらく「もりのがっこう(仮)」を創立するアイデア。環境保全型林業の現場として稼働している札幌市内山林から、北海道各地へ展開することを想定。
【応募者プロフィール】
足立成亮、陣内雄、神輝哉、 金内智美、木野哲也、 SHIN sasaki、野中穂
木こり、NPO法人理事、福祉事業・観光、北欧雑貨店主、文化芸術事業プロデューサー 、デザイナー、カメラマンで構成
【審査員コメント】
若杉浩一(武蔵野美術大学 造形構想学部 クリエイティブイノベーション学科 教授)
「山にある様々な魅力・資産をどのように社会へ戻していくのか」という活動を、木こりをやりながら実践している。利益を生む産業、山でのアクティビティ、そこから派生する学びを通じて新しい価値が生まれる。価値を生み出すイノベーターとして山に関わる人々が増えることで新しいサービスや製品が生まれると、人はまた山に戻るのではないか?と、この活動を通じて感じることができた。素晴らしい。
SILVER
【作品名】
Hygrosensitive Shape-Shifting Facade
【作品説明】
木材の吸湿性を利用して、相対湿度の変化に応じて、晴天時には閉じ、雨天時には開く、気象に敏感な、可動ファサードシステム。実際に実験や、試作でのテストも実施した上で提案している。
【応募者プロフィール】
Zhenfang Chen
研究者。テクノロジーとデザインを組み合わせた学際的な研究に興味を持つ。インタラクティブなデジタルメディアを好み、自分の作品を通して、人々に好奇心と不思議さをインストールしたいと考えている。
【審査員コメント】
秋吉浩気(建築家 /メタアーキテクト/ VUILD株式会社代表取締役CEO)
含水率を下げ「狂い」が生まれないようにするのが木材業界の常識であるが、この作品では木材の湿度変化を許容し、むしろポジティブにコントロールすることで生まれるデザインに挑んでいる。シミュレーションやプロトタイピングによる緻密な研究を踏まえた上で、最終的に「空間の湿度に応じて開閉するファサード」という詩的なアウトプットを導きだしているのが素晴らしい。当然、スギ・ヒノキなどの国産材にも応用可能である。
BRONZE
【作品名】
戻り苗
【作品説明】
林業で使用されるスギ、ヒノキ、ウバメガシの苗を家庭で育て、山に植えてもらい、同じ山で育った木が製品となって、手元に戻ってくるというサービス。 木材製品への愛着と、日本の森林に対する関心を高め、 林業界の課題の一つである日本木材の国内消費増加につなげる考え。
【応募者プロフィール】
奥川季花
高校時代に紀伊半島大水害で被災。土砂災害による人的被害をなくしたいと考え、災害が起こらない山づくりをするためソマノベースを立ち上げる。
企画立案・デザイナー:西来路
ソマノベースのビジョンに共感し創業メンバーとして参加。音楽、ファッション関係のグラフィックデザイナーとして活動。
協力企業:株式会社中川
植林を専門とする和歌山県田辺市の林業事業体。 植栽現場と、植林ツアーにおける安全管理と技術を提供。
樹木医:大谷栄徳
発芽率の高い種子の選別、育苗の技術サポート。
【審査員コメント】
佐藤ねじ(アートディレクター/プランナー)
苗を育てるときに、林業に携わる人だけでは足りないため、一般の人にも広げて力を借りる、という未来的な発想を林業に持ち込んだとても良いアイデア。
家で苗を育てるという家庭菜園的体験としても、自分が育てる行為そのものがまた森に還るという2年をデザインしていることも面白い。このサービスはゴールド、シルバーの作品とは異なり、ビジネスモデルとしての視点を見出している点も評価に値する。
#MATERIALITY賞
【作品名】
木雲
【作品説明】
木材は我々にとって最も身近な素材の一つで、温かいぬくもりを感じさせてくれる。しかし実際に利用するためには技術が必要であり、方法も知られていないことが多い。よって本提案ではどこにでもある杉材と植物由来の生分解性プラスチックを用い、またデジタルファブリケーションツールのみで素材を加工し、どこでも誰でも生産し、建築の組み立てが行えるシステムを提案する。そのために短小少部材でも大きな空間を覆うことの出来るレシプロカル構造に注目しそのための部材と接合部を設計し、提案する。
これによって建築そのものの敷居を下げ、誰もが建築をその手で作る喜びを得られるようになることを目指した。
【応募者プロフィール】
齋藤拓海
1995年北海道小樽市生まれ。 2018年山口大学工学部感性デザイン工学科卒業。 同年九州大学大学院人間環境学府空間システム専攻 入学。 2018年〜2019年パリ・ラ・ヴィレット建築大学留学。 2021年九州大学大学院人間環境学府空間システム専攻修了予定。 アルゴリズミックデザイン、デジタルファブリケーションを用いた建築架構の可能性を探り、活動中。
【審査員コメント】
秋吉浩気(建築家 /メタアーキテクト/ VUILD株式会社代表取締役CEO)
この作品の魅力は生分解性プラスチックで3Dブリントされたジョイントにある。複雑な加工をしようと思えば目切れし易い無垢材と、斜め加工の困難な3軸CNC加工機という「制約」に対し、いかなる角度にも追随するボールジョイントのような「関節」を考案することで、このような複雑な自由形状の実現を簡素化している。部分のモックアップやCGだけではなく、1/1スケールですべて作り施工性を検証している点も評価に値する。
#ACTIVITY賞
【作品名】
ICE TREEM
【作品説明】
棒付きアイスを食べたあと、木の棒をシガシガチューチューした覚えはありませんか?もしかしたらその時のあなたは、木の香り、木との触れ合い、癒しに満たされていたのかもしれません。木の香りはアロマにも使われるように人を癒し、燻製に使われるようにおいしいいものだということを、あなたももうご存知ではないでしょうか。そんな愛しき木の香りと味を堪能するため考えたのがこのアイデア「ICE TREEM(アイスクリーム+ツリー=アイスツリーム)」です。これは棒付きアイス、いや、アイス付きの棒。棒を主役として味わうアイスキャンディーです。棒部分の原材料となる木はたくさんの種類に展開され、木の香りの違いが味のバリエーションとなります。アイス部分はそれぞれの木を育てた、土地土地の天然水からできています。木を食材にチェンジし、アイスを媒体とし、木と人の新たなコミュニケーションの形を提案いたします。
【応募者プロフィール】
田嶋千寛
金沢美術工芸大学視覚デザイン専攻2年田嶋千寛です。
【審査員コメント】
永山祐子(建築家 ・ WOOD CHANGE CHALLENGE 審査員長)
共感度が高く、誰しもが身近に経験したことのある体験がベースにあるので背景を想像しやすい。味覚に注目し、日常的な行為の中に木への眼差しを変えるアイデアを紛れ込ませている。更に、アイスと樹種の新しい組み合わせや、それを体験するワークショップなど想像が膨らむ提案になっていた。プロ目線だけではなく、一般的に広くエンドユーザーにも使われ方が想起出来るアイデアであった。
#STORYTELLING賞
【作品名】
触れると思わず前に進みたくなる、音を奏でる木の手すり
【作品説明】
私たちは、国産材の広葉樹の色や質感を活かした、触れると音を奏でる木の手すりをパブリックスペースに提案したいと考えています。木を使う理由は、木目の美しさ、触れた時の温かさ、柔らかさ、親近感であり、細かい傷の修復のしやすさ、耐久性、音や電気との相性など、機能性としても優れていることからです。
このアイデアは、以前、盲導犬と盲導犬ユーザーの方が街を歩いている時の感覚や楽しさを多くの方に知ってもらうために、誰もが体験できる「ひと続きの道」をテーマにしたアート作品を制作したことが発端になっています。体験者が様々な形の木のオブジェに触れながら歩くことで、手触りや形、音がグラデーションに変化し、まるで音楽が変容するように新しい感覚を生みます。触れて歩きながら自身のリズムを楽しむことはもちろん、パブリックスペースにおける人々の新しいコミュニケーションの誘発を喚起するきっかけになればと考えています。
【応募者プロフィール】
MATHRAX 〔久世祥三+坂本茉里子〕
電気、光、音、香り、木や石などの自然物を用いたオブジェやインスタレーションの制作を行う、久世祥三と坂本茉里子によるアートユニット。ふれるとオルゴールのような音を奏でる動物の木彫や、水面に映る光を題材にしたLED照明などを発表。デジタルデータと人間の知覚との間に生まれる現象に注目し、人が他者と新たなコミュニケーションを創り出していくしくみを取り入れた作品づくりを行う。
【審査員コメント】
佐藤ねじ(アートディレクター/プランナー)
音を奏でる手すりというアイデアでクオリティ・完成度・デザインといった広い面で評価できる。
音も含めてデザイン性が高いアイデア。今回の応募作品の中で、最も実際に触ってみたくなるアイデアであった。展示空間での展示だけで終わらず、実際の施設やリアルな空間に応用されれば、需要が拡がり非常に面白いのではないか。
総評コメント
永山祐子(建築家 ・ WOOD CHANGE CHALLENGE 審査員長)
第一回目の「WOOD CHANGE AWARD」。初めての賞ということで指標がない中で審査がスタートした。この賞が他の賞と違うところはCHANGE(変換・転換・更新・拡張)という言葉が入っていることだ。100を超える点数の応募にこの賞の関心の高さを感じた。1点1点見ながら何がCHANGEなのかを探っていった。よくこんなにバラエティに富んだ提案が集まったものだと感心した。生き方そのものと直結するような骨太な取り組み。思わずクスッと微笑んでしまうようなアイデア。今すぐ使ってみたいと思わせる仕組み。心を打つストーリー。木を中心に様々な物語が繰り広げられていた。これほどまでに広がりのある素材は他にないだろう。改めて審査をしていく中で木の持っている可能性、パワーを感じた。多種多様な作品の中から賞を決めるのは難儀に思えたが、審査員の熱いディスカッションの中から最終的に賞に決定したアイデアを並べてみると納得。どこかにCHANGEを感じる作品だ。今後の発展が楽しみだ。
WOOD CHANGE AWARD / CAMP作品の展示会を実施します!
代官山 蔦屋書店にて、建築デザイン担当のコンシェルジュがアレンジしたディスプレイでアワード授賞作品、キャンプ参加3チームの作品の展示を実施します。木に関する書籍や国産材を使った雑貨の展示販売なども行います。
※一部作品はタブレット端末/パネルで展示
期間:2021年3月5日(金)〜 3月18日(木)
会場:代官山 蔦屋書店