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鳩の瞳

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「鳩の瞳」の訳詩手書き文字とイラスト


poem「鳩の瞳」

鳩が一羽
わたしの前を
ゆっくりと歩いていく
口に一本小枝を咥えて
しばらく立ち止まって
辺りを見回して
また歩き出す
一本の小枝
それは今から
巣を作るための
大切な一本
丁度良い小枝は
この時期いくらでもあるだろう
もし、わたしが
家を作るとしたら
もっとあわただしく
走り回って
たくさんの小枝を
一度に集めようと
しているに違いない
空の雲に笑われながら
風にからかわれながら
けれど鳩は
いそがない
いそがなくても
すべては何かが整えて
丁度良くおさまることを
知っているから
ゆっくりと
行き当たりばったりのように
目に留まった
一本の小枝を
大切にゆっくりと運ぶのだろう
家だって作るって
どうやって決めたの
卵を産んでくれる雌は
本当に待っていてくれるの
卵は本当に生まれるの
春が来たからただ巣を作るの
そうではないことが
その目を見ればわかる
何も無いところに
確信をもって
巣を作り始める鳩
その瞳は
ゆるぎなく澄み渡っている
そこには
神の約束が仕舞われている

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