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SOTOROJI #1

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本作は、俗世の塵を払い茶の湯の精神世界へと没入するための空間である「外露地(そとろじ)」を再解釈し、社会やそれを支えるテクノロジーに対するわたしたちの凝り固まった認識を解体しうることを示す。

茶室へと続く庭である「外露地」はいわゆる道としての路地とは異なる。そこは俗世の塵を払い、高次元の精神の遊びとも言われる茶の湯の世界に入り込むための禅の精神性がインストールされた空間装置の一つである。茶の湯は、茶を喫する行為と空間を通して、俗世界から離脱し精神世界へ没入する儀式とも言える。

現代における茶の湯のあり方を探求するアート集団「The TEA-ROOM」は、茶の湯の世界を構成する精神性やオブジェクトもしくはプロセスなどを現代に存在するもので見立て、表現している。本作ではこの外露地をテーマとし、現代の実空間と情報空間が複雑に入り混じった世界において再構成を試みた。

遠目には9.7m x 2.7mの巨大なパネルに庭園の露地口を描いたかに見える本作。しかし近づくにつれ、それが10万個に及ぶQRコードによって構成されていることがわかる。目の前に提示された巨大さと膨大さは人間の認知限界を振りほどき、鑑賞者を想像の世界へと誘う呼び水として機能する。

俗世の象徴ともいえる資本主義。それに占有されたインターネット空間へと人々を誘う技術の一つとしてQRコードは位置付けうる。しかし本作はそんなQRコードの社会的な意味を転回させる。それぞれのQRコードを読み取ると、それは非ー資本主義的な活動を行う各種団体——フードロス削減、相互扶助ネットワーク支援、募金——へとランダムにリダイレクトされる。鑑賞者はこの瞬間、忙しない日常の中で忘れられていた世界の異なる側面を思い出す。そしてそれは同時に、暗黙化していた日常を忘れることでもある。

こうした一連の体験を通じて、凝り固まった私たちの社会や技術に対する認知は解放されてゆく。硬直化した現在の社会を変化させるには、それが「変えうるものである」という認識を人々が共有する必要がある。俗世界からの離脱とは、わたしたちの認識する現実が唯一絶対のものではないことを自覚することに他ならないだろう。そしてこれは、クローズアップとロングショットで異なる図像を認知させる錯視画としての本作の構成とも共鳴している。部分と全体の間の断絶、それを飛び越えるのは人間の認知能力にのみ許された創造行為である。

このように本作は、資本主義空間の縁に追いやられた大切な何かがあることを思い出すことで、一つ俗世の事物を忘れることを誘発する儀式であり、世界をSOTOROJI化する分散型の拠点でもある。

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