【斜めの視線で生まれる新たなコト】
移動絵本書店のために、山型の什器を連ねることで生まれる斜辺を持った書棚を計画した。
複数の斜辺は、連なった部分は棚差し、単独の部分は面出しの陳列を基本としている。そのどちらも本との関りが斜めの視線となる。子どもでも大人でも斜めの視線で本を探し、しゃがみ、書棚に手をかけて絵本を手に取る。この共通した行動により従来のような縦に積まれた書棚によって生まれる身長による視認性の優劣がなくなり、大人に頼まずとも子どもひとりで絵本を手に取ることが可能となる。
また棚差し部分の背表紙を交互に配置していくことで、書棚では切り離すことが難しい裏と表の状態を消失させることができる。それにより書棚を介したコミュニケーションが可能となり、絵本との関りをさらに発展していくことができると考えている。
車への積み込みも配慮して全てボルトで固定されており、大人一人で簡単に解体組立が可能となっている。
移動書店はその時々、販売する場所も環境も異なる。なるべく多くの子どもたちに本に触れあってもらうためには、大人に頼んで本を取ってもらうというアクションをなくすことが重要であると考えた。子どもが見て、気になって、手に取って、読んで、仕舞う。この一連の動作が子どもにとっての感覚や感情に任せたものでなければ、絵本との出会いが減ってしまうように思えた。そのためには手に取れる範囲に絵本を配置し、なるべく多くの子どもが本棚と対峙できる状況をつくりたいと考えたのが、この「つらなり」という書棚である。この「つらなり」という書棚によって多くの子どもが様々な絵本と出会い、その絵本を通じて周りにいるたくさんの人たちとつらなってくれることを願っている。
写真 : 植村崇史写真事務所 植村崇史
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SAT, JUL 22, 2023 Updated
正面や背面、側面からも本にアプローチすることができる
山型のスタッキングするのに適した形であり、組み立て、解体、運搬を容易にしている
視線が斜めになることで、身長差による視線の優劣がなくなる
既存の本棚ではありえない本棚を介したコミュニケーション