私はとても鳥が好きである。鳥が好きゆえに、私は、一つの小さな鳥の住宅を自らつくった。鳥の思考に近づいてみたくなったのである。鳥の住まいを考えることは、結果として人間の住まいの根源を考えることになった。その謎を少しひも解いてみることにする。この住宅をつくることは、鳥という小さな動物の暮らしや住まいぶりに触れることで、人(自分)の暮らしや住まいぶりを見つめなおすことができるのである。鳥の思考と人間の思考を行ったり来たりさまようことで、本来の住まいが露わになる。
人類と鳥類は、容姿が全く違うにもかかわらず、共通する部分が数多く存在するという。鳥は、人間と同じように、コミュニケーション能力を備え、豊かな感情を持ち、空間や周囲の環境を体感し、独自の美学を持つと言われている。つまり、鳥は、人間と同じように、独自の快適性を持っているということである。このことから、鳥の快適性
を探ると逆説的に人の快適性にたどり着くのではないかという仮説が成立することとなる。
鳥たちに受入れられるには、環境の変化に敏感にかつ俊敏に対応しなければならないだろうということである。一般的に鳥小屋は鳥の巣づくりを手助けするためのもので、巣づくり以外のときというと使われない。それでは、住まいぶりが分からないので、一年を通して使われ続ける鳥の住宅はできないものか。常に使われ続ける鳥の住宅とは、巣ごもりというプライベート性と鳥たちがコミュニケートしあうパブリック性の両方を兼ね備えた住宅となる。本来の「鳥小屋」という既成概念を打ち砕くべく「鳥の住宅」を考えてみる。鳥の快適性を通して、人の快適性を再考するきっかけを生み出す。
そこで、回転する壁をもつ鳥の住宅を考えることにする。回転する壁は鳥の快適性に俊敏に反応する。閉じるときは閉じる、開くときは開くという自然に対してメリハリのある生活を送ることができる。こうしてできた鳥の住宅は、一年を通して利用され鳥たちにとって落ち着きのある楽しさも兼ね備えたプライベートとパブリックが交錯するハイブリッドな住宅となる。
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MON, JUN 16, 2025 Updated