PROJECT

RED SPACE MUTATIONS #01

絶滅に瀕する空間を「変異」させる提案を募集

結果発表 2026/05/11(月) - 2026/07/26(日)

絶滅危惧空間の第三の選択肢。

RED SPACE MUTATIONS #01
最終審査会レポート

建築コレクティブRED SPACEと株式会社ロフトワークの共催アワード「RED SPACE MUTATIONS #1」の最終審査を行い、建築・ビジネス・制度・アート・研究など多様な領域から集まった141作品の中から、次世代の5つの変異計画が受賞しました。本アワードは「絶滅の危機に瀕する空間を救え。」を掛け声に、都市で役割を終えつつある「絶滅危惧空間」(電話ボックス・ガソリンスタンド・寺社仏閣・地方鉄道など)を新たな空間や役割へと再設計する「MUTATION(変異)」を提案するアワードです。

Photo by Daisuke Murakami

一次審査を経て10組がファイナリストとして選出(8月11日発表)。8月26日の最終審査会でのプレゼンテーション・質疑応答と審査員協議を経て、「Grand MUTATION Prize」(最優秀賞)1点、「MUTATION Prize」(優秀賞)4点、「Collective賞」(特別賞)1点が贈られました。

受賞作品

Grand MUTATION Prize

Gym for Urban Goats

制作者:野村 健太郎


高齢化とインフラの老朽化が進むこれからの30年、都市を今まで通りの密度で維持することは難しくなる。90年代から建てられた立体駐車場の多くもすでに老朽化に直面しており、解体も回収もされないまま残り続けるものが大半になる。この提案は、そうした立体駐車場を都市の「崖性」を活かしたヤギの運動場へと転用するもの。人間だけを都市の唯一のユーザーとするのではなく他種にも開いていくことで、「管理された放棄」という第三の選択肢を提示している。

Photo by Daisuke Murakami
馬場 正尊(建築家/オープン・エー代表取締役/東北芸術工科大学教授)

最初に表紙のヤギを見たときは、正直かなり突飛な案だと思いました。最初はそういうモードで見始めたのですが、プレゼンテーションを聞いていくうちに、その見え方が少しずつ変わっていきました。

特に印象に残ったのが、「管理された放棄」という考え方です。人口が減り、経済も縮小していく中で、人間がつくってきた都市のすべてを、これまで通り管理し続けることは難しくなっていく。人間中心主義のもとで、人間がつくり、人間が使ってきた空間を、人間自身が放棄し始めている。そのとき、そこに人間ではなくヤギを新たな主体として置くことは、人間中心主義そのものへの批評にもなっているのではないかと感じました。

質疑の中で「このヤギは何なのか」という話もありましたが、ヤギの生態的な特徴を活かしながら、同時に、さまざまな価値観や概念を転換する象徴として存在しているようにも見えました。そう考えると、一見ふざけているように見えるこの提案が、実はかなり哲学的で、見る人によってさまざまな解釈や思考を引き出す奥行きのある案だと感じます。

RED SPACE第1回のグランプリとしてこの作品を選ぶことには、審査員側にもある種の勇気が必要でした。それでも、批評性、想像力、そして哲学的な広がりを持つ提案として、あえてこの作品を選びました。

ぜひ、どこかで実験し、実現してほしいです。実際に都市の中にヤギが現れ、その風景を見ることができたとき、このコンペ自体の価値もさらに立ち上がってくるのではないかと思います。

Photo by Daisuke Murakami

MUTATION Prize

Project: EARTH LINEs

制作者:西村 蒼・中西 亮介・伊達 善行・平林 航一・砂川 良太


2050年、自動運転の発展により都心の道路の5%が不要になるという試算をもとに、そのアスファルトを剥がし大地へと還す提案。車道の役割を物流・公共交通・地下交通の3つに集約し直し、アスファルトによって蓋をされていた土地に、近隣から採取した生きた土を戻し、植物を植える。道路の地権は行政から地域の共同組合団体へと委任され、税制優遇や容積率の緩和をインセンティブとする制度設計も含まれている。

Photo by Daisuke Murakami

松井 創(ロフトワーク Chief LAYOUT Officer)

純粋に、この景色を実際に見てみたいと思ったことが、選んだ大きな理由です。

審査では、「店先が本当にこんな状態になってよいのか」「雨が降ったらどうなるのか」「江戸時代に戻るのか」といった議論もありました。ただ私には、それがむしろ「懐かしい未来」を取り戻す感覚に近かった。過去に戻るのではなく、まだ誰も見たことのない風景として立ち上がってくる。地方でも成立するアイデアだと思いますが、あえて東京のような大都市でやりきれば、世界中から注目され、さらに人が訪れるような風景になるかもしれない。

なにより、みんなが当事者となって、自分たちで環境をつくり、そこに関わり続けていくという考え方も、この提案の非常に良いところだと思います。完成した空間を受け取るのではなく、使う人自身が都市をつくっていく。その姿勢が素晴らしい。おめでとうございます。

Photo by Daisuke Murakami


愛と世界とラブホテル

制作者:谷 卓思・塚村 遼也

全国に8,500店舗以上あるラブホテルは、旅館業法の改正のたびにその数を減らし、風営法の壁によって新築もできない建築になっている。渋谷・道玄坂の廃業ラブホテルを対象に、フロントを1階全体に溢れ出させ客室への直通動線を確保するなど、風営法の再解釈によって内と外を隔てていた壁を取り払う。用途変更で融資のハードルを下げ、ラブホテルオーナーとの共同体でエリアマネジメントに投資するビジネスモデルも提示している。

Photo by Daisuke Murakami

松島 倫明(『WIRED』日本版編集長、コンデナスト・ジャパン)

最初に資料を読んだ段階では、この提案の面白さを十分に理解しきれていませんでした。ただ、プレゼンテーションを聞くことで、その奥行きが一気に見えてきました。

今回のテーマは「絶滅危惧空間の変異」ですが、この提案は単にラブホテルをどう残すか、どう転用するかという話にとどまらず、そもそも人間にとって建築や空間は何のためにあるのか、愛や親密さを受け止める場所とは何なのかというところまで踏み込んでいます。

審査では、「本当にラブホテルでなければ成立しないのか」「絶滅危惧空間を救うというテーマにどこまで直接つながるのか」という議論もありました。

それでも最終的には、そうした問いを超えて、ひとつの提案として圧倒的な強度があると感じました。実際にこんな場所があったら行ってみたいと思わせる力も含めて、高く評価しました。

Photo by Daisuke Murakami

3DプリンターBOX 

制作者:岩穴口 颯音・古内 一成(パラレルスペース)

すでに電源が引かれている電話ボックスを、中規模の3Dプリント空間へと転用する提案。約800角の外径に150cmの柱を立て込み、60cm×60cmほどの大きさまで印刷可能な空間を確保。ペットボトルを再利用する粉砕機の併設や、離れて暮らす家族に「もの」そのものを送る新しいコミュニケーションの形も提案している。

Photo by Daisuke Murakami

石川 由佳子(アーバニスト/for Cities共同代表理事)

今回の提案の中では、とてもシンプルなアイデアだったと思います。ただ、そのシンプルさの中に、既存の空間を変異させ、そこから新しい生活のあり方を提案するという、今回のアワードのテーマが非常にシャープに詰まっていました。

公衆電話ボックスは、これまで通信のための場所でした。しかし、街中に透明な小さな箱が点在しているという風景自体を改めて見ると、とても特徴的な都市装置でもあります。

3Dプリンターのような設備は、これまで専門的な知識を持つ人が特定の施設へ行かなければ触れにくいものでした。それが突然、路上の電話ボックスの中に現れる。消費中心のまちの中に、突然創作や生産の風景が現れるという風景はみてみたいと素直に思いました。

「そこで何をつくるのか」は、さらに深められる余地があります。一方で、遠い未来ではなく、近い未来に実験できそうな現実感も含めて評価しました。

Photo by Daisuke Murakami

公衆電話式なぞときゲーム

制作者:毒島 美空
※ RED SPACE Collective賞 同時受賞

公衆電話は非常時の通信手段として維持が求められる一方、日頃その設置場所や使い方に触れる機会はほとんどありません。周遊型謎解きゲームと公衆電話を掛け合わせ、参加者が謎解きブックと公衆電話マップを手に町をめぐり、地域の歴史・文化のお題を頼りに次の電話を目指すという提案です。ゲームを進める過程で公衆電話の設置場所を自然に把握でき、同じマップが防災マップとしても機能します。

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林 千晶(株式会社Q0代表取締役社長)

誰もが街中で見たことがある一方で、いまではほとんど使われていない電話ボックス。防災時など「もしものために必要な設備」として残存しているけれど、その“もしも“がいつ来るかは分からない。10年、20年と使われないまま街の中に立ち続けているだけの存在。 そこに「謎解きゲーム」という全く異なる用途を入れた瞬間、電話ボックスにとても面白い可能性が生まれると感じました。

また、実現性の高さも大きな魅力。NTTのような大企業との連携も考えられますが、普段広告を出す機会の少ない地域の小さなお店やBtoBの企業なども、謎解きを介して、地域の人や企業同士がつながっていく可能性が生まれる。 そうした新しい関係やビジネスが生まれていくことも、この提案の面白さだと思います。

何よりプレゼンテーションを聞いていて、「この人なら本当に実現してくれるだろう」と感じました。 ぜひ実現してほしいです!

Photo by Daisuke Murakami

平栗 圭(RED SPACE 共同発起人)

最後までとても悩みましたが、社会実装を行う最初の取り組みは何かと考えたとき、この提案に大きな可能性を感じました。

電話ボックスやガソリンスタンドのような、インフラとしての側面が強い絶滅危惧空間は、ニーズが減少し、事業性がなくても、既存の用途を簡単に変えることが難しい。こうした空間を変異させるためには、既存の用途を拡張し、段階的に変えていく提案が必要です。この提案は、こうした空間を変異させるための、最初の突破口になりうると感じました。

もしこの提案が実現すれば、次に電話ボックスへ提案するとき、「すでにこういう実装事例がある」という前例になります。一つの小さな実装が次の変異を呼び、それがさらに新しい変異へとつながっていく、そんな提案なのではないかと思い選ばさせていただきました。

RED SPACEとしても、この提案を最初の一歩として、ぜひ一緒に考えながら実装まで進めていけたらと思っています。

受賞後の社会実装へ。
RED SPACE OPEN STUDIES #02 開催

Photo by Daisuke Murakami


RED SPACEでは、本アワードを一度きりの取り組みで終わらせず、集まった変異計画を起点に、新たな実験やコラボレーション、社会実装へとつなげる活動を続けていきます。

その次の取り組みとして、2026年9月21日(月・祝)にSHIBUYA QWSで、応募者向けイベント「RED SPACE Open Studies #02」を開催します。

「RED SPACE Open Studies」は、RED SPACEの考え方に共感する人たちが集まり、絶滅危惧空間の未来について対話し、アイデアを深めていくオフラインイベントシリーズです。

今回は、「RED SPACE MUTATIONS #01」に集まった変異計画を題材に、そこからどのような実験やコラボレーションが生まれ得るのか、実際の空間や社会へどう接続していけるのかを参加者同士で探ります。

開催概要

  • 日時: 2026年9月21日(月・祝) 16:00〜18:00
  • 会場: SHIBUYA QWS クロスパーク
  • 参加費: 無料
  • 参加条件: 「RED SPACE MUTATIONS #01」の応募者
  • 主催: RED SPACE
  • 協力: 株式会社ロフトワーク
  • 申込期限:9月13日(日)迄


▼「RED SPACE OPEN STUDIES #2」参加フォーム

https://forms.gle/AcRyk8YjzD3a...

RED SPACEについて

RED SPACEは竹中遼成と平栗圭が立ち上げた、建築コレクティブです。空間の大量絶滅という課題に対して、空間の仕様、分布、個体数、脅威、保全活動についての情報を提供し、次の社会へ適応した空間に変異させるための提案を収集・実装するプラットフォームを構築しています。

RED SPACEではアワードに限らず、絶滅危惧空間に関するリサーチ/提案、社会実装に向けた取り組みを行なっていきます。

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RED SPACE 連絡先

RED SPACE HP: Web
PR: Instagram
RED SPACE : contact@redspace.tokyo

本アワードに関する連絡先
Mail: redspace@loftwork.com

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