-
どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
対象は、街角に残された公衆電話ボックスである。
携帯電話の普及により、公衆電話の台数はピーク時から大幅に減少し、多くのボックスが撤去されるか、使われないまま街角に残されている。
この提案は特定の一基への提案ではなく、全国の街角に点在する公衆電話ボックスへのプロトタイプとして構想する。既存の筐体をそのまま活用し、通信インフラから製造インフラへと変異させる。情報を送り出した箱が、今度は物を生み出す箱になり、風景に驚きを与える。 -
なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
公衆電話ボックスは、誰でも使えた。契約も、端末も、知識も必要なかった。10円で、誰とでもつながれた。街角に立つ透明な箱は、通信という技術を万人に開いた装置だった。
携帯電話がその役割を引き継いだ今、箱だけが残されている。技術に追い抜かれた空白の箱が、街角に佇んでいる。
3Dプリンターは、家庭用も浸透し始めているが。大型の機材は高く、製造という行為は今も、工場か都市のファブ施設にしか存在しない。
公衆電話ボックスの筐体をそのまま3Dプリンターの筐体として転用する。地域から集まったプラスチックごみをフィラメントとして、椅子ほどの大きさのプロダクトを生み出す。廃棄物が資源になり、街角の空白が製造拠点になる。通信インフラが製造インフラへ。箱の形は変わらない。変わるのは、その中で何が生まれるかだ。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
変異の手法は単純だ。公衆電話ボックスの筐体を、そのまま3Dプリンターの筐体として読み替える。解体しない。建て替えない。透明なガラスと鉄のフレームはそのままに、内部だけを入れ替える。
公衆電話ボックスの内寸は、幅約80cm×幅約80cm×高さ約2.5m。この空間は、椅子ほどの大きさのプロダクトを出力するには十分な容積を持っている。内部にプリントヘッドと可動式のビルドプレートを設置する。
公衆電話ボックスは、もともと丸見えだった。中で誰かが話している様子が、外から見えた。プライバシーがない代わりに、街の中に「人がいる気配」を生んでいた。その透明性がそのまま、製造の透明性になる。ガラス越しに、椅子が少しずつ積層されていく。1時間後、2時間後、少しずつ形になっていく。工場の奥に隠れていた「物が生まれる過程」が、街角に出てくる。通りがかりの人が足を止める。子どもが顔を押しつける。誰かが、明日また見に来る。
素材は、地域から集まったプラスチックごみを使う。ペットボトルや廃プラスチックをフィラメントとして再生し、プリンターに供給する。捨てられるはずだったものが、街角で椅子になる。廃棄物の回収から造形までの回路が、ボックス一基で完結する。
操作はシンプルにする。かつて電話をかけるのに特別な知識が不要だったように、このプリンターも誰でも使えることを前提とする。データを選び、ボタンを押す。あとはガラスの向こうで、機械が作る。
公衆電話ボックスは全国に点在している。一基の転用がプロトタイプとして機能すれば、地方の街角に製造インフラが広がる。都市のファブ施設にしかなかった技術が、10円玉を握りしめてボックスに駆け込んだあの感覚で、誰の手にも届く。
- 30
3DプリンターBOX
電話ボックスを変異させた3Dプリンター
