COMPETITION

Sasebo Sound Chronicle Award

まちの“いま”を音で綴る。「Shoreline 混ざる、響く」をテーマに音楽作品を募集。

結果発表 2025/08/18(月) - 2025/09/21(日)

Sasebo Sound Chronicle Award 結果発表

「Sasebo Sound Chronicle Award」では、審査員に蓮沼執太さん、Kuniyuki Takahashiさんのお二人を迎え、

  • 形式にとらわれず、表現の可能性を追求しているか
  • 感情を伝播させる物語を宿しているか

という審査基準のもと、厳正なる審査を実施いたしました。

9月末に実施された一次審査にて、まず10作品をファイナリストとして選出。続く10月末の最終審査を経て、栄えあるグランプリ作品が決定いたしました。

ファイナリスト作品と、その展示の様子を紹介いたします。

グランプリ作品

No.14 響きのゆくえ Ai Kakihira

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

発泡スチロールやビニール、ダンボールの音、遠くに聴こえる鳥の声。そこに浮かび上がる会話。
日常の中で自然に立ち上がるリズムと声に、私は作為のない音への憧れを抱きました。
彼らの中にうまく溶け込むためには、彼らの生活に寄り添っているであろう海のリズムが必要だと感じ、白浜海岸の波の音でリズムを作り、その上に水面が揺れるようなシンセの音を乗せるところから始めました。
環境音に似た音を作ったり、それに応えるように音を重ねていくうちに、現実と創作の境目が少しずつ溶けていくのを感じました。
しかし、作る以上は切り離せない作為。距離を置くように、完成したものをテープレコーダーで録音し、意図的な作品として映画のように切り取ることにしました。

Engineered, Mixed & Mastered at Soft Bias studio by bisshi

ファイナリスト作品

※ファイナリスト10作品のうち1作品は辞退

No.1 混沌 koji itoyama

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

混ざり合っている街、佐世保。寂れた場所もモダンな場所も、人種も食もミックス。今回の音楽は、その寂れたニュアンスと混沌とした世界観を表現しました。
音素材の中の「造船所の作業音」でかすかに聞こえるパッドのようなサウンドがC#。これだけでも成立しそうな素材でしたが、作品にするということで音を足して佐世保のサウンドトラックへと進化させました。
具体的には、造船所から徐々に視座が引いていき、佐世保の丘の上から町全体を見下すようなイメージの設計に。
ぜひ、自身がドローンになったつもりで浮遊しながら聴いてください。

No.7 sympwavs 里村 司

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

佐世保のことを調べたとき、軍港として開発されはじめ、それを基に生き、発展した街であり、原子爆弾が落とされた長崎県に位置していながら、米軍や海上自衛隊の軍事施設が存在していたりと、戦争の匂いが濃密な街だと感じました。
しかし、佐世保には開発以前にも人は住み続けていたし、今も多くの人が暮らす街として機能し続けています。
両極端な人の営みを破綻させることなく続けるには、それを許容する自然との関わり合いが不可欠です。
今作では、波や風による原初的な音の神秘と、シンセサイザーやピアノ、それらに付随するエフェクトによって積み上げた人工的な音の揺れを結ぶことで、自然と人とが混ざり合う場所を組み立て、そこに包まれるような作品に仕立てました。

No.12 the common chorus il

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

佐世保は、様々な文化との関わりあいの歴史を象徴するような都市の姿がある。こうした固有性を音楽を通じて表現するにあたり、ディレイ・エフェクトによって得られる持続的なフィードバック効果がヒントになった。フィードバック効果によって音が引き延ばされていき、やがて抽象化される過程は、1つの音楽の中に異なる時間軸同士が混在するような感覚を与える。また、抽象化された音はメインのフレーズに対して背景のように機能する。こうしたフィードバック効果によるサウンドスケープを佐世保の歴史的、文化的な奥行きのメタファーとして置き換えることを目指した。

No.13 echoes Toshphic.

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

制作にあたり、佐世保の「地形」について考えた。
佐世保は海と大陸が混ざりあう場所であり、九十九島をはじめとする複雑な海岸線は幻想的である。展海峰から望む無数の島々は、大陸と海が分かれた痕跡を想起させ、悠久の時の流れとともに地球そのものの存在を意識させる。大陸の上に生きているという実感は、計り知れない時間と空間の広がりを体感させてくれる。こうした体験は、まさに佐世保という地形がもたらすものだと感じた。

その幽玄な感覚は街並みにも息づき、時間の尊さを映し出す独自の景観を形づくっている。

本作では、その無数の広がりと、それを見つめる「私」との重なりを音で表現した。

No.23 輪じみの夕凪に 帯化

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

ある宴で立ち上がった演奏と雑談の断片を、AIにより洗い出し、オーバーダブと環境音でつなぎ直した記録。

冒頭の鐘の音は宴の始まりの合図だ。外では夜が深まり、暗い波が岸辺をぬらす。室内は嘘のように明るく、「平和」はテーブルの上に置かれたグラスの輪じみほどの確かさで続く。
しかし酔いから覚めた後の時間の方が長いのだ。骨が風化するまでの時間が、人が人である時間より長いことと似て。

次の朝に何を資産と呼べるのか。残るものとこぼれ落ちるもの、その分かれ目に耳を澄ますビール瓶。
‪ほら、二日酔いで青ざめた顔が、ベランダに向かって立った。モニュメントよりなお黄色く、朝焼けよりなお重い。夕凪の時間までもう少し。

No.40 Resonance ー響き合い 金子淳平

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

本楽曲は、AR技術と参加型システムを用いるサウンド・インスタレーション『Resonance』の作品要素として制作した。「日常」に存在する様々な境界線の響き合いとして解釈した点でawardテーマである「Shoreline」に共鳴する。
 本作では、鯖江でのフィールドレコーディングのみを使用した。「日常」は音を通じて横(関係性)・縦(歴史)に繋がり循環すると捉え、「Shoreline」の流動性を横・縦・循環の三軸で本アワード用に再構成した。
 横の繋がりは「水・響き」で普遍性を、縦は「伝統・職人」の音で時間の堆積を、それらが絶えず循環する様は「鐘」の音でShorelineの持つ永続性を各モチーフを用いて表現した。

No.43 時差のある記憶 -Temporal Memory Layers- melteye

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

—— 時間は均等に流れているわけではない。過去/現在/未来のあわいに、音は記憶として蓄積され続ける。

本作では、異なる時間軸を持つ音たちが「Shoreline」で交差する瞬間を描いている。190度で弾ける油、朝を告げる人々の声、何千年も続く波のリズム。音の境界を溶かしながら重層的に編み直すことで、時差のある記憶を一つの呼吸に同期させた。偶然性と必然性が交わる境界で、バラバラだった音たちは潮の満ち引きのような律動で同期する。

響きは時間を横断し、聴く者の記憶の奥に新しい風景を描き出す。それは、かつてそこに響いていた佐世保の音であり、これから生まれる静かな共鳴であり、時を超えて響く祈りでもある。過去と未来が現在に溶け合う瞬間を表現した作品である。

No.54 Morphodynamics 久保 暖 (1e1)

応募作品URL:https://awrd.com/creatives/det...

佐世保市の海辺を走るリアス式海岸と、そこを取り囲むように点在する島々。幾つもの離島が市の本土を取り囲む地形は、神々しくさえ感じるある種のいびつさを帯び、それらと共生する人々や自然の生態系に美しさを覚えた。

九十九島は海からの波の衝撃を和らげ、島周辺の沖の植生に恩恵をもたらしており、生態系を豊かにしている。
そのため漁が盛んとなった土地だと聞いたことがある。

大地、ひいては星という単位で生じている大きな流動を引き受けて、その上でありようを考え暮らす様は、地質学におけるアントロポセン(Anthropocene)の概念に通じるものを感じた。


長い年月を経て形成されたこの地形と生態系、そこに暮らす人々が適応し、適用してきた生活とインフラ。そこから鳴り響く環境音、そしてその土地に元来根付いていたサウンドスケープ。
それらを佐世保における「音の地質」としてとらえ、潮の干満で流動する島々のような動的な変容を描いた。

佐世保市博物館島瀬美術センターでの作品展示


10月31日(金)から11月30日(日)に渡って開催されている「させぼピース展―海からたどる、時の旅」の一部として、ファイナリスト9作品が展示されています。

本展は、佐世保市博物館島瀬美術センターの5階から1階までのフロア全体を使い、佐世保の海を舞台にした歴史と、現在の平和について考える特別展です。

1階展示室では、現代の佐世保を音で綴る「Sasebo Sound Chronicle Award」ファイナリスト作品が展示され、連日、来場者が足を止め、佐世保の“いま”の音に聞き入っています。

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