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Interview:一日一案に全力を尽くす。アワードはアイデアを早く出すトレーニング/平野 達郎

2018/04/18(水)

インタビュー

思わず手に取りたくなるような、絶妙な色合いと優しい質感を感じさせる表現。洗練されたデザインが印象的な平野 達郎さんは、国内外のアワードで数々の賞を受賞するなど、注目が高まるアートディレクター/グラフィックデザイナー だ。

学生時代はインテリアデザインを専攻していた平野さん、それゆえグラフィックデザイナーへの道は順調なものではなく、専門学校を卒業したての頃はアルバイトをしながらグラフィックデザインを続けていた時期もあったという。

そんな自信が揺らぎがちな時期に訪れた転機が、「Roooots名産品リデザインプロジェクト」への参加だった。

今年活動13年を迎えた彼は、どのような紆余曲折を辿ってきたのだろう?一つ一つ確かめるような優しい口調で語る平野さんから、アワードに参加した動機や創作において大事にしていることについて語ってもらった。

1枚のパネルが変えたグラフィックデザイナーへの道

ー(編集部、以下略)グラフィックデザイナーとしての道をめざすきっかけを教えていただけますか?

(平野 達郎、以下略)僕の場合はちょっと変わっていて、はじめからグラフィックを学んでいたわけではないんです。

高校を卒後後、インテリアデザインの勉強をしようと専門学校に入りました。ちょうど15年くらい前かな?イームズの椅子などのデザイナーズ家具が全盛期だった時期があったんですよね。

それでプロダクトデザインや空間に興味を持ってインテリアの道を目指そうと思いました。


ー珍しい経歴ですね!

学生生活はそつなく送っていましたが、ある時課題で作品のプレゼンテーションのためにパネルを作っていたらなんだかグラフィックの方が楽しくなってしまったんです。

その時は、佐藤可士和さんや植原亮輔さんなどのグラフィックデザイナーが、平面だけではなくプロダクトや空間などのデザインを手がけ始めた時期だったんですよね。

グラフィックからプロダクトの流れがあるなら、逆もあるかなと思ってグラフィックデザインを自分なりに勉強し始めました。

学生生活の3年間が終わる頃には、完全にグラフィックを生業にしようと思っていましたね。

ー グラフィックデザイナーを職業に決めてから、就職活動はどのようにしたのですか?

就職活動はうまくいきませんでした。(笑)
学校ではグラフィックを勉強していたわけではないから未経験者として扱われてしまい、グラフィックデザイナーとしての採用はなかなか決まりませんでした。でもやっぱりグラフィックがやりたくて……。

仕方がないから学生時代からの友人3人と案件を取ってきて仕事を受けたりしました。初めてデザインした作品は知り合いから頼まれたTシャツのデザインだったかな?それだけでは稼げないので、アルバイトもしながら生活していましたね。

現場を打破するためにアワードに参加。前年受賞者の作品をみて応募を決めた。


ー アルバイトをしてもグラフィックデザインをやり続けるという意思の強さが伝わります。アワードはそんな空いている時間を利用して参加し始めたのですか?

自分たちで仕事をスタートさせたものの、鳴かず飛ばずなんですよね。
今の状況を打破するためにはどうしたらいいかと考えた時に、実績をつくらなければと思って、アワードに参加するようになりました。
最初に参加したのは「Roooots名産品リデザインプロジェクト」です。

2009年に参加された松本健⼀さんと⿊柳潤さんの作品を見て、レベルの高いアワードだと感じたんです。「いいな、僕も参加したい」と思い、「Roooots 瀬戸内の名産品リデザインプロジェクト2012」に応募しました。

応募したものの見事落選しました。一年後に改めて「Roooots 瀬戸内の名産品リデザインプロジェクト2013」にチャレンジしたら採用されんです。その時の作品がこのオリーブオイルのパッケージです。

「EXTRA VIRGIN OLIVE OIL」 文字が箱の角をまたぐことによって角を前面に配置したり隣り合う2つの箱をあわせて商品名 を見せたりと、売り場でインパクトのある陳列が出来るように工夫されている。

アワードがきっかけでつながる縁

ー 弊社主催のRooootsがはじめてのアワード参加だっとは嬉しいです。その後、受賞がきっかけで何か変わりましたか?

Rooootsでの作品は、その後ADCやJAGDAに応募して入選しました。そこからメディアへの作品掲載も増えました。

おかげで母校のICS College of Arts から特別講義をしてくださいとい
う依頼がきっかけで、今では学校案内のパンフレットをデザインさせていただいています。

1番大きかったのは、ロフトワークと繋がりができたことかな?(笑)
ロフトワークが企画運営したUSIO DESIGN PROJECTが終わってすぐMORE THAN プロジェクトのお仕事をやらせていただきました。それにUSIOは海外でも賞をいただきました。

アワードで出会った方々とお付き合いができると、それを通じて新たなお仕事に繋がることがあります。

USIO DESIGN PROJECT は沖縄県石垣市主催のもと、株式会 社ロフトワークが企画運営したアワード。軒先きでハーブを取っているおばあちゃんというフ レーズから、家のパッケージを発想した。TOP AWARDS ASIA 受賞作品
MORE THAN プロジェクトは、株式会社ロフトワークが主催した、経済産業省の補助事 業(「平成27年度 TPP対策JAPANブランド等プロデュース支援事業」)

1日でアイデアからモックアップまで。アワードはアイデアを早く出すトレーニング。

ー公募に応募し続ける理由は何ですか?

1番は賞を取るためですけど、作品づくりのトレーニングになるというのは間違いなくあります。仕事をしながら空いた隙間で作品を作るので、時間をかけすぎないというのは決めているんです。

1日時間が空いたとしたら、その1日でアイデア出しをして、その中からイケるかもという1案を決め、モックアップ作成〜撮影までを行い、そのまま応募できるレベルまで仕上げるというのは決めていることです。どんな時でも1日で決めています。
時間をかけていいと思えばいくらでもかけられますが、あえて制約をつくることでアイデアを早く出すトレーニングになるんです。

ーアイデアの具現化はどのようなプロセスで行ってますか?

グラフィックデザイナーの人はスケッチ描いて案を固める感じかもしれませんが、僕の場合は先にモックアップをつくちゃうんですよ。
もともと立体物のデザインをしていたので、パッケージじゃなくても立体から作ることが多いです。

USHIOの場合も、まず家の形にしようと思うじゃないですか。家の形の展開図を組み立てて、屋根がちゃんと閉まらないなー、とか問題がでてくるんですよ。そういうところを修正しながら具現化していきます。

大体1回目はうまく立体にならないですね。そのあと、PCに戻ってイラストレーターで展開図􀀀を作り、プリントしてカッターで切ってまた組み立ててを繰り返しています。

ー平面を立体にとらえる想像力がベースにあるんですね、変わったアプローチの仕方なのでは?

インテリアデザインは図面を書くことが授業にあったので、平面を立体にする想像力はそこで培われたのかなと思います。だから箱のサンプルとかたまっていってしまうんです……。

多分パッケージの場合、印刷会社さんが考えるところを自ら考えてしまっているかも知れませんね。

たまったら捨てちゃいます。USIOも捨てちゃいました。笑 と見せていただいた箱のサン プル。

ーUSIO捨てちゃいましたか。切ったり、組み立てたりということですが、普段どんな環境の中でお仕事されているのでしょうか?

普段は自宅兼事務所で仕事をしてることが多いですね。メリハリつかなくなるので、仕事の前には必ずコーヒーを入れて一息入れて切り替えをつけるようにしています。

デスクにはカッターマットがあってその上にキーボードをおいて横にはプリンターがあってという感じです。一番使うのはPCよりもカッターマットと定規とスケッチ帳ですね。

スケッチ帳は家用と外用で分けている。ポスタルコのスナップパッドにデザインで不要になった裏紙を 切って穴を開けて使っている。

「僕はデザイナーながら絵が下手なんです。だからスケッチ帳(外で書く用)とか見せ なくないんです」と言いつつ見せていただいた、カレンダーのアイデアスケッチ。

コンペティションのコツは?結局、アイデアはわかりやすいのがいい

ーアイデアはどういうところから着想を得ているのでしょうか?

商品の前提要件があり、それに対してどういうのがいいかなと考えて、1日1案を目安にアイデアを出す。結局アイデアがわかりやすいものがいい。パッと見て分かりやすいものが見る人にとっても強いアイデアだったります。

あまりこねくり回さない方がいい場合があるんですよ。揉んで揉んでできる時もあるんですけど、他のデザイナーとの間でもよくあるあるネタで笑うんですが。プレゼンして一番最初に作ったのか、一番最後に作ったのかが1番いいデザインになることが多いですね。

その両者は違うんですが、最初の案は単純なんですよね。単純なだけに強い。最後の案は考え抜かれているから強い。そのどっちかだと思うんです。

ー 受賞したからこそ気づいたことなどあれば教えてください

商品化前提のアワードの場合だと、クライアントさんが商品を決めずに審査員が決めるケースが多いんですよね。デザイナーは選ばれてからクラインアントに会いに行くわけなんですけど、それも結構大変だなと思いました。

作品が選ばれる過程を知らないとまたゼロからの積み重ねになってしまうんです。このコミュニケーションがうまくいかなければ、賞をとってもそこで終わってしまい商品化されなくなってしまう。勿体無いですよね。

できれば審査会からクライアントが同席すると、デザインの見方や決める過程も知れるのでいいと思います。それはぜひやってほしいことです。

初めから寄り添って同じ方向を目指しながら、積み重ねて行かないと成り立たない部分も多いんです。

一 印象深いアワードはありますか?

アワードを何回か重ねてくるとなんとなく勘どころのようなものがついて来るんです。目に止まる色を使うとか。

以前、Rooootsと同様に商品化を前提とした、あるパッケージデザインのコンペに応募した時のことですが、ポン酢のリデザインを行いました。

応募当初は、ラベルは白がいいなと思ったんです。でも審査員の目に留まるよう、あえて黄色いラベルで応募しました。

すると優秀賞をいただきました。そのあとはクライアントさんとお会いして商品化を進めるんですが、やりとりを1年していく中で最終的な商品は白いラベルになりました。

アワードで勝つデザインと市場に出たときのデザインは必ずしもイコールではないと思うんですね。

でも、それをやったがために審査員の人には僕が選んだのはこれじゃない!と言われてしまいました。。

ー今後、挑戦したいものややりたことがありましたらお聞かせください

もっと空間を絡めた仕事に挑戦したいですね。今はサインデザインなどに興味があります。

元々インテリアを勉強していたので、改めてもう少しそちらに寄った仕事ができるといいなと思ってます。

ー今後アワードに参加される挑戦者(参加者)に向けてメッセージをお願いします

なんですかねー。(笑)落選して当たり前と思ってやれば気が楽だよとか?それは冗談として、作品づくりのトレーニングにもなるので仕事がおそろかにならない程度にどんどん挑戦して欲しいと思います。得られることがたくさんあります。

プロフィール

平野 達郎
Art Director / Graphic Designer
JAGDA 日本グラフィックデザイナー協会会員
1984年生まれ。2006年ICS College of Arts卒業。
http://www.trope-inc.jp/
受賞AWARD
Golden Pin Design Award 2016|Finalist
おいしい東北パッケージデザイン賞|優秀賞
東京ADC賞|入選
東京TDC賞|入選
Graphic Design in Japan|入選
SDA Award|入選
Display Design Award|奨励賞
6th SICF|審査員賞
TOP AWARDS ASIA|受賞
ほか



written by

reiko shinohara

AWRD編集部 / PR、ライター

デザイン、アート、ライフスタイルにまつわる分野でライティング、コミュニケーション活動を行う。 群馬県富岡市出身、O型、うお座、動物占いは ひつじ。

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