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Interview:「重いものよりも軽いもの、黒よりも白いもの」素材に向き合い、自分だけが提供できる価値を探し続ける/白金五丁目アワード ジュエリー&クラフト部門 グランプリ 上島 珠恵

2018/08/27(月)

インタビュー

KIGI x OFS presents『白金五丁目アワード vol.1 - ジュエリー&クラフト』部門のグランプリ受賞者上島 珠恵さんへのインタビュー。

はかなく、美しく、いつまでも心にとどまるブローチを生み出した上島さん。控え目に丁寧に語る穏やかな話し振とは裏腹に、1つの作品を完成させるまで徹底的に素材に向きあうストイックなまでの追求心がありました。

「重いものよりも軽いもの、黒よりも白いもの」トレーシングペーパーとの出会い

ー 受賞作品の素材にトレーシングペーパーを使っていたのは驚きました。平面的なものを立体へ、しかもアクセサリーにするというなんて。思いつかれたきっかけを教えてください。

素材は昨年度のヒコ・みづのジュエリーカレッジの卒業制作品として採用したものだっんです。その頃、自分自身がどんな素材に興味があるのか振り返っていました。追求していくと、そこで重いものよりも軽いもの、黒よりも白いものを取り入れたいと思ったんです。

そこで平面的な軽いものからアクセサリーを生み出そうと色々と、研究や実験を始めていました。そんな時に、出会ったのがトレーシングペーパーでした。

今回の受賞作品は、その素材から派生して誕生した作品です。素材に対して色々なアプローチをしていくなかで、火をあてたら ぷくっ と膨れる現象を発見しました。これは、アクセサリーに取り入れられると一気に作品を仕上げて行きました。

Title:floating/『白金五丁目アワード vol.1 - ジュエリー&クラフト』部門 グランプリ作品


コンセプト:
浮かんでは消えていく。
日常の中の小さな出会いと発見、
その時の空気やときめく気持ち。
全てを覚えておくことは出来ないけれど
少しでもとどめておきたいと思う。

トレーシングペーパーから生まれる 軽やかな質感のブローチ。
ひとつひとつ形の違うブローチが 身に着ける人の1日を特別な日にすることを願って.....。


ーなかなかアクセサリーに使わない素材ですよね。素材にどんなこだわりをもっていますか?

今はパーツを買えば誰でもアクセサリーを作れるし、どこでも手に入ります。私はそういうものではなくて、ジュエリー を作っている人しかできない素材を使ったものづくりに挑戦したかったんです。

ーアート作品にも近い感覚で作品を拝見させていただきましたが、商品としてのクオリティをもたせるためになにか工夫されていることなどありますか?

アクセサリーにするからには、価値のあるものに仕上げなければいけません。そのために紙の厚さやサイズ感など、とても気を遣いました。

あと実は、結構ブローチの裏側が大事なんです。留めるピンで表のモチーフのカタチって変わってしまうんです。なので、ピンの形や構造は細部までとっても気を遣って作りました。ピンも全部手作りです。

アワードの募集ページを見て、自分のためだけの作品づくりではいけないと気づいた。

KIGI x OFS presents『白金五丁目アワード vol.1 - ジュエリー&クラフト』部門のグランプリ受賞者上島 珠恵さん

ー白金五丁目アワードを知ったきっかけを教えてください。

現在はヒコ・みづの特別研究生なのですが、在籍する際にいくつかのアワードに参加しようと決めていたんです。

何に参加しようか?と探している時に、「上島に合いそうだよこれ」と、先生が教えてくれたのが白金五丁目アワードでした。

募集サイトを見てみると、自分の可能性が試せそうなアワードだったので参加を決めました。

ジュエリー系ってアワード的なものはあるのですが、日本だと宝石や金属のような素材を使ったキラキラしたものが多いんですね。それだと私の作風とは異なってしまうのでなかなか魅力的なアワードが見つからなかったです。

白金五丁目アワードは、コンテポラリーな素材のユニークさも受け入れてもらえると思ったんです。

ー応募するときに意識したことはありますか?

応募した作品の素材を使って一番最初に作ったものが大きめのネックレスでした。その後、改めてアワードのテーマを見返してみると、「生活をちょっと華やかにしてくれる、ジュエリー&クラフト」というものだったんです。そこで、自分のためだけの作品づくりではいけないと気づき、日常使いができるアクセサリー を意識してブローチに変更しました。

ー参加されてみてどうでしたか?

参加当初は、作品が入選して審査員にコメントをいただければ嬉しいな。思っていたんです。それがグランプリまでいただいて、感激でした。ちゃんと作っているのを認めてもらえるのが嬉しかったです。いい経験になりました。

ーこれまでに参加されたアワードはありましたか?

2017年にオランダのギャラリーマゼーという、展示会に出展したのですが、アワードというものに参加はするのは今回が初めてでした。

ー海外の展示会の反応はいかがでしたか?エピソード等あれば教えてください。

ギャラリーマゼーは、コンテンポラリージュエリーを扱うオランダの名門ギャラリーで、有名なコンテンポラリージュエリー作家の作品が多く展示されています。

このギャラリーで毎年世界中の優秀な卒業制作を集めて「世界の卒業制作展」を開催しているんです。

私もそこへの出展が決まり、オランダに行ってプレゼンテーションをしました。とにかくいろんな国から学生が集まるのですが、こんなにもやっていることが違うのかなとショックを受けました。

ーショックというのは、日本とは圧倒的に違うなにかがあったのですか?

海外の学生は、コンセプトを作るのにすごく時間をかけるんですね。1年くらい時間をかけてコンセプトづくりを学んでいると思います。日本は短いんじゃないかな?それよりも技術の習得に重きを置く傾向があるような気がします。学校によって違いはあると思いますが。

プレゼンの形式も自分の作品を様々な人に身に着けつけてもらってプレゼンしたり、自分の作品にすごく自信を持っているんですね。その姿を見て刺激を受けましたし、私を含め日本人はシャイだなとも感じました。笑

そこで改めて、言葉で伝える大切さと、身に着けることで伝える大切さを学びました。ジュエリーはアートと違って身に着けるものですから。

ージュエリーの道へ進まれるきっかけはなんだったんですか?

もともとものづくりが好きで、高校生の時から工芸高等学校というものづくりの高校に通っていました。

そこでは、鍛金といって、金属の板を金槌で叩いて鍋を作ったり、器を作ったり……。そいうトレーニングをずっとしていました。

3年間ずっと金属をやっていたので、やっぱり他のことをしてみたくなるんですよね。

そんな時に高校のOBで、ヒコ・みづのでアクセサリーを学ばれている先輩の話を聞いてとても刺激を受けました。それで、高校卒業後の進路を決める時に、ヒコ・みづのへ行こうと思いました。

ー OBの方はどんなお話を?

家にある身近なもので50個リングを作りなさいという課題です。その写真を見せてもらったときに「こんなことあるんだ、面白い!」とアクセサリー 作りへの興味が一気に湧いてきました。

実際に、私もヒコ・みづのへ入学してその課題を体験した時は、ザルで指輪を作ったり、軍手から指輪を作ってみたり、1日に5個くらい作って達成しました。

これは思考のストレッチにもなるので今でも時々やります。身につけるものが好きだったわけではなく、ある程度手に取れるものを作っているのが好きなんですよね。アクセサリーもそれに当てはまるのでいいかなと。笑

ー アクセサリー づくりで影響を受けた人はいらっしゃいますか?

はい、二人います。
1人目は嶺脇美貴子先生です。彼女はヒコ・みづのジュエリーカレッジを卒業し、同校の講師でもあります。

ドイツ・ミュンヘンで開催されるコンテンポラリージュエリーのオスカーともいわれる世界的に有名な公募展Schmuckで賞をとったり、国内でも多数の個展を開かれたり講師以外でも精力的に活動され続けています。

ぬいぐるみでネックレスを作ったり、百円ライターで指輪を作ったり、異素材からのアクセサリーを提案する考え方やアウトプットなど、とっても刺激を受けています。どんどん吸収していきたいなと思う人です。

2人目はオランダのアーティスト ベップ・ケスラー氏です。彼女も世界で活躍するジュエリー作家です。ヒコ・みづの3年生だった時に、彼女のワークショップに参加しました。

金属・木・樹脂などの様々な素材に向き合い、手を動かしながらもコンセプトを見つけて行くというプロセスがとても新鮮でした。ちょうど3年生の卒業制作前ということもあり、ものすごくためになったというか、このワークショップを受けたからこそ、今の作品に繋がったと思います。

ーこれまでの作品を見せていただけますか?

これは絵の具で作ったブローチです。アクリル絵の具を平らな所に伸ばして、ヘラで集めてシュッと削り取るという作り方です。裏側のピンも全て手作りです。

作品名:gather

ーあらゆる素材をアクセサリー素材の可能性として、丁寧に向き合っているんですね。

私が進んだコースが素材と向き合うことを大切にしてるコースではあるのですが、素材を触ることで改めて形を発見したり、ちょっとユニークなアプローチなのかもしれません。

ステップとしては、コンセプトを作りたいという思いがあり、素材を探しつつ、手を動かしながらデザインする、というような流れを一度に平行してやっている感じです。その様々な思いが1つに交わった時に作品が出来上がる感じです。

ーこれから挑戦したいことはありますか?

これからはもっと大きな作品を作ってみたいです。

ー最後にメッセージをお願いします。

今回のアワードは、先生から薦められて情報を知りました。私もそうですが、学生って意外とこういう情報を知らないなと思いました。自分の可能性を試すことができる大切な情報なので、日頃からキャッチできるようにアンテナをはることも大事だなと思いました。そのためにも、自分の強みを人に伝えておくことは重要だと思いました。

制作に関しては、ジュエリーも飽和状態な中で常に新しい作品を作って行かなければならないという中で、周りに気を取られずに、自分だけが提供できる価値を見つけることが大切なのではないかと思います。


■プロフィール
上島珠恵

千葉県出身。ヒコ・みづのジュエリーカレッジにてファッションアートアクセサリー 専攻 。その時の経験から、素材へ新たなアプローチをすることで生まれるモチーフを使ったジュエリーを制作。現在は、同校の特別研究生として在学中。

ポートフォリオURL:https://awrd.com/creatives/detail/2729730

■関連サイト

白金五丁目アワード ジュエリー&クラフト 展
会期:8月15日(水)ー9月2日(日)
会場:OFS Gallery
○作家在廊日:8/22, 23, 29
URL:http://ofs.tokyo/awrd_exhibition

■クラウドファンディングを通して購入可能
URL:https://camp-fire.jp/profile/OURFAVOURITESHOP

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