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tupera tuperaのつまみ食いのススメ。多様なアプローチとコミュニケーションから生まれる創造性

2024/05/15(水)

インタビュー

「AWRD」のクリエイターインタビューシリーズ。第一線で活躍されるクリエイターの方々にスポットライトを当て、キャリアを築き上げるまでのストーリーやインスピレーションの源、直面した課題や挑戦、それを乗り越えた道のりなどについてうかがっていきます。

今回は、絵本を中心に多彩な活動を続けるユニット、tupera tupera(ツペラ ツペラ)さんにご登場いただきました。活動21年目を迎えたお二人から、現在開催中の企画展やこれまでの活動を振り返りながら、人や動物を含めた生きものへの眼差しやものづくりへの向き合い方について語っていただきました。

TOP画像:《かおカオス》 撮影:吉次史成

動物に反応する人間こそが面白い。角度の違うものの見方

ー 現在、大阪・万博記念公園内にあるニフレルでは「あなたも愉快な生きものだ!展」を開催中ですね。

tupera tupera 亀山 達矢(以下、亀山)
 これまでも、各地の美術館やギャラリーなどで展覧会をおこなってきましたが、動物園や水族館のような実際に生きものがいる施設で企画展を行うのは初めてです。
以前、あべのハルカス美術館での展覧会「tupera tuperaのかおてん.」をご覧いただいたのが縁で、生きているミュージアム ニフレルでの企画展「あなたも愉快な生きものだ!展」が実現しました。

「tupera tuperaのかおてん.」の展覧会でもご一緒したデザインチームminnaさんと、今回は企画の段階から、ニフレルの皆さんも交え、和気藹々と話し合いながら作り上げたのが楽しかったです。
仕事ではあるけれど、気の合う仲間を集めて遊んでるみたいな感覚を僕らは大切にしています。

CAP:「あなたも愉快な生きものだ!展」では、tupera tuperaがつくり出す、生きものと人の共通点を表現した新作や「わたしは愉快な生きものだ!ワークショップ」で構成した体験型企画展。生きものの個性に気付きながら、自分自身の個性も振り返る体験が楽しめる。画像提供:NIFREL


tupera tupera
中川敦子(以下、中川) 初めてニフレルを訪れた時、館長の小畑洋さんが、いろいろな生きものの普段の様子や性格なんかを愉快に説明してくださって、それがとても面白かったんです。

せっかくニフレルという特別な空間でやるなら、単純にtupera tuperaの作品がそこに飾られているというだけでは勿体無いなと思いました。そこから、もっと積極的に生きものたちと絡んでいく企画内容に変わっていったんです。「tupera tuperaの視点でニフレルに触れると、こういう切り口になるよ」というような。

亀山 小畑さんが一番好きな生きものに「ヨダレカケ」というのがいるんです。

CAP:「ヨダレカケ」スズキ目イソギンポ科。屋久島、琉球列島、台湾、およびインドネシアに分布。ニフレルでは「わざにふれる」エリアで暮らしている。 画像提供:NIFREL


中川
 下顎のあたりがぶよっとして、すごい大きなヒレを持っている。ヨダレカケは魚なんですけど水が嫌いで(笑)、ジャンプしてぴょんぴょん飛んでいくんです。

CAP:tupera tuperaによる展示作品の中には、ヨダレカケと男の子の作品も並ぶ(写真右)。画像提供:NIFREL

亀山 それを嬉しそうに案内する小畑さんが、またキラキラしてて(笑)。人を介して、より強く生きものの個性を感じたんですね。tupera tuperaの絵本や作品には、いろんな動物が登場するので、すごく好きなんだろうと思われがちですが、ちょっと違うんです。動物に反応する人間こそが面白いと思っていて、むしろ動物に疑いを持っているところすらある。

ー どんな疑いを持っているんですか?

亀山 例えば絵本の『パンダ銭湯』をつくる動機は、じつはパンダは人間を偽って生きてるんじゃないか……という妄想からでした。野生では生息しているのは中国だけで、国家間の外交にも使われるし、白黒の模様もなんとなくあざとくて、生きものとして胡散臭い気がするんです。(笑)

そこが愉快なところなんですけどね。他の動物そっちのけで、可愛い可愛い!ともてはやされているけれど、結構よく見るとパンダって人間のおっさんみたいでもあるし。

CAP:パンダ専用銭湯を舞台に、パンダの衝撃的な秘密が明かされる、子どもから大人まで楽しめるベストセラー絵本『パンダ銭湯』。


中川
 大人のパンダの背中って、おじさんの哀愁を感じますよね。

亀山
 どうしても少し斜めから動物を見ちゃうんです。tupera tuperaならではの角度の違うものの見方とかも大事にしながら動物を楽しむというか。そういう感じで考えてきました。

イエスかノーで判断せずに、いろいろな気づきを感じてほしい


ー 異分野の方との出会いや協働も、tupera tuperaの活動の特徴でしょうか?

中川 そうですね。これまでも様々な業種の方とコラボレーションしてきましたが、最近だと京都大学iPS細胞研究所のプロジェクトも思い出深いです。各分野の専門家の方とお話していると、私たちの知らない未知の世界が見えてきて、引き込まれます。

亀山 今回のお話は、上廣倫理研究部門 笠間絹子教務補佐員(制作当時)と三成寿作特定准教授が中心となって企画し、tupera tuperaにお声がけいただいたのですが、打ち合わせの席でも話がどんどんといろんな方向に広がっていって、本当に面白かったです。

中川 求められたのは、細胞と私たちをめぐる何か?を作品にすることでした。iPS細胞のように科学は次々と新しい展開を見せているけれど、科学の社会での扱われ方については、その是非をイエスかノーかですぐに判断してしまう前に、科学者だけでなく広く社会の中で議論をしていく必要がある。そのきっかけになるような作品を作ってほしいという依頼でした。

自分たちの専門分野ではないし、知識も全くない。その中で責任を持って作れるかどうか?最初はかなり困惑したのですが、お二人と話を進める中で、そういう知識や関心がない人の目線で何か形にすることができたらと考えました。

ー そして完成したのが、部屋のようなイメージの平面作品だったんですね。

中川 本来は何を描いているのか説明せず自由に鑑賞してほしいというコンセプトなのですが、どういう風に考えて制作したかを少し説明すると、真ん中にあるピンク色の壁に囲まれている全体が細胞のイメージです。

細胞には、細胞を包む壁(膜)があるってことが大事なんですが、その壁ですべてをシャットアウトしてしまっているわけではなく、必要なものは取り込んだり要らないものは排出したりしている。時には作り変えられたり、悪いものが入り込んだり。

CAP:『曖昧で確かなもの』2023年。本作品は、貼り絵の手法で制作された原画をもとに、特殊な印刷技術を用いて作成。原画のスキャン・編集の後、サンエムカラーのUVプリント技法により、インクを何層も「重ね」ることで、立体的に表現する形で完成された。

中川 無数の細胞で出来上がっているのがわたしたち人間なんですが、細胞の仕組みもまた、人間そのもののようだなあと感じました。
自分自身を守るための壁をきちんと持ちつつも、全て閉じてしまわずに、ちゃんと情報や栄養は取り入れたり、悪いものは出したりしていかないといけない。意識的にも無意識にも、常に周りの影響を受けて変わっていくわけです。

その中で、自分の核になる部分だけは大事にしていきたいのだけど、そこに固執していいのか?本当は何が正解なのか?常に揺れ動いている。でも、科学の進歩や未知の世界に対しての希望も恐怖も、イエスとノーの間で揺れ動きながら考え続けるということが大事なんですよね。そんな想いが作品の背景にあります。

恐れずにいろんなものをつまみ食いする。それもコミュニケーション

ー ニフレルの展示に参加的な要素があるように、観客や協働者とのコミュニケーションも大事な要素ですね。

亀山 まさにそうです。僕らは絵本をコミュニケーションツールと言っていて「使うもの」であるという意識を強く持っています。作品性としても、文章を読むというよりも、笑わせたり、あるいは何か手を加えたりできるような本が多い。

tupera tuperaは今年で活動21年目ですが、もともとは布雑貨やプロダクトをつくっていたんです。人が使うものをつくって、バッグを持ち歩いたりTシャツを着てもらって喜んでもらう。普段の日常生活で使ってもらうという意識は、絵本にも感覚的に通じています。

だから、誰かと一緒につくったものが人の生活の中に溶け込んでいくのは嬉しいし、その作品を観た新しい分野の人から声をかけてもらって表現の幅がどんどん広がっていくのは何とも心地よい。そこでもやっぱりコミュニケーションがいちばん重要。

CAP:『かおノート』。52種類の「かお」をベースに、目・鼻・口などのパーツシールが6ページ分ついたシールブック。「かお」を自由につくりあげることで、想像力と創造力を育むきっかけになるほか、コミュニケーションが生まれるツールにもなる。

中川 そもそも私たちが2人組で、ここでもすでにキャッチボールが発生しているから、コミュニケーションが取れないと何も進まないんです。

私たちはある分野について勉強して深く思考するのはけっこう苦手なんですけど、自分は専門家じゃないからそれ以上立ち入らないようにしよう、ではなく、いろんなものをつまみ食いすることも恐れずにやっていく。それもひとつのコミュニケーションの方法かなと。

亀山 世の中には面白いことだらけ。つまみ食いが最高です。

中川 私たちが楽しんで、そこから自分たちの切り口で「こんなことが面白かったよ」って表現する。それを見てくれた方たちが興味を持ってアクションしてくれる。作品を通して、そういう連鎖がおこっていったら嬉しいなと思っています。

大人の楽しさを再認識してもらいたい。子どもの部分を引き出す「tupera tuperaのかおてん.」

ー さきほども話題にのぼった「tupera tuperaのかおてん.」は、7月の八戸市美術館での展覧会がファイナルになります。2020年が最初の開催でしたから、かなり長いプロジェクトになりますね。

亀山 ブルーシープという展覧会企画会社の草刈大介さんから「今までにないような展覧会を僕と発明しませんか」っていう名言みたいな(笑)お誘いを受けて始まった展覧会です。

人気の展覧会で混んでいると、作品よりも人を見に行ってるような状態になることがありますよね。作品鑑賞という意味では人は邪魔な存在になってしまうんだけど、むしろ、その人達の顔も利用してお互いに楽しんでしまうような展覧会にしたいと思ったんです。
それでこれまで一緒にコラボレーションしてきた映像作家やカメラマン、衣装デザイナーの方などにお声がけして「かお」というテーマでアイディアを山ほど出して、作品をつくって、ワークブックもつくりました。

みんなで遊ぶようにつくっていくプロセスはとても面白かった。ところが、いざ展覧会が始まるというタイミングで新型コロナウイルス感染症が流行しはじめてしまって……。

中川 参加型の、来た人も積極的に展示に関わるような内容だったので、開催にあたって当時はいろいろな葛藤がありました。それでも長く巡回してきたおかげで、徐々に自由に楽しめるようになっていって。マスクで顔の半分しか見えないような時間が長く続いたなかで「かお」っていうテーマを展開したのも、また別の面白さや視点を提供できたとも思うので、やってよかったです。

亀山 八戸市美術館では、オープニングイベントとして、実際に会場で青森をテーマにした屏風の作品を公開制作します。それから「tupera tuperaのかおてん.」の4年間を振り返るということで、言い出しっぺの草刈さんをゲストに招いてトークショーも行う予定。
オンラインでも観れるようにしますので、これまで各地の「かおてん.」に来ていただいた方にも視聴してもらえたら嬉しいです!

CAP:「顔」をテーマにした展覧会「tupera tuperaのかおてん.」。八戸市美術館では『かおノート』『こわめっこしましょ』など「顔」をテーマにした人気絵本の原画をはじめ、映像作品や体験型の立体作品などを展示する。《かおカオス》撮影:吉次史成

中川 幅広い人に見てほしいです。絵本や家族で楽しめるプロジェクトを積極的に行っているので、私たちがしていることは子ども向けのように思われがちなんですけど、そんなことはないんです。特に「かおてん.」は若い人、大人にもどんどん来てほしいと思ってつくってきました。

亀山 本来大人って、みんないい具合に子どもの部分を持っている。そもそもみんな子ども経験者だし(笑)。子どもの部分と大人の部分を合わせた、すごくキラキラした大人とか、愉快な人がいっぱいいて、これまでもそういう大人と一緒にものづくりをしてきました。

中川 弾ける大人を見るとものすごく嬉しいしね。おばあちゃんとかよく弾けている。

亀山 そうそう。ワークショップをやっていたら、子ども以上に本気になってすごいものをつくるお父さんもいます。「子どもはどうでもいい! 俺がすごいのをつくる!」っていう。そういうのがいいんです。

大人が大人げなくエゴ丸出しで何か作ってみたとか、楽しんでみたみたいなもの、関わったものを見るのは面白いし、それは結構なんか本来的な人間の力の一つだなと思います。

21年、つくって見せての繰り返しから広がったもの

ー ありがとうございます。最後にアワード、公募の意義についてお聞きしたいです。tupera tuperaさんにとってアワード(公募)とは?

亀山 tupera tuperaをスタートしてからの21年間は、自分から応募したことはないんですよ。逆に学生時代は賞金・商品目当てで応募しまくってる時期もあって、受賞して賞金50万円をもらったこともありました。

ー それはすごいですね!笑

亀山 ちょうど自動車免許取得の合宿に行こうとしていたので、その50万円を使って石垣島での合宿にグレードアップしました(笑)。そんな感じで、アワード(公募)に自分から参加するのは遠い記憶なんですが、tupera tuperaとして受賞した中で印象的なのは「第1回目のやなせたかし文化賞 大賞」をいただいたことです。

ー 『アンパンマン』で知られるやなせさんを記念した賞ですね。

亀山 子どもにまつわるあらゆる活動をしている人に贈られる賞で、そういう人を応援したいというやなせさんの遺言からつくられました。絵本だけじゃなくワークショップとかtupera tuperaの活動全般を評価していただいたことが、すごく嬉しかったです。

やなせさんは、亡くなられるまで本当にエンターテイナーであり続けた人じゃないですか。自分自身も世の中も楽しくするためにライブやったりとか。ドキュメンタリーで見たことありますけど、病気になってからも最期まで、活動を続けて。楽しく人生を過ごしてた方で、僕もああいうふうなおじいさんになれたら嬉しい。

ー 共感するところが多いんですね。

亀山 共感することばかりです。もちろん過ごした時代が違うので、戦争の体験や記憶など異なるところもありますが、根本的につくることとか、つくったもので人を楽しませることへの意識、クリエイティブの姿勢みたいなところに共感します。

中川 アンパンマンが人気が出過ぎて、キャラクターとしてのイメージが強いですけど、一番最初のアンパンマンはかなりシリアスですよね。人間にとって大事なことはまず食べること。そして、人を助けるには自分の身を削って、痛みを伴うものだというメッセージが込められています。

世の中に問題を訴えるとき、恐怖を感じさせるような否定的なものではなく、できれば明るくこんな未来がいいよね!というメッセージの打ち出し方をしたいなと私たちも思っています。

ー やなせさんからお二人へとつながっていく、物づくりのタイムラインを感じます。では、tupera tuperaから若いクリエイターに向けて何かメッセージはありますか?

亀山 アワード(公募)の意義ってところから少し離れるのかもしれませんが、受賞を目的にするんじゃなくて、毎日手を動かして出来上がった作品を発表し共感してもらえることで、気の合う人と出会えたり、次のステップにつながると思っています。

中川 私たちは、振り返ると本当につくって誰かに見せて、ってことの繰り返しの20年だったなって思っています。自分の作品を見せたら何かしらの反応が返ってくる。それは悪いことも含めてかもしれないけど、やっぱり出さないとわからないし、出会いにもつながらない。どんな小さな機会でも、そこに足を運んだ人が作品を気に入ってくれて、声をかけてくれたりする。

公募でも展示会でも、最近ではSNSもありますが、誰かに見せる、発表する場所を持つのがスタートだと思います。


プロフィール:tupera tupera(ツペラ ツペラ)
亀山達矢と中川敦子によるユニット。2002年より活動を開始する。
絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、アートディレクションなど、様々な分野で幅広く活動している。 絵本など、著書多数。海外でも様々な国で翻訳出版されている。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当。武蔵野美術大学油絵学科グラフィックアーツ専攻 客員教授、大阪樟蔭女子大学 客員教授、京都芸術大学 こども芸術学科 客員教授。「わくせいキャベジ動物図鑑」(アリス館)で第23回日本絵本賞大賞を受賞。2019年に第1回やなせたかし文化賞大賞を受賞。
http://www.tupera-tupera.com/


■イベント情報:
「あなたも愉快な生きものだ!展」
日程:2024年3月6日(水)-2025年1月13日(月・祝)
会場:NIFREL
URL:https://www.nifrel.jp/cp/yukainaikimono/

「tupera tupera のかおてん.」
日程:2024年7月6日(土)~2024年9月1日(日)
会場:八戸市美術館
URL:https://hachinohe-art-museum.jp/exhibition/3244/


■展示情報:
「曖昧で確かなもの」
会場:京都大学iPS細胞研究所(CiRA)本館1階ギャラリースペース
URL:https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/240216-100000.html



執筆:島貫泰介 編集:AWRD

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