過去に宇宙、家事、音楽など様々なテーマでプロダクト・サービス・体験の未来を考えるアイデアソンやメイカソンを実施しているロフトワーク。
今回は「未来をデザインする」と題し、世界最大級の金融・資産運用グループAXAのメンバーカンパニーである、アクサ生命保険株式会社の協賛により2015年2016年と2回にわたり開催しました。
ここから生まれた2045年のライフスタイルへの種はどんなものだったのでしょうか?
2045年、未来の可能性について考える
1回目のテーマは「未来のライフスタイル」。
2045年までにはさまざまなイノベーションによりエポックメイキングが起こると言われています。 例えば、
・人工知能(A.I)の進化などにより、これまでの技術開発の歴史から 推測される未来モデルが限界に達する点「技術的特異点(シンギュラリティ)」が訪れる ・再生医療や遺伝子研究の進歩で人類の寿命は1日5時間延びていて、2045年には平均寿命100歳となる ・ビットコインなど仮想通貨の普及で「信用」や「貨幣制度」など制度が再定義される ・自動運転技術などモビリティのイノベーションで、事故のない世界が現実となり「安全安心」の概念が変わる
30年後の未来へ向けて起こるさまざまなイノベーションの連鎖の中で、 ライフスタイルはどのように変化すると思いますか?
本イベントでは「未来のライフスタイル」をテーマに、デザイナー・エンジニア・アントレプレナー・プランナー・マーケターなど多様なバックグラウンドを持つ人が集まりました。
初めに東北大学名誉教授で、合同会社 地球村研究室 代表でもある、石田秀輝氏のキーノート・スピーチでスタート。
「未来を考える際には思考回路を変える必要がある」と主張する石田氏は、「地球環境問題」から、理想の未来を描き逆算で現在からの方策を考える“バックキャスト思考”の重要性を解説していきました。
制約の中で考える“バックキャスト思考”の実践がこのワークショップの重要なポイントです。さらに今回は、優れたアイデアに対し賞金総額100万円が用意されました。1チーム4~5名で編成された計15チームは、KOILフロアの様々な場所に集まり、未来をデザインするワークをスタートさせました。
30年後の地球や暮らし、テクノロジーを想像し、そこに必要な商品やサービスを考え、プロトタイピングする。そんなアイデアソンとメイカソンによりドキドキわくわくするような2045年の未来予想図を描きました。
テクノロジーの進化が生む私たちの新しいライフスタイルをアイディエーションワークで描き、そこで生まれる新しい体験をアイデアソンとメイカソンで表現しました。
<ワークショップ1日目>
来るべき未来において、人々がどのような社会環境で、どのような生活を送るかを想像しながら、人々の欲求を特定し、その欲求に応えるアイデアを考える。
ワーク1:社会環境の設定
ワーク2:ライフスタイル・ペルソナ・インサイトを考える
ワーク3:解決策のアイデア出し
ワーク4:アイデア評価
<ワークショップ2日目>
アイデアを形に(プロトタイピング)し、考えたアイデアをライフスタイル提案資料としてA1ポスターにまとめ、各チーム3分で発表する。
ワーク5:システム・シナリオの検討
ワーク6:プロトタイピング
<発表&表彰>
2日間、練り抜き生まれたアイデアたち
審査員に豊橋技術科学大学 岡田美智男氏、ifs未来研究所 所長 川島蓉子氏と株式会社良品計画でMUJI passportを手がけた奥谷 孝司氏を迎えました。こちらでは審査の結果、選ばれた1位〜4位までのアイデアたちをご紹介します。
【1位】チーム年齢不詳
スキルバンクからスキルを取り出して食べたり、他人にスキルを譲ったりすることができる仕組み。これによりスキルが循環する社会を実現。
【同率2位】チーム スピロ
どんな場所にいても働ける未来をつくる。たとえば、ある眼鏡をかけると、私服でいてもスーツを着た状態で相手に映る。
チーム ゴートゥザネイチャー
「定住+旅行」と「移住」の間に位置付られる「豊住」という概念を提案。
2日間を振り返り、アクサ生命保険株式会社 取締役 代表執行役社長兼CEOの、ジャック・ドゥ・ペレティ氏は、「バックキャスティングというこれまでにない考え方で、未知の業種、未知の方々と、未来について非常に濃い議論ができたと思います。ご参加ありがとうございました。」と感謝の意を述べ、全プログラムが終了しました。
第1回 詳細レポートはこちら
【開催概要】
第1回セミナータイトル:
未来をデザインする Ideathon & Makeathon ─ 2045年のライフスタイル
開催日時:Day1/2015年10月13日(火)10:00〜18:00
Day2/ 2015年10月14日(水)10:00〜19:00
場所:KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)
対象:企業にお勤めの方、クリエイター、学生の方など
・アート、デザインなどクリエイティブ分野で活動されている方
・ソフトウェア/ハードウェア問わずエンジニアとして活動されている方 ・コンセプトデザイン、ビジネスプランニングなどに携わっている方
・様々な学問分野で研究者として活動している方
・顧客体験のデザインを実践されている方/関心がある方
・サービスデザインやコンセプトデザインを実践されている方/関心がある方
・デザイン:グラフィックデザイン、UIデザインなど。
賞金:賞金総額100万円
主催:株式会社ロフトワーク
協賛:アクサ生命保険株式会社
第二回 システムデザイン思考で考える新しい保険
2回目は、2016年8月3日~4日の2日間にわたり、東京都江東区にあるコワーキング・スペースMONOで開催されました。
今回は「保険」というテーマに対して異業種・異職業の参加者がグループを作り、それぞれにアイデアを出し合いました。不確実性の高い未来をバックキャストで考えていきながら、システムデザイン思考の技法を使って新しいサービスを創造していきます。
金融や保険がIT技術と結びつき大きな変革の時代を迎えつつある保険業界。「保険」という、身近でありながらもあまり知る機会のないテーマだからこそ、他業種や他業態との新結合により、大きなインパクトのある全く新しい概念のサービスを見つけるヒントがたくさん眠っているのではないでしょうか。
ワークショップだから生まれたさまざまな未来の可能性をご覧ください。
ものづくりの原点とはライフスタイルを作ること
前回と同じく東北大学名誉教授で合同会社 地球村研究室 代表でもある、石田秀輝氏のキーノート・スピーチでスタートしました。
石田氏は25年間企業に勤める中で一度は「環境と成長は両立しない」との結論を出すも、このままではものづくりが衰退してしまうという危機感から東北大学に進み研究を行い「ものづくりの原点とはライフスタイルを作ること」という考えに至りました。この考え方を支えるのが、バックキャスト思考です。
石田氏による貴重な「バックキャスト思考」についてのキーノート・スピーチに続いて2日目は、アクサ生命 松下氏より「インステック 日本生保市場への影響ー保険とテクノロジーの融合」というタイトルでインスピレーショントークがありました。
大切なのは予想を超える顧客体験
「保険料はリスクに応じて算出されるが、現状は性別と年齢でしか保険料が判断されない。ここにIoTデバイスなどが活用されることで保険は大きく変化していくことは間違いない」と松下氏。
紹介のあったアクサの取り組む3つの変革分野は
1.商品・オファー
2.ヘルスペイヤーからヘルスパートナーへ
3.営業・ディストリビューションへの取り組み
アクティビティトラッカーによる加入者の健康状態取得から、シニアを見守るスマホアプリ、見込み加入者に欲求が生まれるマイクロモーメントを捉えるためのターゲットセグメンテーションなど、これまでのような細切れの施策ではなく、最適なカスタマージャーニーを意識した取り組みが紹介されました。
「お客様の予想を超える顧客体験を提供しないと、成長し続けられない。そのためにデジタル領域の可能性を追求している」
最後にアクサ生命のブランドキャンペーン「Born to Protect。保険を超えて、守りたい。」のメッセージとともに、「みなさんが考える新しい保険の提案が楽しみです」とエールを送りました。
このインプットを受け、2日間に渡って開催されたワークショップではどのようなアイデアが生まれたのでしょうか?
<ワークショップ1日目>
ワーク1:保険とは?
ワーク2:今はない10年後のライフスタイルを考える。
ワーク3:ギャップを解消する社会活動やサービスとそこで必要な保険
<ワークショップ2日目>
ワーク4:グループ討議と他チームとの討議
インスピレーショントーク :「インステック 日本生保市場への影響ー保険とテクノロジーの融合」アクサ生命 松下氏
<発表&表彰>
システムデザイン思考から生まれた未来の保険
決勝の審査員を務めたのは、慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長・教授 前野 隆司氏、アクサ生命保険株式会社 執行役員メディカル&プロテクション事業本部長 松下 健一郎氏、HealthTech News Founder 吉澤 美弥子氏の3名。
審査員それぞれの切り口で選んだイノベーション賞、システムデザイン賞、バックキャスティング賞の3つと、参加者投票賞で選ばれたアイデアをご紹介します。
オーディエンス賞
チームナンバー16 KCM保険
参加者投票の1〜3位が全て1票差という僅差の中選ばれたのがこのアイデア。
KCMとはK(企業)C(カルチャー)M(メンタルヘルス)の頭文字で、正式名称を「企業カルチャー反映型メンタルヘルス保険」。
保険業界が企業で働く全ての人のメンタルヘルスを向上するための保険で、センシングデバイスにより企業カルチャーを測定し、これによって決まった保険料の中で従業員に対する保障を行い、同時に社会に向けて企業のブラック度合いが見える化されるというもの。
イノベーション賞
チームナンバー6 健康bitcoin
加入者の健康に対する取り組みが仮想通貨bitcoinとして還元され、様々な経済活動に使われるというアイデア。
「ブロックチェーンに対する期待があるが、それを保険会社がやるところにインパクトが大きいと感じた。診療報酬データなど、今まで保険会社ではとれなかったデータを取れることで保険も変わっていくかもしれない。」(吉澤氏)
システムデザイン賞
チームナンバー14 夢追う保険
切実な食糧不足を原因としてコンビニやファストフードが打撃を受け、一人での食事が金銭的にも、健康的にも、精神的にもリスクになってしまう未来に、保険会社が一緒にご飯を食べる相手と健康的な食事を提供する保険。
「あのプレゼンだけを聞くと保険と言えないかもしれない。しかし健康に関する要素のうち運動と睡眠はデバイスで取れるが、食事のデータを取るのは難しく課題になっている。これに加入している人の食事データがとれることで、将来のインフラになれるかもしれない。そこに期待を感じた」(松下)
第2回 詳細レポートはこちら
【開催概要】
第二回セミナータイトル:未来をデザインする vol.6 Insurance & Technology -システムデザイン思考で考える新しい保険
開催日時:DAY1 2016年8月3日(水)10:00〜18:30(開場:09:30)
DAY2 2016年8月4日(木)10:00〜17:30(開場:09:30)
場所:MONO
対象:企業にお勤めの方、クリエイター、学生の方など
・アート、デザインなどクリエイティブ分野で活動されている方
・様々な学問分野で研究者として活動している方
・コンセプトデザイン、サービスデザイン、ビジネスプランニングなどに携わっている方
・顧客体験のデザインを実践されている方/関心がある方
・Tech系ベンチャー、スタートアップの方
賞金:総額30万円
主催 株式会社ロフトワーク
協賛 アクサ生命保険株式会社
協力 パナソニック株式会社 アプライアンス社