先日盛況のうちに終了した「白金五丁目アワード ジュエリー部門」ですが、集まった作品があまりに素晴らしく、突然ですが受賞作品をクラウドファンディングで販売することになりました。
というわけで、急遽準備して「AWRD→CAMPFIRE アワード・コンペティションからクラウドファンディングへ」の取り組みがスタート。そしてさっそく販売を開始しておりますので、それぞれの受賞作品をご紹介させていただきます。
1. グランプリ作品は、偶然の気泡がトレーシングペーパーにつくりだす鉱物のようなフォルムが魅力のかろやかなジュエリー
トレーシングペーパーを熱することでおきる物質の変化に着目してジュエリーに昇華している作品の上島珠恵さんが今回のグランプリ!偶然にうまれるふくふく気泡のような形は、二つとして同じ形状がなく、オーガニックなフォルムで、軽やかな原石や鉱物を思わせます。
展示では、応募作品以外にもさまざまなデザインの作品や、気泡が発生する過程の動画が壁面に投影され、ぷつぷつという音も会場に小さくはっきりと響きわたり、静謐な緊張感とやわらかさが優しいバランスです。
「アイデアと加工とすべてあわせた完成度が高い!」
ジュエリーデザイナーで今回の審査員である薗部悦子さんは、後ろ側のブローチピンがすごくよく考えられている、ぺたっと服につかなくて服からフワっと浮いて身につけられるという点にとても感激したとのこと。言われて確かに裏側をみると、かたちに沿って湾曲した銀色の細い線が美しく丁寧な弧を描いており、繊細さを保つための強度というのは果たしてエレガントなものだ!と感銘。
↑わたしのスナップで失礼!なのですが、U原さんもご試着!男性でもつけられますね!とのコメント。 ふわっと自然に白いTシャツにニュアンスを与えております。
2. 自らの内にある物質感をかたちに。七宝や赤銅などで描き出す、絵画のようなブローチ
準グランプリ、小室えみ香さんの作品は、七宝で描き出した絵画のようなブローチ。ドローイングとブローチが対になって並んでいる展示もすばらしい。ドローイングは決してジュエリーの図案というものではなく、「ある一つの感覚に到達しようとしている異なる手法でのアプローチ」と感じられ、造形上の揺るぎない物語世界を感じさせます。
「ドローイングからとても自然にジュエリーが形になっているところに魅力を感じました」
幼少期から感じていた自分の中にあるごろっとした物質感を形にしたかったという小室さん。そこからは自然な流れでジュエリーの濃密な魅力とその手法に出会ったとか。ドローイングのときは10秒とか30秒で描きあがるが、でもジュエリーを作るのにはとても時間がかかり、この段階で再びドローイングを描く感覚だとのこと。薗部さんからの評価も、ドローイングから自然と形になっていることに魅力を感じたという点でした。
↑あつかましながら!なのですが、わたくも試着。テキスタイルとの対話でまた新しいストーリーがうまれそうです。どれも1点物なので、いまこのタイミングをどうかお見逃しなく。
3. 木の繊維を叩いてうまれた力強いデザインが、ジュエリーの概念を押し広げる
優秀賞の1人目は青木愛美さん。「物を破壊する」というテーマからスタートし、木を叩くと割れる・ぼそっとするという日常生活でなんとなく知ってい現象を突き詰めるとどうなるか?ということに挑戦したそうだ。ヒノキに水を吸わせて、温め、そのあと木槌をつかってほぼ1日中叩き続けるとのこと。最後は針でできている櫛で大切に愛でながら繊維をといて完成させるらしい。
「木材」というなじみのある無骨な素材の、知らなかった側面が急に目の前に飛び出てくる ことに、こちらも動揺しながらも、なぜかちょっとくすっと笑ってしまい、そして惹き寄せられるこの感覚は、なかなかどうして新感覚。
「男性のコートにつけていただきたい」と店長
これなら男性にもきっと取り入れていただける、との見立てありー
確かに!メンズにも楽しめる材木ジュエリーという新ジャンルである。
4. 自分だけにしか見えないパールに、自分だけのきもちを留めておきたいという気持ちを込める
優秀賞の2人目は吉岡優希さん。ミュージアムでドキドキわくわくした気持ちを留めておきたいというきもちを形にしたという。内側にパールが入っているデザインで、周囲からは見えず、自分の角度からだけ見えるという構造。自分だけが感じた、自分だけのきもちを、緊密にとどめて、誰にもみえないように身につけられるように、と吉岡さん。早速わたしも試着してみたところ、鏡には映らないパールに、はたと己を振り返り、もっと自分を磨かねばならないと教えられたような気がして、購入しました!
「ジュエリーはいろんな角度から見えるし、つける人の精神的なところに働きかける部分もありますね。」
薗部さんも、つける人のメンタル的な部分へのはたらきかけや、様々な角度からの見え方についてとてもよく考えて作られているという点に高評価。ご自身もつくるときに近いものがあって共感したとのこと。ふむふむなるほど。ジュエリーというのは、自分からの見え方感じ方、人からの見え方や、それ自体のゆらぎ、などもデザインしていくものなのですね!勉強になります。
5. 陶磁器を作る過程でうまれた装飾が、金平糖のようなジュエリーに
もともと焼き物をやっていたという松本孝一さん。食器や土鍋をつくっていたところ、その過程この手法を発見したという。当初はコップのまわりに金色の粒をつける装飾をしていて、それがこのアクセサリーのパーツになったとのこと。既に5年くらい作り続けているそうです。第三者には土鍋からのジュエリーはかなり飛躍をしたのでは?と感じましたが、ご自身は違和感なく、彫刻的な興味の延長線上で全てとらえているとのこと。食器の装飾という制約から離れてもっと違うかたちを作りたい、ともおっしゃっていました。
ジュエリーをパッケージした瓶からは香りが
店長のレコメンポイントはパッケージ!でした。ジュエリーが入った透明の瓶をあけると内側から香りがたちのぼるという粋な演出。乙女心をくすぐりますねーギフトにも最適な時間を作り上げている点はさすがの5年目を感じさせました。コンセプトにもあったように、奥様に贈る、という実際の受取手のことをとても考えて作っているからかもしれません。
今回の受賞作や作家さんのお話をうかがって感じたことは、表現者のみなさんがこの地球上に溢れるさまざまなマテリアル(素材)の独創性を引き出しているということです。「ジュエリー」は一般的に宝飾品のことですが、美や価値を見つける目さえあれば、この世界にある全ての素材や物質はジュエリーたりえるんですね。ジュエリーとはマテルアル(素材)との対話からうまれる詩情。肌身にいつもポエジーを!これからもコンテンポラリージュエリーというジャンル、目が離せませんです。
編集後記
「AWRD→CAMPFIRE アワードからクラウドファンディングへ」第一弾ということで、プロトタイプを商品にしたり、プロジェクトの資金調達したりしたいー、というニーズにあわせてサービススタートしてみましたので、ぜひみなさまもご活用いただければ嬉しいです。
Written by
書いた人
kanamori kao
AWRD編集長
出版社リトルモア、ファッションブランドシアタープロダクツの創業プロデューサーなどを経て、AWRD編集長に就任。主婦・NPO法人ドリフターズ・インターナショナル代表・「悪魔のしるし」代表代行・マクラメ部部長など兼務。 After working fora publishing house LITTLE MORE and acting as a founder and creative Producer of a fashion brand THEATRE PRODUCTS, Kao is now Chief Editor of AWRD. Housewife, Director of the NPO Drifters International, Acting Director of Akumanoshirushi, Director of Macramé Department, among others.