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世界に誇るものづくり「MADE IN JAPAN」品質の裏側にあるストーリー/YAOYA PROJECT

2020/02/18(火)

インタビュー

2019年、これまで日本のものづくりを“裏側”から支えてきた八尾の事業者8社が、AWRDの共創プラットフォームを活用し公募で選ばれたクリエイターたちと共に世界の表舞台へ挑んだYAOYA PROJECT(ヤオヤプロジェクト)。その集大成となる製品展示イベント「PRODUCTS EXHIBITION - 8 STORIES -」が2020年2月19日から台湾で開催されます。

大阪中央部の東側に位置し、人口20万人を超える中核市、八尾市。昔から夏の風物詩として八尾河内音頭まつりが行われ、市内外からも多くの人々で賑わいをみせています。そんな豊かな文化を育み暮らしを支えているのが、高度な技術力と製品開発力を誇る「ものづくり」です。

第一弾となる台湾デビューを前に、YAOYA PROJECTを通して起きた化学変化や次なる未来図について、事業者として参加した株式会社オーツー代表取締役 梶原弘隆氏と企画開発部 岡島隆臣氏、そして審査で満場一致で選ばれたHamanishi DESIGN濱西邦和氏の3名に語っていただきました。プロジェクトを通して見えてきた、世界に誇るものづくり「MADE IN JAPAN」品質の裏側にあるストーリーをお届けします!

奇跡的な出会いからスタートしたものづくり

株式会社オーツー代表取締役 梶原弘隆

ー(AWRD編集部、以下略)どのような経緯でYAOYA PROJECTに参加されたのか、株式会社オーツー(以下 オーツー)さんから教えていただけますか?

(株式会社オーツー代表取締役 梶原弘隆、以下 梶原)弊社はBtoBに特化した椅子とテーブルの製造メーカーです。創業58年の歴史のなかで、金物工場からスタートし、今ではスチール加工の技術を活かした家具づくりを強みとしてレストランやレジャー施設、商業施設向けのコントラクト家具(法人向けの業務用家具)を展開しています。

これまで国内を主軸とした展開をしているなかで、海外展開を朧げながら考えていたときに、八尾市さんから「台湾を舞台にクリエイターとものづくりをするプロジェクトがあるから参加しませんか?」と誘われたんです。渡りに船というか、挑戦の場があるのであればチャレンジしようと参加を決めました。

CAP:株式会社オーツーが手がける製品。「こんな椅子が欲しい」というオーダーに合わせて企画立案、デザイン、製作に至るまでをワンストップでおこなう。

―YAOYA PROJECTでは、公募によって製品アイデアを採用し、そのクリエイターとの協働にものづくりを行うというものでした。デザイナーの濱西さんを選ばれたポイントはなんだったのでしょうか?

梶原:
公募の最終選考では、ファイナリスト5名が残っていました。そのなかで濱西さんのプレゼン資料を見て、家具には珍しい竹素材を使用するが面白いと思いましたし、正直なところ一番やりやすそうだなと思ったんです。笑

YAOYA PROJECTに応募した作品コンセプトシート

ほかに目をひく奇抜な作品もたくさんあったんですよ。でも、一番オーツー向きの、オーツーらしさというのを感じました。オーツーという会社のことを理解しようとしてくれる姿勢が伝わってきたんです。製品のストーリー性やオーツーとしてのものづくりの強みを出してくれている、理解してくれていると。フィーリングと言うんでしょうか、今では濱西さんに完全にハマってしまったという感じで、本当に奇跡的な出会いだと思っています。

―「一番やりやすそう」と言われた濱西さんですが、今に至るまでの経緯を教えてください

(デザイナー濱西邦和 以下、濱西)一番やりやすそうというのは初めてききました。笑
僕は前職が株式会社丹青社という空間プロデュースの会社に在籍していて、レストランや商業施設のインテリアを数多く設計していました。実はその頃にオーツー製品を扱ったことがあるんです。当時はそれほど家具に対しての知識も深くなかったので、空間に合う家具を、数あるカタログから選んで採用していて、そのなかの一つのメーカーがオーツーでした。

Hamanishi DESIGN濱西邦和

思いたったら即行動、フィリピン、デンマーク、日本へと

小さい頃に父親の仕事の関係で海外で生活していたこともあり、いつかは独立してグローバルに働きたいと思っていました。そんな思いを抱きながら丹青社に7年勤めて、30歳手前になった時、前々からの独立願望を叶えるため、先の仕事のあても人脈もなかったのですが、上司に「辞めます」と突然言って、正式に辞めた3日後には「英語だ!」と思い立ちフィリピンへ渡りました。3カ月くらい勉強すれば英語もマスターできると思っていたのですが、なんだかんだ1年間滞在していました。

― すごいバイタリティですね


その1年で次のステップについて考えていた時に、空間に合う家具もデザインしたいと思っているなかで、デンマークの職業訓練学校で自らデザインした家具を工房で作れるコースを知り、次は「家具作りだ!」と思いデンマークへ渡り半年間過ごしました。職業訓練学校にある工房は24時間制だったので、図面に落としたアイデアをすぐにカタチにできる環境でした。スケッチしてカタチにして手直ししてというのをひたすら繰り返していました。そこで家具に対しての知識も増えていったと思います。

デンマーク時代の工房
デンマーク時代に手掛けた作品



その後、日本に戻ってオフィスを構えて5年目になります。設立当時は年に1、2回のペースでグローバルアワードに応募したり、イタリアで開催される家具の見本市「ミラノサローネ」に自らデザインしたホーム家具を出展したり、海外での活躍の場を求めて積極的にアピールしていました。

その活動のなかで気づいたのが、実は日本国内でしっかりと実績を上げている人が海外企業から声を掛けられて活躍するスタイルが多いんじゃないかと。それなら日本でしっかり根を張りやっていこう、と決めた時にSNSから流れてきたのが「YAOYA PROJECT」でした。オーツーは既に知っていたこともあり、商業空間をデザインしていた経験と家具作りの知識が使え、さらに日本の企業と一緒に海外に挑戦できるならと思い応募しました。

日本と台湾の商流の壁。現地に行って営業しました(濱西)

―台湾において竹は、昔から建材から生活用品までと暮らしに密接して使われてました。その竹を活用したスツールをデザインされましたが、ほかのアイデアも応募されていたのでしょうか?

濱西:
デザインを絵に起こしたのは1個か2個なんですけど、応募したのはこの1作品です。台湾の歴史文化を尊重したプロダクトで、かつコントラクト家具にするにはどうしたらいいかと。コントラクト家具は、ホーム家具より強度や耐久性を求められるんです。更に工業製品にしていかないといけないので、そのへんの出来高を考えた上で可能性があるのは何だろう?と、1カ月ぐらいずっと頭の中に常に考えているなかで、一番ベーシックな竹に落ち着きました。

アイデアが採用されて、オーツーの工場に行った時に、工場の上のフロアにオフィスがあって、思いついたらすぐにカタチにできる環境が整っていることに感動しました。岡島さんのものづくりに関しての知識も素晴らしくて、こういう人や環境があるからこそクオリティの高いものづくりができるんだなと感じました。


―そんな両者の出会いを経てのものづくりから、台湾デビューにむけての現地でのフィールドリサーチを行った感想をお聞かせください。

(株式会社オーツー企画開発部 岡島隆臣 以下、岡島)海外に行くとなると、製品をつくって終わりではなく、権利関係も色々とやならければいけない事があるんです。台湾文化についての勉強はもちろんですが、意匠、商標についても国内よりもさらにシビアになったり、知的財産についての捉え方については随分勉強になりました。これまで甘く捉えていた部分もあったので、今まで自分たちが知らなかった事を学ぶ機会を頂けました。

株式会社オーツー企画開発部 岡島隆臣

濱西:台湾へ行く頃には、プロダクトはほとんど決まっていたので、後はどう売るかを考えていました。実は台湾は流通の仕方が日本と違うんです。日本では、製品を扱う商社があり、そこへ納めるとそこから設計会社などに広がるのですが、台湾では建築家が直接仕入れています。日本で言う問屋というものがないんです。なので台湾へ行った時には、現地の建築家や売り場のキーマンに会いに行って、「コントラクト家具を日本のメーカーが台湾に入れたいんです。金額はこのくらいで考えてます」まで、リアルな提案をさせてもらったりと、自分で営業をしてました。

台湾でのフィールドリサーチの様子

これからはストーリーを伝えたり、広めたりして、製品と企業を伝えていくチャレンジを一緒にしていきたい

―デザイナー自らが売り込むのは珍しいですね。チーム一丸となって家具を広めようという意気込みが伝わってきます。

岡島:
今回は会社としてのチャレンジというか、今までやったことのないことをやろう、というモチベーションで挑めたのが大きかったです。初めの頃は、工場の人たちから「これは強度がどうかな~?」という声も出ていたんです。でも「ダメモトでお願いします!」とお願いしてつくってもらったら、「結構いけるんや」と風向きが変わってきて、みんなのマインドが変わったんです。通常の製品づくりの場合は、クレームなどを恐れて安全な道を選んでしまうのですが、今回のように既成概念を取り払ったものづくりができたことは、企業全体の経験としても良かったです。

―社員の方のマインドが変わったというのは大きな出来事ですね、社長はいかがでしたか?


梶原:
これまでの外部デザイナーとの仕事も多く手掛けていました。その時はカタログに載せる商品をデザインしてもらい、僕らがつくるというものでした。濱西さんの場合は、コントラクト家具の未来とかを考えながら、これからのメーカーがどうすればいいのかを真剣に考えてくださっていて、その熱にとても感化されました。それにデンマークで家具づくりをされてきていただけあって、同じリテラシーで会話が進むというのは、ものすごくやりやすかったです。

岡島:
本当に濱西さんとの出会いが大きかったですね。BtoBばかりやっていると、想定内の相手に伝えることしか考えられなくなってしまって、世の中に発信するということをあまり考えてなかったんですね。濱西さんからは、それを一般消費者の方にも向けていくことが大切だと教えてもらいました。もちろん通常の流れは大切にしつつ、それとは違ったチャレンジをしてみたいと思えるようになったんです。

今回の台湾では、日本と商流が異なるということもあり、BtoCの路線も考えようと思っています。日本でもBtoC向けを見据えたものづくりへのヒントとアイデアも生まれてきました。これからは、ストーリーを伝えたり、広めたりして製品と企業を伝えていくチャレンジを一緒にしていきたいと思いますし、その成果を本業にも反映していきたいです。

濱西:
そうですね。ぼくらも家具業界を盛り上げるために、やっていくことはいっぱいあるけど楽しみだなと思っています。

―それは楽しみです!まもなく開催される台湾での展示について見どころなどありましたら教えてください

展示予定のプロトタイプ

濱西:オーツーの技術力や溶接の綺麗さ、正確さ、コントラクトならではの強度と耐久性の良さというのを、竹というきわどい素材を使いながらも成立させている、というのが見どころかと思っています。

通常、量産家具に天然素材というのは生産効率的な観点で嫌われる傾向があります。今回はあまりニーズとは合わない素材を、サスティナブルという意味も含めてチャレンジとして使っています。商業ベースの家具メーカーがサスティナブルを意識した商品開発、生産する理由をオーツーさんをきっかけに広まるといいなと思っています。使い捨ての家具も多いなか、コントラクトの家具でもこんなことができるんだというのをアピールできる機会になればと思っています。

梶原:
そのとおり!もうなにも付け加えることはないです。それに今後の話もかなり盛り上がってます。笑

濱西:僕らはものをつくるだけではなくて、伝えていく、広めていくこともしていかないといけないよねと思ってます。これからそれをやっていこうと思っています。製品はオーツーさんに任せれば間違いないので。笑

梶原:製品のクオリティを上げることは僕らの仕事なので、いかに濱西さんの頭の中で考えていることを具現化できるか、というのが僕らのチャレンジですね。YAOYA PROJECTでの経験を糧にして、いつかミラノサローネにオーツー×濱西ブランドとして出展できたらと思っています。本会場じゃなくてもいいんですけどね。笑

濱西:すぐできますよ!



プロジェクト情報

YAOYA PROJECT:https://awrd.com/award/yaoya-project

■台湾イベント情報

展示名:PRODUCTS EXHIBITION - 8 STORIES -
会期:2020年2月19日(水)〜3月2日(月)
会場:Loftwork Taiwan / FabCafe Taipei
華山 1914 文化產業園區紅磚區西 7-3 館
時間:11:00〜19:00


■株式会社オーツー:http://otu.co.jp/
BtoBに特化した椅子とテーブルの製造メーカー。鉄工所として創業したのち、パチンコ屋や雀荘などでよく使われた「ラッパ脚の椅子」の製造を主力に、業務用のファーニチャーづくりへと事業を拡大。カタログの商品に加え、オーダーを受け個別のデザインに対応することも。2011年に新ブランド「QUON」を立ち上げて以降、活躍のフィールドを世界へ広げつつあります。

■オーツー紹介ページ:https://note.com/yaoya_project/n/n01631f2b50ab

■濱西 邦和:
神奈川県生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科卒業後、(株)丹青社にて商業施設等のインテリアデザインに約7年間従事。その後、北欧(デンマーク)にて家具デザインを学び、2015年にHamanishi DESIGNを設立。2018年より日本工学院専門学校PD科、非常勤講師着任。
Hamanishi DESIGN:http://hamanishi.net/

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