自らを「楽天家タイプ」と認めるフレデリック・セイエ氏は、若い才能がより優れた革新的な素材を通じて、産業の環境フットプリント改善に貢献してくれるだろう、と期待を抱いているといいます。
イソップ アジアのジェネラル・マネージャー、フレデリック・セイエ氏が、「素材」をテーマとしたクリエイティブプラットフォーム「MTRL(マテリアル)」主催のマテリアルアワード「Material Driven Innovation Award2022(MDIA 2022)」に新たな審査員として参加します。
「MDIA 2022」は、革新的なマテリアル(素材)や製品、技術を扱うメーカーを対象とした、マテリアルから生まれる新たな意味を探るデザイン賞シリーズです。毎回、世界のトレンドや産業界、生活者のニーズに基づいたテーマを設定し、そのテーマに沿ったデザインアワードを開催します。初となる 2022年春のシリーズでは、人間の幸福と生活を向上させる「暮らしを Well-Being にする」をテーマにマテリアルの価値、可能性を探ります。
第一弾の審査員は、渡邊 淳司氏(NTT コミュニケーション科学基礎研究所上席特別研究員)、堀内 康広氏(トランクデザイン株式会社代表取締役/クリエイティブディレクター/デザイナー)、井高 久美子氏(インディペンデント・キュレーター)に加え、新たにフレデリック・セイエ氏の参加が決定しました。参加にあたり、セイエ氏にインタビューしました。
セイエ氏にとって人間のウェルビーイングは、間違いなく、環境から始まるものだといいます。
セイエ氏は「私たちの社会は成長に執着しており、世界規模で地球環境の破壊に日々加担しています。私たちは自分たちが望む分だけ快適に過ごすことができますが、将来私たちが住める惑星がなくなれば、それらは全て無意味です」と語ります。
新型コロナウイルス感染症状況下での「セルフケア」の需要の高まりについてセイエ氏は、「過去 2 年間で学んだ教訓は、私たちの生活がいかに私たちの身の回りに直接の影響を及ぼすかということ。現在環境に起きていることは、私たちの会社にとっても『非常に憂慮すべきこと』になっています」とコメントしました。
世界的に認知度の高いブランドになった今も、イソップは設立当初の謙虚な姿勢を変えていません。1980 年代後半、オーストラリア・メルボルンで美容師をしていたデニス・パフィティスが、自分の美容院のために化学製品だらけのヘアケア製品に代わる植物性の製品を求めたことが、イソップの始まりです。以降、イソップは大がかりなマーケティングキャンペーンや過剰な新製品発表を行わないだけでなく、製品から実店舗に至るまで、使用する全ての素材や原料に自然界との親和性と、持続可能なビジネスというユニークなビジョンを反映しています。
「私たちは長く持続し、年を重ねるごとに風合いを増す素材を選んでいます」とセイエ氏は話します。「私たちのストアは通常、非常に高い耐久性を持っています。これは私たちが考えを変えず、また営業する環境になじむようにデザインを構築しているからです」
「全てのストアにそれぞれのストーリーがあります」と語るセイエ氏にとって、ずっと変わらないお気に入りのストアの一つがイソップ京都店です。
イソップは慈善事業部門であるイソップ財団を通じて、コミュニティの構築やエンパワメントにも尽力しています。2017 年からは、社会から取り残されたコミュニティの人々に対する識字力向上プログラムや、先住民の生態学や宗教学的知識の保護に取り組む団体など、様々な文化的取り組みを支援しています。
6年にわたりイソップに在籍するセイエ氏は、しかし、イソップはロールモデルではないと断言します。イソップは会社として、特にプラスチック包装の分野において、環境負荷を減らすためにまだやるべきことがあることを理解していると、彼は主張します。特にプラスチック包装は、一部のスキンケア製品の処方の不安定さもあり、業界全体が頭を悩ませている問題です。
「私たちはパッケージにおける環境負荷を低減しようと努めていますし、炭素排出量の削減に努めていますが、決して最優秀とは考えていません。私たちは今、学びと改善の旅路の途中です」
セイエ氏によれば、だからこそ、多くの熱心な企業がどのような革新的なものが存在しているのかに関心があると言います。イソップは特に、真に革新的で有用なものを導入することで、単なるセールスポイントや競合優位性を超えて、産業全体の発展に貢献できると考えています。
今回の MDIA2022では、セイエ氏をはじめとする審査員たちは、「ウェルビーイング」という言葉だけを解釈するのではなく、素材の機能的価値、社会への影響、そして参加者たちが伝えようとする全体のメッセージにも着目して審査します。
素材の提出にあたっては、形状、段階、業界を問いません。また、世界中から応募が可能です。有形の素材、プロダクト、テクノロジー、サービス、その他あらゆるものが応募対象となります。このアワードが参加者たちにとって、人間のより良いウェルビーイングや生活との関連における素材への理解、そして「価値」の定性的な意味についての理解を深めるきっかけになればと思います。
セイエ氏は、今年のアワードでどのようなマテリアルが見られるか楽しみだと話します。「若い世代が私たちを手助けしてくれると願っています。本当にあらゆる業界の人々が、従来よりもはるかに環境にやさしい素材を見つけ、創り出してくれることを期待しています」
「まずは環境から始まります。そして自然や、私たちが生活する環境に調和し、それらに敬意を払った素材を手に入れることです。それがとっかかりであり、殻を破るために重要な要素です」
「Material Driven Innovation Award 2022」-人の暮らしを Well-Being にするマテリアル-は 2022年1月25日から3月7日まで応募を受け付けています。詳しくは、Material Driven Innovation Awardのページをご覧ください。