BLOG

かたちを削ぎ落とし、完成に近づける。ジュエリーアーティスト「Yuki Yoshioka」の限りなくシンプルな作品に込められた思い

2023/04/28(金)

インタビュー

クリエイターとプロジェクトをつなぐプラットフォーム「AWRD」のインタビューシリーズとして、アワードを通して活躍の幅を広げてきたクリエイターの方々にお話をうかがうシリーズです。今回は、「白金5丁目アワード」にも入選し、東京をベースに活動するコンテンポラリー・ジュエリーアーティスト「Yuki Yoshioka」さんにお話をお聞きしました。


華やかで可愛らしい、キラキラした宝石。ジュエリーという言葉からはそういった煌びやかなものを連想しがちですが、Yoshiokaさんの作る作品は一味違います。シルバー一色でまとめられ、シンプルかつ大胆なコンテンポラリージュエリー「neo(アルミハニカムを使ったジュエリー)」を中心とした作品たちは、私たちのもつジュエリーの常識や世界を広げてくれます。

これまでに、AWRDにて開催された「白金5丁目アワード」へご参加いただき入賞されています。入選作品の「seacret」は、身につけた本人にしか見えない位置にパールが仕込まれたブローチ。「素敵なモノを見た後の気持ちを、自分の中で大切にしていたい」というメッセージが込められています。

身に着ける人の背中をそっと押してくれるようなジュエリーを制作するYoshiokaさんに、制作についてや作品への思いを伺いました。

ーYoshiokaさんにはAWRDのプロジェクトに参加いただきましたね。

2018年に開催された「白金5丁目アワード」のジュエリー部門に、参加させて頂きました。

スイスのジュエリーデザイナーである、オットー・クンツリ先生のワークショップに参加した際に制作したブローチの作品「seacret」を応募したことで、優秀賞を頂くことができました。

初めて「賞」という形のものを頂けた嬉しさ、そして受賞作品をリターンとしたクラウドファンディングの実施、展示会場でのトークイベント等...当時は学生ながらに色々な経験をさせて頂き、沢山の刺激を受けた1年でした。

また、展示会場となったOUR FAVOURITE SHOPでは、その時のご縁から働かせて頂くことになり、今でも時々お世話になっています。

seacret | 白金後丁目アワード 優秀賞
seacret | 白金後丁目アワード 優秀賞

『KIGI x OFS presents 白金五丁目アワード』について
植原亮輔と渡邉良重によるクリエイティブユニット・KIGIが審査員となり3つのカテゴリーから作品を募集。お客様を含む「わたしたち」が大好きなお店になることを願い、OFS(OUR FAVOURITE SHOP)の考える文化の交流・発信の場として関わって来たクリエイターを各部門のコメンテーターに迎え審査を行いました。

受賞者には店頭での販売やイベント、展示を行うチャンスもあり。“OUR=わたしたち”と一緒に新たな価値を見つけ、OFS(OUR FAVOURITE SHOP)のある白金五丁目から発信していく。それが「白金五丁目アワード」です。

『白金五丁目アワード vol.1 - ジュエリー&クラフト』部門では、ショップでの販売や商品展開を目的としたプロダクトを募集しました。

白金五丁目アワード
『白金五丁目アワード vol.1 - ジュエリー&クラフト』部門

ー あの作品は、オットー・クンツリ先生のワークショップがきっかけだったんですね。オットー先生から影響を受けた部分はありますか?

オットー先生の作品には、ムダなものが無く、洗練されたデザインの中には見る人をハッ!とさせるような深いメッセージが込められています。単純にビジュアルが好みな部分もありますが、ジュエリーとしての価値や概念が変わった気がしました。

ワークショップでとってもチャーミングなご本人にお会いしてからは、作品だけではなく、"私もこんな人になりたい!"とさらにファンになりました。

オットー・クンツリ

オットー・クンツリは、スイスのジュエリーデザイナー。チューリッヒ出身。 1960年代に誕生したコンテンポラリージュエリーにおいてコンセプチュアルジュエリーの概念を打ち出した作家と言われている。2015年10月10日から12月27日まで東京都庭園美術館にてオットー・クンツリ巡回展が行われた。(Wikipedia)

オットー先生とのワークショップの様子
オットー先生とのワークショップの様子

ー学生時代からジュエリーデザインを学んでいたYoshiokaさんですが、いつ頃から今のような作品を制作されているのでしょうか?

コンテンポラリージュエリーと呼ばれるものの制作を始めたキッカケは、学生時代に受けた、ワークショップです。

"キッチングッズを使ってジュエリーを作る"という課題だったのですが、これまでいわゆる金属や宝石を使った制作にしか関わってこなかったので、身近なものがジュエリーの素材に生まれ変わることに衝撃を覚えたのを今でも覚えています。

ー Yoshiokaさんにとっての代表作を教えてください。

アルミニウムハニカムを素材として制作した「neo」というシリーズのジュエリーです。

学生時代の卒業制作に悩んでいた時期に、たまたま訪れた素材のイベントで初めて「ハニカム」というものに触れました。そこからその素材に夢中になってしまい、直接メーカー様へ相談に伺ってから5年...。現在も担当者さまには海外出展へのご協力や制作についてのアドバイス、美味しいご飯のご紹介まで沢山お世話になっています(笑)

そして、このneoシリーズは、スペインのファッションコンペ「BIAAF」や、ドイツ・ミュンヘンのクラフト国際公募展「TALENTE」への入選をし、初めて海外での様々な評価を頂くことが出来た作品でもあるので、大変思い出深く、今後も向き合っていきたいと思っています。

「neo」
「neo」

ー シンプルな形の中に作り手の思いやメッセージが込められているところ、Yoshiokaさんの作品にも通ずる部分を感じます。Yoshiokaさんの作るジュエリーたちは、シンプルながらも、一度見たら忘れることのない形やギミックが印象的です。作品の形やモチーフのこだわりなどはありますか?

私自身、装飾などを重ねていくとキリがないくらい余計な部分まで付け加えてしまう癖があるので、一度試作したものは別の日に新鮮な気持ちでみてみるようにしています。不要な部分は削ぎ落としていき、微調整を繰り返しながら、なるべくシンプルな形で表現が伝わるよう心掛けています。

特にモチーフや形状のこだわりは無く、見た人や持った人、身につけた人が気づいた時に"おもしろい"と思ってもらえるような遊び心を忘れずに取り入れています。

ー 日々新しい目で作品を見つめ直すことで、完璧に近づけているのですね。まさに職人技です。日々の制作で重視している部分はどんなところでしょう?

ひたすら手を動かしながら、進めていくことですかね。絵やデザイン画、製図を描くことが苦手なので...(笑) 制作していく上で、素材に触れながら手を動かしていく中で"この形、かっこいい!" や "この角度面白い!"等と決めていく部分が多いです。

あとは、驚きや発見があるデザインや仕掛け、コンセプトから逸れないことに気をつけながら日々制作しています。

ー 今表現したいことや、チャレンジしたいことはありますか?

何か大きなモノやコトに関わった制作をしたいです。

コンテンポラリージュエリーに出会ってから、ゴミをジュエリーとして身に着けたり、1人では着用ができないジュエリーなど、素材や技法よりもコンセプトに焦点を当てた作品や考え方にとても惹かれるようになりました。

私は普段、身につけられるサイズ、ある程度の耐久性を考慮したジュエリーを制作することを続けているのですが、いつか人間の身体のサイズに収まるものだけではなく、ジュエリーという概念が変わるような作品であったり、同じ形状を保ちながらではなく、触れると変化するようなパフォーマンスを含めて身につけられるような...もっと大胆にジュエリーの美しさやパワーを表現できるような作品を残せたらいいなと思っています。

あとは、日頃は1人でひっそりと制作をしているのですが、今年からは色々なジャンルの方と一緒に考えたり、意見を交換しながら制作をしたり、積極的にコラボレーションを行っていきたいです。

ー 今後、展示などのご予定はありますか?

6月24日から7月9日まで、名古屋の「Fuligo」というジュエリーのギャラリー兼ショップで個展を開催します!

2023年は、他にも国内での作品発表の機会がいくつかある予定ですので、Instagram等でのお知らせをご覧頂けますと嬉しいです。

ー ジュエリーという概念を超越したYoshiokaさんの作品を見られるのが、今から楽しみです。ありがとうございました。

Yuki Yoshioka

Profile:

Yuki Yoshioka
コンテンポラリージュエリーアーティスト/ブランドプロデューサー

1994 奈良県生まれ
ヒコ・みづのジュエリーカレッジ在学中、白金5丁目アワードにて優秀賞受賞。
卒業制作の際に手掛けたアルミニウムハニカムのジュエリーシリーズの制作を行い、卒業後は海外での発表を中心に活動。
AWRDでの受賞の際に参加したクラウドファンディングをキッカケに商品としてのジュエリー制作にも興味を持ち、2020年ジュエリーブランド「UKIYOSIOKA」を立ち上げる。
現在、ブランドの運営とアーティスト活動をへして行う。

Links

Yuki Yoshioka Instagram
https://instagram.com/___yukiyoshioka

UKIYOSIOKA(ユーキヨシオカ) Instagram
https://instagram.com/___ukiyosioka

AWRDプロフィールページ
https://awrd.com/creatives/user/2074630/profile


編集:AWRD編集部

Related Posts

前へ