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心を躍らせるアイデアで笑顔を創り出す、ジャンルを超えた「藤原光平(SEINIKAKU DESIGN)」のデザイン

2024/02/22(木)

インタビュー

クリエイターとプロジェクトをつなぐプラットフォーム「AWRD」のインタビューシリーズとして、アワードを通して活躍の幅を広げてきたクリエイターの方々にお話をうかがうシリーズです。今回は、「自然のやさしさを探るAWARD」で準グランプリを受賞した、デザイナーの藤原光平さん(SEINIKAKU DESIGN)にお話を伺いました。


フリーランスデザイナーとして活躍している藤原光平さんは、平面から立体・空間や映像までマルチに制作活動を行っています。ジャンルの垣根を超えた藤原さんの作品たちは大人も子供も楽しめるような遊び心のあるアイデアが印象的で、アウトプットそのものから、藤原さん自身が制作を心から楽しんでいる様子が感じ取れます。

「自然のやさしさを探るAWARD」の受賞作品である「そよ風を感じる風車」は、コロナウイルス流行時に強いられた「換気」を楽しくできれば、という思いのもと作られた作品です。誰かの目線に立って考案される藤原さんのアイデアは、触れた人の心を優しく動かしてくれます。

今回のインタビューでは、そんな藤原さんのアイデアの源泉について伺いました。

ー藤原さんの作品は「自然のやさしさを探るAWARD」で準グランプリを受賞しました。参加と受賞を経て、いかがでしたでしょうか?

自分の作品に対して著名な審査員の方々によるコメントがいただけたことで、自分の作品が客観的にどう見られ、どこを評価されているのか知ることができ大変貴重な機会になりました。

受賞をきっかけに一人でも多くの方に作品を知っていただく機会を得られたことも嬉しかったです。

また、「自然のやさしさを探るAWARD」は受賞作品以外の応募作品も閲覧できるので、自分が思いつかなかったアイデアや各クリエイター独自の着眼点を見ることができ、良い勉強になりました。同じテーマの問いに対して他のクリエイターたちがどのような視点を持って回答しているのかが見ていて参考になるものばかりで、発見や気づきが多々あります。コンペとは個人個人での応募といった形が基本ですが、どこかグループワークにも似た、様々な方の意見を踏まえた上での自分の提案を見つめ直すような、新しいコンペティションの形だなと感じました。

「自然のやさしさを探るAWARD」応募作品一覧:https://awrd.com/award/sozo-yasashii/works

「そよ風を感じる風車」

ー「自然のやさしさを探るAWARD」の受賞作品「そよ風を感じる風車」について教えてください。

「そよ風を感じる風車」は、2020年に新型コロナウイルスが流行した際に、デザイナーとして世の中に向けて何かできないかと思い考えついた作品です。

この作品は、「爪楊枝」「クリップ」「折り紙」「セロハンテープ」という、どの家庭にもある道具だけで簡単に製作できます。作った風車を窓際に置くことで、自然的に、あるいは偶発的に起こる日常に潜む些細なそよ風を可視化し、感じることができるプロダクトです。

ー「身の回りのもので簡単に作れる」というアイデアやテーマは、どのようにしてインスピレーションを得ましたか?

コロナ禍の際、外出自粛/在宅業務期間を強いられ、「おうち時間」が大幅に増えました。「換気をしてください」という呼びかけの声が至る所で聞こえるようになった時に、それを義務的でなく楽しく自主的に行えたらいいなと思い、「家にあるもので誰でも作れる風車」という着地点に至りました。「換気をしよう」というきっかけの第一歩を作れればいいなという思いを込めて制作を始めたことが、自然と「身の回りにあるもので作れる」というテーマに結びついたのではないかと思います。

ー藤原さんは、AWRD以外でのコンペティションでも多く受賞していらっしゃいます。コンペに挑戦するモチベーションはどういった点から湧き出ていますか?

コンペティションは受賞の有無に関わらず、テーマに対して考え、自分なりに答えを見つけるのが好きで楽しいと感じます。テーマを与えられてデザインやアイデアを考えることが好きなので、コンペティションに限らずいつも思考を巡らせています。問い(テーマ)に対して大喜利のようにデザインで答えるというのが自分にとって楽しく、興味があるものには積極的に挑戦しています。



ー参加そのものを楽しんで臨んでらっしゃるんですね。参加した後で、良かったと思うことや変化したことはありますか?

受賞できなかったものもたくさんありますが、数をこなす中でテーマやお題に対してどのようなものが求められているのかなんとなくわかるようになってきました。そういう部分は、クライアントワークでも生きていると感じます。

クライアントワークでたまに、コンセプトなどが何も定まってない中で漠然としたご依頼をいただくこともあり、そういった時にそんな「お題」に対して自力で答えを探って提案していけるようになりました。それはコンペティションをこなす中で培ったものではないかと感じます。

「白黒つけないオセロ」

ー制作そのものを始めたきっかけなどはありますか?

小さい頃から手を動かして物を作ることは好きでしたが、明確に制作をし始めた実感があるのは専門学校に入った一年目です。全分野のデザインを学びながら全分野で課題が出されるのですが、全て楽しく制作をしていたのを覚えています。課題だけでは飽き足らず、課題の先を行く提案や、自身で考えた制作なども同時に行っていました。今考えてみるとそういったことがそのまま仕事を始めるきっかけになったと思います。



ー藤原さんはグラフィックやプロダクト、映像作品など様々なジャンルを横断しアウトプットを制作していらっしゃいますが、共通して意識している部分などはありますか?

各領域を分野として意識しすぎないようにしています。自分の中で、それぞれの領域は分野ごとに分かれているという認識より地続きでつながっているような感覚で、どの分野のデザインをしていても他領域のことも常に頭で考えながらワン・ストップにデザインを完遂できるように意識しています。



ーそのほかに、日々の制作の中でもっとも重要視しているところやこだわりはありますか?

まずは、実現可能か不可能かは考えずに多種多様なアイデアを出してみることを大事にしています。その結果、非現実的なアイデアがあったとしてもそれが何かのヒントになったり、そこから生まれるアイデアやデザインが最終的なアウトプットに繋がることも多いです。

「考え方」としての視点では、自分は「ロジック」と「エモーション」を全制作の中で意識しています。論理的な思考からのクリエイションが大事になってくる制作もあれば、時には感情的な心に訴えかける直感的な要素や美しさも重要な場合があります。それらの使い分けや比率がデザイン制作の中で重要だと感じているため、制作に応じて使い分けられるよう意識しています。

「stool SIZE」

ー1番思い出深い作品を教えてください。

紙でできた椅子「stool SIZE」です。

卒業制作の作品なんですが、平面である「紙」を使って、実際に座れる強度を持つ椅子(スツール)を作ろうというコンセプトで制作しました。紙の「折り」によって生まれる強度と美しさに着目した作品で、実際に紙に5つの「折り」を入れるだけで人を支える強度を出すことに成功しました。折り紙から着想をして、試行錯誤を繰り返し、全て手作業で一つの椅子(スツール)を形にしました。



ー「stool SIZE」や「そよ風を感じる風車」など、既存のプロダクトに異素材を組み合わせたり、新たなアイデアを加えていて作品に遊び心が感じられます。そのようなプロセスは、どういった視点から生まれるのですか?

何事にも難しく考えずに、子供のような感覚でアイデアを出すことが多いからかもしれません。

非現実的であっても「こんなものがあったらいいな」という感覚で思いついたことを、一旦全てアイデアの一つとして取り入れています。「stool SIZE」であれば「一枚の紙が椅子になって座れればいいな…」みたいな感じです。

それをどう実現できるかは後になって試行錯誤をすることになるのですが、そこが結果として遊び心につながっているのかもしれません。



ーワクワクするアイデアをたくさん持ってらっしゃるんですね。そういった発想は、どんな場面で見つけることがありますか?

日常的にみる、美しく自然的に起こる現象を見たときには、どんなものにも影響を受け、制作意欲が掻き立てられます。例をあげると、窓を開けた際に入ってきた隙間風でカーテンの靡く姿が美しいなと感じたことから「風の可視化」の表現を思いつき、「そよ風を感じる風車」が生まれたりしています。そういった現象の一つ一つから影響を受け制作をすることは多々あります。



ー制作活動を続ける上で一番大切にしている、もしくは気をつけていることはなんですか?

あまり意識したことはないですが、諦めが悪いことは重要かもしれません。実現したいアイデアや面白いと思った想像を現実にするにはどうしたらいいか、最後まで粘って考えています。自力では難しいことは専門の方に話を聞きに行ったり、協力を仰ぐことも時には重要だと感じています。想像していたものが試行錯誤の末に形になった時の嬉しさが、制作活動を続ける一番のエンジンだと思います。



ーアイデア実現の強いモチベーションによって、藤原さんの作品が生み出されているんですね。アイデアやデザイン考案の手法は、クライアントワークとアワード応募と時とでは違うのでしょうか?

それぞれ「自分視点」か「相手視点」かで違いをつけています。アワードに応募する作品では、ある意味エゴイスト的に自分の思ったように制作をすることができる反面、クライアントワークは依頼してくださった方の視点に立ち、一緒にデザインを作り上げるイメージで制作しています。

時には、後者の場合でもクライアントが潜在的に求めていることを汲んで提案することもあり、その際はコンペ形式の制作方法に近いと感じることもあります。


ー今後、コンペやアワードへの応募を検討してるクリエイターにメッセージをいただけますでしょうか。

難しく考えずに、まずは興味のあるコンペやアワードのテーマを自分なりに解釈して考えてみるのがいいと思います。その中で自分が面白いと思ったアイデアやひらめきに出会えた時に、初めて応募を検討するといった流れでも十分に有意義な時間を過ごせると思います。

いちばん大事なのは思考を巡らせることだと思うので、考えることはやめずに、自分なりに咀嚼をして、いいアイデアが浮かんだときは積極的に応募してみてはいかがでしょうか。


ー展覧会や新商品などお知らせがありましたら教えてください。

現在、紙で作ったオリジナルの指輪を販売しています。糊剤と着色剤を混ぜたものを紙同士の接着に使用し、削り出しによって表情を作っていく技法を考案・使用しています。一つとして同じ模様のものは無い自分だけの個性を持った指輪です。紙とは思えない程の強度と硬度になっており、日用品としても気兼ねなく使用できますので是非みてみてください!

オリジナルブランド「けはひ」https://seinikaku.com/kehahi


ーこれからも、藤原さんならではのアイデアが詰まった作品が拝見できるのを楽しみにしています。ありがとうございました。

藤原光平/SEINIKAKU DESIGN

Profile:

藤原光平/SEINIKAKU DESIGN
デザイナー
1997年福岡県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後2020年よりSEINIKAKU DESIGNとしてフリーランス活動を開始。
製品デザインやブランド設計、またはそれらに付随するロゴデザインやパッケージデザインなど、ジャンルを問わずワン・ストップでデザイン活動を行う。

Links

SEINIKAKU DESIGN ウェブサイト

https://seinikaku.com/


AWRDプロフィールページ

https://awrd.com/creatives/user/10575711



編集:AWRD編集部


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