クリエイターとプロジェクトをつなぐプラットフォーム「AWRD」の新連載シリーズ「AWRD meets GLOBAL CREATORS」( #AMGC )。
「新たな感性」をテーマに、デザイナー、アーティストなどさまざまなフィールドで活躍する世界の気鋭クリエイターにスポットをあて、創作やその国ならではのカルチャーに触れていきます。
7回目は、ポップアーティスト、シンガーソングライター、アートディレクター、ファッションデザイナーとして幅広く活躍されているアーティスト、静電場朔(せいでんば さく、英語名:Diàn)さんです。
中国・北京に生まれ、幼少期をアメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカなどで過ごした静電場さんは、現在、東京を拠点に活動しています。多文化的な視点と独自の世界観をもとに、音楽・アート・ファッションといったさまざまなフィールドで表現を続ける静電場さん。今回は、その創作の裏側にスポットを当てお話を伺います。
ー 静電場さんは1つのジャンルに留まらず、ミュージシャンやアーティスト、そしてモデルなどあらゆるジャンルでの表現活動をされています。それぞれどのように棲み分けをされていらっしゃいますか?
私の創作はすべてどこかで繋がっていて、「私」という一つの存在を中心に広がっています。それぞれの分野での活動も、実はお互いに支え合っていて、いくつかのスキルがないとできないことも多いです。
何かに取り組むときは、その世界にどっぷり浸かって、その分野のプロとして集中します。
そのため、自分が違う分野の仕事をしている時、いくつもの人格が分かれたり、一つにまとまったりするように感じることがあります。

ー 中国の大学でアニメーションを専攻されていらっしゃいました。どのような経緯で現在の絵画や音楽などの多岐にわたるアウトプットに至りましたか?
大学では美術大学でアニメーション監督を専攻していたので、絵を描くのは基本的なスキルでした。
アニメーションを作るには単純に絵を描くだけではなく、脚本や絵コンテ、演出、セリフを加え、さらに音楽や音の演出を組み合わせることで、作品の世界がもっと豊かに広がります。
アニメーションを作るには、そのような様々なスキルが必要なので、気づいたらその延長線上でどんどん幅が広がっていって、今のように色々な分野で表現するようになりました。
ー 静電場さんの絵画には、ご自身を投影したような愛らしいキャラクターが多く登場されています。どのような思いで制作をされていらっしゃいますか?
創作するときは、「自分の姿を投影しよう」と思っているわけではなくて、むしろ「自分とはまったく違う存在を生み出したい」という気持ちのほうが強いです。キャラクターの原型や仮想の友達を作る中で、イマジナリーフレンドのような 架空の友達や存在を心の中で想像して、共に考えたり感じたりするような概念に出会いました。それは、心の中で感じる思念をカタチにするようなものです。彼らは「私でもあり、私じゃない」存在で、私はまるで電波を受信するアンテナみたいな感覚です。彼らからのシグナルをキャッチして、自分が持っているスキルを使って表現しています。

ー 静電場さんの出身国である中国と活動拠点でもある日本とで、アートや音楽に関して違いを感じることはありますか?
私が生まれた北京は、長い歴史を持つ首都だからか、なんとなく「深掘り」する文化が強い気がします。伝統的なものが根付いていて、海外のアートや音楽シーンもありますが、主流にはなりにくいです。。
一方、東京にいると、毎日大量の情報の洪水に飲み込まれる感覚があります。しかもそれは日本だけではなくて、世界中のものが集まってきているので、まるでカルチャーのハブみたいな場所です。
ざっくり言うと、北京は「縦に掘る」、東京は「横に広がる」という感覚で、そこがすごく面白いなと思います。
ー 静電場さんにとって、クリエイティブなインスピレーションを得るためのおすすめのスポットがあれば教えてください。
私は、ほとんどの時間はアトリエにこもって創作してるんですが、外でインスピレーションをもらうなら、神保町の古書街がとても好きです!過去の文化やアートを発掘するのが楽しくて、行くたびに「え、こんなのあったの!?」っていう出会いがあります。。
最新の情報はインターネットでいくらでも拾えますが、昔の時代のヤバい作品とかは、実際に歩いて探さないと見つからないのが面白いところです。まさに“リアル発掘系インスピレーション”という感じです!

ー 表現活動を行う上で大切にされていることはどのようなことでしょうか。
私がいちばん大事にしてるのは、「ちゃんと100%自分を表現できてるか」ということです。
今の時代って、私たちはまるで電波を受信するラジオみたいに、いろんな情報やノイズを浴び続けていますよね。「これが世間的にいいとされてる」とか、「これがウケやすい」など、気づいたら大きな美的システムに巻き込まれてたり、「あれ、なんでこれ好きになったんだっけ?」という感じで知らないうちに洗脳されていたり…。
そんな、まるで火鍋みたいにカオスな世界の中で、自分の味をちゃんとキープする(それが美味しくても、不味くても)ことは、結構チャレンジだなと思います。
ー 今後チャレンジしたいことなどありましたら教えてください。
新しいチャレンジは、今年5月に代官山 蔦屋書店で開催する個展です!代官山 蔦屋書店での展示は2回目の開催で、前回は伝統絵画とネオンを合体させた作品を展示したのですが、今回はさらにレベルアップして、絵のストーリーにゲーム的な要素を仕込もうと思っています。自分も観る人も「おおっ!?」となるような、新しい体験を作れたらいいなと思っています。
それから、今年は日本や中国で音楽のライブも開催しますし、初の中国語アルバムもリリース予定です。どんな感じになるか…楽しみにしていてくださいね!
Profile:
静電場朔
中国北京市生まれ。ポップアーティスト、歌手、アートディレクター、ファッションデザイナー。
中国の放送やメディアに関する最高学府である中国伝媒大学のアニメーション専攻卒業後、2012年東京に拠点を移す。 その後、デジタルハリウッド大学大学院デジタルコンテンツ専攻を卒業。独特の感性で幼い頃から絵画や音楽等の芸術に親しみ、2018年から東京、上海、北京で個展を開き、自作のキャラクターをインターナショナルに展開する一方、その風貌から若者のファッションリーダーとして、自身もモデルを兼ねて活躍。2017年に音楽ユニット「Question Children(問題児)」を立ち上げ、2018年には「Yellow Magic Carnival (ティン・パン・アレイのカバー、作詞作曲:細野晴臣)」で日本デビューを果たした。キャラクタークリエイターをはじめミュージシャン、モデル、ポップアーティストとしてアジア各地でマルチに活躍中。
Links
Instagram:https://www.instagram.com/diansaku/
YouTube: https://www.youtube.com/@dian-official
編集:AWRD編集部