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アーティスト・原裕子/連載「AWRD meets GLOBAL CREATORS」 Vol.6

2025/01/27(月)

#AMGC

クリエイターとプロジェクトをつなぐプラットフォーム「AWRD」の新連載シリーズ「AWRD meets GLOBAL CREATORS」( #AMGC )。

「新たな感性」をテーマに、デザイナー、アーティストなどさまざまなフィールドで活躍する世界の気鋭クリエイターにスポットをあて、創作やその国ならではのカルチャーに触れていきます。

6回目は、KIGI×OFSとAWRDの共同で開催したクリエイティブアワード『白金五丁目アワード』アート部門でグランプリを受賞したアーティストの原裕子さんへのインタビューです。

砂状の素材「シャモット」を高温で焼き固める独自の技法を駆使し、自然や空間と向き合いながら生み出す彼女の作品は、形にとらわれない自由な表現の中に、どこか儚さを感じさせる独特の魅力を放っています。

2025年2月にOFS GALLERYで開催される個展を前に、制作への想いやインスピレーションの源についてお話を伺いました。

ー 2018年に開催された『白金五丁目アワード』の受賞作品について、改めて教えていただけますか?

『白金五丁目アワード vol.3 - アート』部門で受賞した作品「The scene3」は、まだ新しく見つけた素材の扱いに苦戦しながらも、なんとか立体にしたいと、もがいていた時期に出てきた作品です。その為、具体的な何かというよりは探りながら出てきた形です。その状況を風景「The scene」と例えて名付けました。

その後、アート部門のグランプリを選ぶためのファイナリスト展へ出品するために更に作品を昇華させた「ゆくりめく」は目を瞑った際に浮かびあがる小さな光のような、まだ言葉にもならない、アイデアの小さなきっかけが壁から浮かびあがってくる様子をあらわした、儚く、弱い存在の作品です。

この時の「ゆくりめく」をきっかけとして生まれた作品を、今回の個展で発表します。

ゆくりめく/ ceramics / 2019 /上 d15 w5 h18 下 d5 w20 h22 (cm)

砂状の素材「シャモット」を高温で焼き固めるという独自の技法を用いた制作活動をされていますが、その技法を始めたきっかけを教えてください。

大学生の時、「描く→立体」という課題がありました。その課題で、私はパステルで描いたドローイングをきっかけに土で形をつくりましたが、立体にすると底面があり、重力が存在し、輪郭があるという、当たり前のことに不満を感じました。その思いがずっと根底にあり、「やわらかい」「軽やかな」やきものを作りたいと考えて素材を見つめなおし、2016年にシャモットを用いて制作を始めました。

決まった形を作るのではなく「作りなれない」環境下に自分を置きながら作品制作をされている原さんですが、そのようなアンコントローラブルのなかでも大切にしていることをお聞かせください。

「作りなれない」というのを具体的に説明すると、完成時に表になる面を、あえて見えないように裏返しで作るということです。そうすることで、目先だけで判断せずに形を探れると考えています。窯に作品を入れて、焼成後に初めて表側が見えます。時に、受け入れることが難しいハプニングもありますが、素材の特性を頼りにして、見えてきた形に柔軟に反応することを大切にしています。そうすることで、私がもとめる「やわらかいやきもの」に近づけると信じているからです。

ゆくりめく / ceramics / 2021 / d15 w20 h27 (cm)

2月にOFS GALLERYで開催される個展「むこうがわを視る」では、パンデミックを機に制作を始められた「窓」シリーズを中心に新作も展示されます。ウイルスという「目に見えないもの」と対峙したとき、新たなお考えや気づき、作品づくりへの変化などはありましたか?

計り知れない事態に、多くの人がやり場のない思いを抱えていたと思います。孤独感や不安感を人々が抱えることで世界が暗くなっていくことに、ウィルスよりも恐怖心を感じていました。特に感染者に対しての罵詈雑言など目に見えない相手への想像力の欠けた反応に心を痛めました。

そうした日々に私自身も内にこもることで感じた、内と外の境目は、「窓」をモチーフとして扱い始めたきっかけにもなりました。

日本に生まれたことや日本の文化は、作品づくりに影響を与えていると思いますか?

日本の文化が自分に対してどのように影響を与えているかは、アメリカでのレジデンスに参加するまでは考えてきませんでした。しかし、日本では独自のやきもの文化が根付いているからこそ、我々には素材としても身近で、日常品から芸術表現へと発展してきたのだと考えるようになりました。そうした日本に生まれたからこそ、私はやきものを自身の表現として選択することができたと思います。多文化社会のアメリカで他分野のアーティストと対話したからこそ気が付くことができました。

あたりうく/ ceramics /2020 /d5w17h28(cm)

原さんにとって、インスピレーションを得るためのおすすめのスポットはありますか?

特定の場所はありません。旅行によくいきますが、その道中での電車や飛行機を待っている時間などに考え事をしていると、ふと閃くことが多いです。

普段とは違う環境に身を置くことで、五感がより働くことが理由かもしれません。

今後チャレンジされたいことなどありましたら教えてください。(展示やイベント情報などもありましたらお知らせください)

他の分野の人と展覧会を企画してみたいです。作品が空間にもたらす影響を考えて展示を構成することは自分の個展でも意識して行ってきたことではありますが、他の素材の作品とどのようにお互いに共鳴していくかも楽しみです。

2025年2月13日(木)より、OFS GALLERYにて個展「むこうがわを視る」を開催します。

本展では、2018年にAWRDで開催された「白金五丁目アワード」でグランプリを受賞後、 パンデミックを契機に制作を始めた「窓」シリーズを中心に、窓越しに垣間 視る自然の「横顔」をテーマに制作した新作を発表します。

Profile:

原裕子

アーティスト。神奈川県出身。多摩美術大学にて、やきものを学ぶ。砂状の素材「シャモット」を高温で焼き固めるという自身で見つけた技法をもとに制作活動を行っている。

photo by Mick Park

Links

Website:https://www.yukohara.com/

Instagram:https://www.instagram.com/hara_yuko_ceramics/

AWRDサイト:https://awrd.com/creatives/user/4109697/profile


KIGI x OFS presents 白金五丁目アワード

https://awrd.com/series/shirokane_award

KIGI x OFS presents『白金五丁目アワード vol.3 - アート』部門 結果発表!

https://awrd.com/award/shirokane_awrd_vol3/result


編集:AWRD編集部

■イベント情報


Yuko Hara exhibition「むこうがわを視る」

会期:2025年2月13日(木)一2月24日(月)

時間:12:00-20:00(展示最終日は18:00まで)

close: 火・水

会場:OFS GALLERY

主催:OUR FAVOURITE SHOP株式会社

WEB:https://ofs.tokyo/gallery/yukohara/

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