5名のクリエイターと、最新式刺しゅうミシンに初挑戦
こんにちは、AWRD編集部の岩崎です。
ものづくり実験シリーズ「Make it Yourself」から、新しい取り組み「MiY Lab」がスタートしました。MiY Labは、クリエイターがさまざまなFabマシンを試しながら、文字通りものづくり実験をする活動です。
今回は「Make it Yourself #02 Make it Wappen!」と連動して、ブラザーの最新式の刺しゅうミシン「PR1000e」を使った実験。
5名のクリエイターが、だれでもカラフルな刺しゅうのアートワークを制作できるハイテクマシンを使い倒します!
参加メンバー
皆川めぐみさん(デザイナー)http://fabandcraft.com/
江村史子さん(デザイナー)
河原奈苗さん(イラストレーター)http://www.barbaratics.com/
タカヤママキコさん(イラストレーター)http://makikotakayama.com/
小林ランさん(グラフィックデザイナー、イラストレーター)http://www.ranwonder.net/
絵を描くように縫う刺しゅうマシン
まず、編集部スタッフのさちこさんが、刺しゅうサンプルを見せながら機械刺しゅうの特性やPR1000eの基本機能を解説します。
デジタルものづくりカフェ「FabCafe」クルーでもあるさちこさんは、この企画のためになんとゼロからPR1000eの使い方を勉強・練習しました。
こちらが、PR1000e。私たちが知っている家庭用のミシンとはまったく違う姿です。
一般的な刺しゅうミシンでは、複数の色を刺繍するのに毎回上糸(うわいと)を設置し直す必要がありました。PR1000eは、10種類の糸を一度に刺しゅうできる画期的なマシン。JPEGやAIなどのデザインデータをもとに、まるで糸で絵を描くようにスムーズに刺しゅうできるのです。
刺しゅうミシンのステッチを使い分ける
ステッチの種類や糸密度を変えるだけで、図案の表情は変わります。PR1000eは、たくさんのバリエーションのステッチの中からえらぶことができ、全て専用ソフトを使ってかんたんに設定できます。
下の「自転車に乗ったおじさん」の作例をご覧ください。
黄色い服のステッチ「タタミ縫い」は、フラットな印象になります。同じ図案でもピンクの服のほうが「サテン縫い」で、より立体感が出ます。糸の密度を高めると、刺しゅうの厚みがでてさらに立体的に見えるのです。
さらに、PR1000eのみどころは、ミシンとしてはじめて高精度なカメラを搭載していること。狙った位置を正確に縫うことができるんです。たとえば、プリントにステッチを重ねて平面と立体でコントラストをつける…なんて表現もできるんです!
そんなハイテクなマシンと「テクスチャ」「光沢」「立体感」といった、刺しゅうならではの表現をどう活かすか? 5名のクリエイターによる実験、スタートです。
まずは、データづくり
刺しゅうミシンの作業ステップは、以下のとおり。
1. AI → SVG形式で刺しゅうの元データを作成
2. 専用ソフト「刺しゅうPRO10」で刺しゅう用データに変換
3. 「刺しゅうPRO10」でステッチや糸密度などを設定
4. ミシンデータを転送、縫う!
さあ、機械刺しゅうの特性を理解したところで、さっそくデータ作成タイムです。
こちらは手描きイラストの線をAI形式に直し、きれいにしているところ。細かい作業です…。
データが出来上がった人から、刺しゅう用ソフト「刺しゅうPRO10」にデータを取り込みます!
こちらは、小林ランさんの作品を刺繍データに変換したところ。ランさんは、複数のステッチを組み合わせてみます。
AIデータを読み込んだうえで、糸の色を選択・配置。ステッチの種類や糸密度も設定した状態です。このくらいの調整であれば、10〜20分程度で完了します。
「刺しゅうプロ10」は、立体的に刺しゅうのイメージを表示してくれるので仕上がりをイメージしやすいのです。ビギナーからプロフェッショナルまでわかりやすくサポートしている、PR1000eの強い味方です!
「データ」から「刺しゅう」へ
試し縫いに、ワッペンをつくってみよう! ということで、不織布のワッペン芯材に直接縫い付けてみたところ、目のあたりの生地が破れてしまった…。ちゃんと布を充てないとダメなんですね。
後日、編集部が同じデータを帆布に縫ってみたら、こんな感じの仕上がりになりました。
「ピンク=たたみ縫い」、「水色とオレンジ=サテン縫い」、「赤=プログラムたたみ縫い」を組み合わせています。水色とオレンジが少しプックリしているのですが、分かりますか? ランさんは、この刺しゅう図案を白いシャツのワンポイントにするそうです。
さらにランさんは、UVプリンターと刺しゅうを組み合わせるという、PR1000eの機能をフルに使った作品にもチャレンジします。
機械刺しゅうの得意をいかす
次に、デザイナーの江村史子さんによる実験を見てみましょう。
普段から1歳の娘さんのために洋服やおもちゃなどを手づくりしている、根っからのものづくり好きな史子さん。今回の実験では、刺しゅうミシンを使って手づくりのドレスにつけるアップリケや、子どものためのおもちゃをつくります。
そしてこちらが、今回刺しゅうした図案。きれい!
手刺しゅうでは綺麗に仕上げるのが難しい直線・曲線を活かした、まさにマシンならではの図案です。
羽の部分には、たたみ縫いのうえにサテン縫いを重ねるという、初心者とは思えないテクニックも。これは、出来上がりが楽しみです。
ものづくり実験はつづきます!
次回は、タカヤママキコさん、河原奈苗さんによる「イラスト作品を刺しゅうで表現」するチャレンジや、ランさんと史子さんの実験の「その後」をお届けします。どうかお楽しみに!