BLOG

広島の事業者と全国のクリエイターがオンラインでつながる ーーHIROSHIMA DESIGN CHALLENGE 事業者プレゼンテーション

2021/05/13(木)

レポート

文:吉澤 瑠美 / 編集:AWRD編集部

広島県内の事業者がデザイナーとタッグを組み、新たな製品やサービスの開発に挑戦するプロジェクト「HIROSHIMA DESIGN CHALLENGE」。デザインパートナーの募集にあたり、2021年4月22日に参加7事業者のオンラインプレゼンテーションを開催しました。

「いい街にとって何が必要で何が不要なものか」

審査員長を務める深澤直人さんは、本プロジェクトへのメッセージの中でこう語りました。「デザイン」は単に色形のみに使われる言葉ではなく、新規事業開発や経営にも領域を広げ、ポジティブにもネガティブにも社会を変えうる概念となりつつあります。私たちは今、デザインの力を使って何ができるのでしょうか……?

本記事では、7事業者のプレゼンテーションの様子をレポート。当日イベントに参加できなかった方もぜひご覧ください。

HIROSHIMA DESIGN CHALLENGEとは

カミハチキテル-HEART OF HIROSHIMA-

広島市を代表する繁華街、紙屋町・八丁堀エリアの更新と活性化を軸に活動する任意団体「カミハチキテル-HEART OF HIROSHIMA-」では、空きスペースを活用する商業空間のデザイン案を募集。百貨店の壁面や店舗の裏手など、活用の余地がある空間を市民の展示・販売スペースとして活用する什器のアイデアを求めています。

カミハチキテルの事務局を務める浅野拓馬さん(地域価値共創センター)は「カミハチキテルでは『都心部に木を増やす』というテーマも抱えている。必須ではないが、木を使った素材が望ましい」と補足しました。

株式会社コンパス

商店街振興組合の運営やマルシェイベントの開催などを通じて市民を巻き込んだまちづくりに取り組んでいる「株式会社コンパス」は、袋町公園で定期開催している蚤の市「The Trunk Market(トランクマーケット)」で使用しているモバイルテントのリデザイン案を募集。運搬や設置など現行のテントが抱える課題を改善し、まちづくりイベントへのハードルを下げることを目的としています。

同社の大賀拓己さんは「地域住民一人ひとりが社会に参加し、まちづくりに取り組むのが最終的な目標。このテントでイベントを開催したいと思ってもらえるようになり、街全体が活性していくことが理想」とプロジェクトへの思いを語りました。

株式会社スマートコムシティひろしま

広島駅周辺や紙屋町・八丁堀エリアなど広島市内に多くのデジタルサイネージを有する「株式会社スマートコムシティひろしま」は、そのデジタルサイネージを活用し、ヒトや広島の街を元気にするアイデアを募集。サイネージで流れる15秒の動画コンテンツだけでなく、筐体のデザイン案もあわせて募集します。

同社で営業を務める小西望さんは「サイネージには人流センサーが搭載されており、2021年3月実績で約400万人がサイネージの前を通っている」と紹介。市内でも特に人通りの多いエリアでのプロジェクトで、多くの人の目に留まることが期待されます。

株式会社ダイクレ

グレーチングと呼ばれる網状の側溝の蓋を1951年から作り続けている建設資材メーカー「株式会社ダイクレ」。鉄加工技術により人々の暮らしに快適と安全を提供してきた同社は、広島県内の川や海沿いに設置する横断防止柵のデザイン案を募集します。川や海に恵まれた、水の豊かな広島県ならではのプロジェクトです。

同社の杉保生尚さんは「転落防止が最大の目的であるため、従来はデザイン要素がなく目につかない製品が中心だった。3D-CADでの製造技術を活かし、あっと驚くデザインの柵を設置して人々を笑顔にしたい」とプロジェクトへの期待を覗かせました。

株式会社ディーネット

グレーチングなどの建材を個人にも小ロットで提供している「株式会社ディーネット」は、自然災害対策製品も広く扱っています。2018年に発生した西日本豪雨で防災・減災の必要性を改めて感じた同社は、強度の高いFRP材を使った多目的な防水ボックスを開発。今回、店舗や公共施設に設置し活用するための新たな使途を募集します。

防水ボックスの開発を手掛けた同社の川口隆尚さんは「従来の土のうや防水板は倉庫や建物の奥に格納されており非常時に出しにくいという課題があった。防水ボックスは普段から間口付近で使われるものにしたい」とコメント。この観点はアイデアのヒントにもなりそうです。

広島電鉄株式会社

広島の象徴的な風景として知られる路面電車をはじめ、公共交通機関を通じて市民の暮らしを支える「広島電鉄株式会社」。2020年には西広島駅前のひろでん会館跡地に「KOI PLACE(コイプレ)」という交流拠点を整備しました。KOI PLACEの半分近い面積を占める芝生広場を子供だけでなく大人にもを活用してもらうべく、新しく芝生広場に設置する多目的遊具のアイデアを募集します。

同社地域共創本部の前田琢己さんは「今後も増えていくであろう公共空間デザインの先駆けとなり、地域の魅力創出につながるプロジェクトにしたい」と意気込みを語りました。

RiverDo! 基町川辺コンソーシアム

広島市が、太田川をはじめ6本もの河川が流れる水の都であることは意外と知られていません。市内の河川空間の価値向上を目的に活動する「RiverDo! 基町川辺コンソーシアム」は、太田川沿いの芝生スペースや石畳で川を眺めるための持ち運び可能なチェアのアイデアを募集。チェアの開発を通じて、ただ川を眺めるための時間をデザインする試みです。

コンソーシアムの代表を務める西川隆治さんは「広島市は中心部の約15%を水面が占める水の都。この素晴らしい環境をデザインの力でもっと価値あるものにしていきたい」と画面越しに訴えかけました。


7事業者のプレゼンテーションが終わり、Zoomのブレイクアウトルーム機能を利用して個別相談会が開催されました。プレゼンテーションで触れられなかった疑問点や提案に向けての懸念点などが参加者から直接投げかけられ、全国各地のクリエイターと広島の距離がぐっと縮まる機会になりました。

カミハチキテル-HEART OF HIROSHIMA-のルームでは、活気ある空間づくりに「建築」ではなく「什器」という提案を求める意図について話を展開しました。浅野さんは、広島市街地で進む再開発に関連し「既存のデッドスペースに什器を置くことで、街区を見直す際の検討材料になる。今は活用できていない大きな店舗の壁面にも、たくさんの顔を持たせる可能性を考えられる」と説明。このプロジェクトで生まれた什器が、広島のまちづくりのプロトタイプを生み出すというわけですね。

また、「一定期間設営しておけるものを考えるべきか、日毎に撤去できるようなものを考えるべきか」という質問に対しては、「日毎に出し入れできる、屋台のように機動性の高い什器が理想的」という回答がありました。

一方、RiverDo! 基町川辺コンソーシアムのルームでは、西川さんがプロジェクトの背景を補足。毎年多くの観光客を国内外から迎える広島ですが、「原爆」「宮島」という先入観に縛られてしまっていることを感じるといいます。「ヒロシマ、というとモノクロの写真の印象が強いが、実際に訪ねると豊かな川が流れており『イメージと違う』とよく言われる。広島に川を眺める文化を作るために椅子を作りたい。ユニークな椅子も良いが、何より『椅子に座って川を眺める風景』を作りたい」(西川さん)

また、応募者にとってはアイデアシートの上で網羅すべき要件や提案の解像度についても気になるところではないでしょうか。HIROSHIMA DESIGN CHALLENGE事務局からは「設計図があってもいいし、プロダクトから生まれる体験や企画もイメージを補強するものになる。シーンをいかに彩るかを提案できると面白くなると思う」と例を挙げて補足しました。

「街なかをピースにするデザイン」を募集中。公募は5月30日まで

このように、広島県ではユニークな事業者がそれぞれの技術やノウハウを活かして街なかのアップデートに取り組んでいます。今、彼らが求めているのはデザインの力です。

本プロジェクトでは、性別や国籍を問わず広くデザインパートナーを募集します。テーマは「街なかをピースにするデザイン」。審査員長・深澤直人さんはメッセージの中で「「街なかの平和」にとって何が最適解かを導き出すことが今回のプロジェクトの鍵」とも語っています。また、「ピース」は「peace」のみならず「piece」にも通じます。プロジェクトに参加する一人ひとり、ここから生まれる一つひとつの製品やサービスが、世の中をピース(peace)にするきっかけとなることを期待しています。

あなたのデザインが広島の街なかに実装されるチャンスです。事業者と一緒に、広島の街をより良くする「ピース」を形作ってみませんか。

デザインパートナーの募集は2021年5月30日(日)23:59まで行われていますので、奮ってご参加ください。

応募はこちら

Related Posts

前へ