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株式会社PxCell・川又龍人/#AMGC Vol.14

2026/02/03(火)

#AMGC

企業・自治体・クリエイターが共に多様なテーマに取り組むための公募・共創プラットフォーム「AWRD(アワード)」の連載シリーズ「AWRD meets GLOBAL CREATORS」( #AMGC )。
「新たな感性」をテーマに、デザイン、アート、ビジネスなど、さまざまな分野で活躍する世界の気鋭の挑戦者にスポットをあて、創作や活動、公募の価値、その国ならではのカルチャーに触れていきます。

今回ご登場いただくのは、バイオテクノロジー領域のスタートアップ 株式会社PxCell 創業者 川又龍人さん。細胞を起点としたプロダクト開発や研究に取り組みながら、記憶や想いといった個人的な価値を、社会と接続する新たな仕組みづくりに取り組んでいます。

本記事では、PxCell(ピクセル)誕生の背景にある原体験や、領域を横断する発想の源泉、そしてこれから見据える挑戦についてお話を伺いました。

PxCellが掲げる「細胞で想いを繋ぐ社会をつくる」という理念は、具体的にどのような社会像を描いていらっしゃいますか?あえて“細胞を扱う”という選択には、技術以前に強い覚悟が必要だったのではと推察されるのですがその上でぜひ、川又さんのお話をお聞かせください。

私たちが描く社会は、細胞を「技術の対象」としてだけでなく、「想いを託せる存在」として扱う社会です。デザイナーズベイビーやブレイン・マシン・インターフェースなど、不可逆的に進む生命技術は、止めるかどうかよりも、起きてしまう前提でどんな関係性を設計できるかが問われている。その中で、死後に遺灰を抱くように、生きている時間の中で誰かの一部と共に在れないかと考えました。細胞は、その境界に触れられる最小で最大の単位だと思っています。

PxCellはファッション・アート・サイエンスなどあらゆるジャンルの境界を横断していらっしゃいます。それらの融合はどのようにプロダクトや体験に現れていますか?

PxCellのプロダクトや体験は、科学的な正確さと、ファッションやアートが持つ感覚的・身体的な体験が同時に立ち上がる設計になっています。技術を前に出すのではなく、人がどう触れ、どう感じるかを起点に構成している点が特徴です。

その背景には、医療従事者の家系に生まれ医学部を志望していた経験や、2019年の金沢美術工芸大学の卒業制作、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)で培ったメディアアートの知見があります。

また、BioClub TokyoやShojinmeat Projectといった市民科学のコミュニティ、100BANCHやTokyo Startup Gateway、Shibuya Startup University、イデタチ東京などの支援のもとで、分野を横断する実践を重ねてきました。学生時代に器用貧乏で悩んできた経験も含め、ひとつの領域に閉じない姿勢そのものが、現在の融合的なプロダクトや体験につながっています。

DIG SHIBUYA2024での展示風景

川又さんが細胞を通じて行っている「想いの形のアップデート」について教えてください。記憶や想い出を“細胞”というかたちで纏うことには、どのような可能性があるとお考えでしょうか。

19世紀のイギリスには、亡くなった人の髪や遺品を用いて身につける「モーニングジュエリー」の文化がありました。そこには、喪失を忘れるのではなく、日常の中で共に生き続けようとする態度があったと思っています。現代でも、遺骨をダイヤモンドや真珠にする試みは、その感覚の延長線上にあります。

細胞やDNAは、生きている時間の中から採取できる唯一の存在であり、同時にその人をその人たらしめる最小単位でもあります。

私たちが細胞を通じて行っている「想いの形のアップデート」は、記憶や想い出を死後の象徴に留めるのではなく、生きているあいだに関係性として手渡し、更新していくことです。細胞は情報と時間を内包する、想いを未来へと開くための新しい媒体になり得ると考えています。

大切な誰かのDNAを宝石に含浸させたDNA JEWELRY「PxCell Gem」

バイオテックが加速する今だからこそ、PxCellがあえて踏み込まない領域はありますか?また、バイオテックがもたらす未来についてどのような展望を描いていますか?

PxCellが慎重になるのは、バイオテックによって「生命の重さそのものが書き換わる」領域です。再生や代替が可能になった生命は、「また戻せるもの」として扱われ、かえって判断が軽くなる未来が訪れると考えています。

クローンペットサービスがアメリカや中国で社会実装され、デザイナーズベイビーのスタートアップが勃興し始めている現在、私たちは、できることを拡張する前に、どう向き合うかという態度を設計したい。バイオテックの未来はAIと同じく、技術の進歩以上に、それを引き受ける人間の成熟が問われる流れになると考えています。

PxCellのきっかけとなった金沢美術工芸大学の卒業制作「CELL MARKET」 ヒトの細胞を売り買いする世界を表現している。
蚕由来のヒトの糸「PxCell Threads」
大切な誰かの細胞をアクセサリーにする「PxCell Wear」

もしPxCellとして誰かと新しく出会うとしたら、“どんな問いを持っている人”と向き合いたいですか?

PxCellとして向き合いたいのは、この世界を一種の仮想世界だと捉え、その構造を本気で読み解こうとする問いを持った人です。与えられたルールや成功条件を前提にするのではなく、何が変数で、何が定数として固定されているのかを見極めようとする姿勢があるかどうか。資本主義的な勝ち方を理解し、必要であれば使いこなしながらも、それとは別に、ライフワークとして世界の設計そのものを分解し、どこまでを書き換えられるのかを問い続けられる人と出会いたいと思っています。

ー今後チャレンジしたいことなどありましたら教えてください。

今後は、ブランドプロデューサーとして、バイオに限らずテクノロジーやカルチャーを横断しながら、実装とスペキュラティブデザインの両面から、「世界をどう翻訳し、どう体験として立ち上げるか」に挑戦していきたいと考えています。

あわせて、ディープテック領域における技術獲得・事業化を担うストラテジックインベスター的な立場として、海外特許や技術会社の取得・統合にも関与していく予定です。

ヘルスケア領域などのディープテックにも実装側として参画しつつ、直近では、2026年2月にDIG SHIBUYAの文脈で展開される『バイオハザード』の展示企画に参加し、渋谷PARCOで発表を行います。フィクションと現実、技術と想像力の境界に立ち、人がそれらとどう向き合うのかを問い直す場をつくりたいです。

川又龍人/株式会社PxCell、HAVNA Inc.代表取締役
1991年北海道札幌市生まれ、医療従事者の家系に育つ。金沢美術工芸大学美術科彫刻専攻卒業後、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]博士前期課程を修了。株式会社PxCell、HAVNA Inc.代表取締役。バイオ、ファッション、AIといった異なる領域を横断しながらブランドや作品をプロデュース。生命や身体をめぐる表現を通じて、社会のあり方を問い直し、ディストピア的な未来をデザインすることを目指している。

Links

Instagram:https://www.instagram.com/ryuto_kawamata/

Website:https://pxcell.co.jp/





編集:AWRD編集部

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