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Bridge without Arrival 「景色だけが渡る橋」

その他
かつて都市は、クルマの速度を中心に設計されていた。
歩道橋とは、その時代の象徴だった。

道路を横断するために、人は階段を登り、そして降りる。
それは安全のための構造であると同時に、歩行者よりもクルマが優先されていた時代を示す装置でもあった。

やがて都市は、「人に優しく」という思想を獲得する。
バリアフリー、地上横断、歩行者優先。
その流れのなかで、歩道橋は少しずつ姿を消していった。

しかし、もし歩道橋を
「渡るためのインフラ」ではなく、
「景色を眺めるための構造物」として再定義したらどうだろう。

この提案では、歩道橋の片側だけに階段を残し、反対側の階段を撤去する。
道路を越えた先には、降りる場所が存在しない。
残るのは、橋を支えていた構造体だけである。

人は途中までしか行けない。
橋を渡り切ることはできない。

それでも、風景だけは向こう側へ流れていく。
光、広告、ヘッドライト、夕焼け、雨、騒音。
都市の断片だけが橋を横断していく。

歩道橋は、移動のための機能を失うことで、
都市を観測するための場所へと変化する。

景色を眺めるためだけに、わざわざ階段を登る。
到着のない場所が、都市のなかに余白と時間をつくり出す。

ここで渡っているのは、人ではない。
時間であり、光景であり、都市そのものなのだ。

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