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廃棄される畳を3Dプリントで再生する「新しい素材言語」の探求/HONOKA - KUSE STORIES vol.2

2025/08/12(火)

インタビュー

次世代のクリエイターやイノベーターの「クセ=個性、創造性」を称える、アート&テクノロジーアワード「クセがあるアワード:塗」が開催中です。既存の枠にとらわれない発想や表現を"クセ"としてポジティブにとらえ、新たな価値の創出を後押しすることを目的に、本アワードは今年で2回目を迎えます。

その連動企画としてスタートしたインタビュー連載「クセが生む、創造のかたち(KUSE STORIES)」の2回目は、第1回「クセがあるアワード:混」ファイナリストのHONOKAさんにご登場いただきます。

メンバー全員がプロダクトデザイナーで構成されるHONOKAさんは、廃棄される畳を3Dプリント技術で現代的なプロダクトに再生する革新的な取り組みで注目を集めています。2023年には「第12回サローネサテリテ・アワード」でグランプリを受賞し、日本の伝統素材を現代技術で蘇らせる手法が国際的にも高く評価されました。

生活様式の変化により畳離れが進む現代において、畳という伝統素材に新たな生命を吹き込む彼らの活動は、サステナブルなものづくりの新しい可能性を示しています。今回は、伝統と革新を融合させた創作哲学や、アワード参加を通じた体験についてお話を伺いました。

「クセがあるアワード:塗」(応募は終了しました)

▼アワード詳細・ご応募はこちら

https://awrd.com/award/kuse-ga-aru-award-2

▼応募締切

2025年9月8日(月)12:00まで

ー廃棄される畳を3Dプリント技術で現代的なプロダクトに再生するという発想が生まれたきっかけを教えてください。

近所の畳屋さんで使い古された畳が捨てられている現場を見たことがきっかけで、素材としての可能性を見出しました。

日本独自の文化から生まれ、香り・手触りといった魅力を持つ畳を現代の生活にどう編み直すかを考えた結果、畳を粉砕・樹脂化し、3Dプリントで再構築する方法に辿り着きました。

開発した畳樹脂は、畳の香りや肌触り・調湿性といった五感に訴える特性を持った新しい素材です。樹脂ならではの防水性・加工性という観点から、従来の畳ではできない用途に展開できると気づき、花瓶やトレイといった生活の中に馴染むプロダクトへと発展しました。

酢酸セルロースというバクテリアが分解可能な樹脂なので、樹脂でありながら自然物に近い素材になっています。

「TATAMI ReFAB PROJECT」:大型3Dプリント技術を用いて、畳を現代の暮らしに編み直すプロジェクト。素材の魅力を可視化するデザインラボHONOKA.labが取り組み、若手デザイナーの登竜門「ミラノサローネサテリテ2023」に出展し、サローネサテリテアワードでグランプリを受賞。「クセがあるアワード」ではマクセル賞を受賞した。

ー「クセがあるアワード:混」に参加された経験は、ご自身の創作活動にどのような影響を与えましたか?

「混ぜる」というテーマに対して、多様な価値観・表現をもつクリエイター達が交錯するアワードで、とても刺激的な機会でした。

我々が取り組んだ実験的な素材のプロセスや造形表現がアワードで評価されたことがきっかけで、マクセルとの新たなコラボレーションに繋がり、自信が深まりました。

マクセル「クセがあるスタジオ」での展示風景:アワード受賞を契機としたマクセル株式会社との素材開発におけるコラボレーションにより、2025年7月にアート&テクノロジー・ヴィレッジ京都内「クセがあるスタジオ」にて「TATAMI ReFAB PROJECT|Retrospective」展を開催。

ー2023年「第12回サローネサテリテ・アワード」ではグランプリを受賞され、国際的な注目を集めています。この反響をどのように受け止められましたか?

日本で衰退している畳文化を再構築する取り組みが、国境を越えて共感を呼んだことに対してとても嬉しく思いました。

日本の地域に根ざした素材・製法を現代にマッチするよう適切にアップデートすることで、世界に通じるポテンシャルを持つ可能性があることも示すことができたと考えています。

受賞後は香港、サウジアラビア、ラスベガスなど世界の様々な場所で巡回展示をさせていただきました。

ー伝統素材と最新技術を組み合わせる際に、大切にしている視点はありますか?

例えば畳やい草だと、編み込んだり束ねたり、「線で構成される魅力的な表情」がありますよね。3Dプリントも「線状の樹脂で魅力を構成する」最新技術で、とても相性が良いと考えました。

そういった組み合わせる素材と技術がストーリーとしてリンクしているかも重視しています。単なる技術の応用ではなく、素材の持つ本質的な魅力と技術の特性が響き合うような組み合わせを大切にしています。


ー今年のアワードテーマは「あそび心とAIで( )を塗り替える」です。サステナブルなものづくりとAI技術の融合について、どのような可能性を感じますか?

「美しさ」を創り込むことはまだまだ人間の感性が必要な領域です。一方で、AIは過去の蓄積から未来を提示する道具なので、素材や技術の適切な組み合わせ・サステナブルストーリーの構築に対する思考は、今後さらに広げやすくなるでしょう。

加えて、ここ数年の「AIの分析力」の進化は凄まじく、掛け合わせることで「人間の美的感覚」に対する解像度を数段階高める可能性を感じています。

効率的な解を論理的に瞬時に出せるAIと人間だからこそ生まれる情緒的価値の両立が、良い意味で固定観念を塗り替えられる可能性があるのではないでしょうか。人の情緒が生み出す美意識や物語性をAIの効率や機能で拡張していく。それが新しいものづくりの姿なのかもしれませんね。


ー現在取り組まれている最新の作品や活動、今後の展示予定などがあれば教えてください。

現在はアクアクララ株式会社とウォーターボトルの再利用をテーマにした「TRACE OF WATER」というプロジェクトに取り組んでいます。

今年のミラノサローネに出展したのですが、Fuorisalone Award 2025 Sustainability Mensionファイナリストにノミネートされたこともあり、今後に繋がる新しい展示プロジェクトが進行中です。

「Trace of Water -水の痕跡-」:ウォーターサーバー用リターナブルボトルの〝素材〟としての潜在力にフォーカスし、その未知の可能性や用途を探求する取組み。使用期限が過ぎたリターナブルボトルを新しい表現方法で再利用し、審美性と機能性を兼ね備えた美しい「建材」を開発。建材を応用したスツール、ペンダントライト、花器などのプロダクトも制作した。リターナブルボトルの美しい色彩や吸湿した樹脂の特性、そしてポリカーボネートならではの強度を存分に引き出した他に類を見ないアップサイクリングプロジェクト。

ーこれから「クセがあるアワード:塗」に応募する人へ、メッセージをお願いします。

「クセ」は多様な視点から考えれば、「つまらない」を「魅力的」に、「不快」を「快適」にすることができる可能性を持っています。

「クセ」のある表現がきっと誰かの価値観を塗り替えるきっかけになるはずなので、ぜひ応募してみてください!

HONOKA

次世代の製法を研究・活用し、手触り・香り・色彩など、自然素材の魅力をほのかに感じさせるものづくりを行っている。イタリア・ミラノサローネ国際家具見本市における、35歳以下の若手デザイナーの登竜門「Salone Satellite Award 2023」の最優秀賞など受賞多数。

「クセがあるアワード:塗」(応募は終了しました)

次世代のチャレンジをマクセルが支援する「クセがあるアワード」。2回目となる今回は、AIと人が共創した作品を募集するAIクリエイティブアワードとして開催します!AIと共創した作品であれば、形式は問いません。みなさまの応募をお待ちしています。

▼アワード詳細・ご応募はこちら(応募費用は無料です)

https://awrd.com/award/kuse-ga-aru-award-2


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▼応募締切
2025年9月8日(月)12:00まで

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